問題社員225 転勤・配置転換・担当業務の変更に従わない社員を解雇する場合の注意点

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この記事の要点

「打診を断った」だけでは解雇できない——人事移動の命令を出し、それでも拒否した場合に初めて解雇の根拠になる

意向確認に対して「嫌です」と答えることは社員の自由。命令を出していないのに命令違反を問うことはできない

人事移動命令が有効なものかどうかを確認する——命令権限があるか・権利濫用にならないかを事前にチェックする

無効な人事移動命令に従わなくても命令違反にはならない。命令を出す前に命令の有効性を確認することが必要

有効な命令を出して拒否された場合でも、すぐに解雇しない——1ヶ月以上かけて誠心誠意説得してから解雇する

拒否されてすぐに解雇すると「もう少し説得しなさい」と裁判官に言われるリスクがある。十分な説得活動が解雇の有効性を高める

「異議を留めつつ従う」という社員には解雇できない——命令通りに働いているなら命令違反は問えない

「転勤命令は不当だと思っているが一応従う、裁判で争う」という社員に対しては、命令を維持して淡々と対応するしかない

1. 「打診を断った」だけでは解雇できない——命令を出すことが前提

転勤・配置転換・担当業務の変更を拒んでいる社員を解雇しようとする場合、最初に確認すべき最重要ポイントがあります。それは「命令を出しているかどうか」です。

「転勤できますか?」という意向確認に対して「嫌です」と答えることは、社員の自由です。意向確認に対して否定的な返答をしただけでは命令違反にはなりません。「打診を断った=命令に従わない」という誤解が多いですが、これは間違いです。

⚠ 命令していないのに命令違反は問えない

意向確認を断られただけの状態で解雇しようとすると、「命令すら出していないのに何で解雇できるんですか」という反論を受けます。せいぜい「空気が読めない社員だ」という評価ができる程度で、解雇理由にはなりません。
書面またはメールで明確な命令を出してから、拒否が確認された後に解雇を検討してください。

2. 命令を出す前に「人事移動命令が有効かどうか」を確認する

命令を出す前に、その命令が有効なものかどうかを確認することが重要です。有効でない命令に従わなくても命令違反にはなりません。有効な命令かどうかを判断する際の主なチェックポイントは以下の通りです。

▶ 人事移動命令の有効性チェックポイント

① 転勤・配置転換を命じる権限が就業規則・雇用契約等に定められているか
② 業務上の必要性(転勤・配置転換の必要性)があるか
③ 社員に対する不利益が過大でないか(生活上の著しい不利益を与えていないか)
④ 不当な動機・目的がないか(嫌がらせ・報復的な人事移動になっていないか)

これらを確認した上で命令が有効と判断できれば、解雇が有効になる可能性は非常に高くなります。弁護士に確認しながら進めることをお勧めします。

3. 有効な命令を拒否されても——すぐに解雇せず1ヶ月以上説得する

有効な人事移動命令を出して拒否された場合でも、すぐに解雇してはいけません。誠心誠意説得する期間を十分に設けた後に解雇することが重要です。

拒否されてすぐ解雇すると、裁判で「もう少し時間をかけて説得しなさい」と判断されることがあります。説得を尽くした上でも拒否されたという事実が、解雇の有効性を高めます。

▶ 説得活動の目安

・最低でも2週間、できれば1ヶ月以上の説得期間を設ける
・場合によっては2ヶ月かけてゆっくり丁寧に説得活動をする
・ノーワーク・ノーペイの場合は給与支払義務がないため、時間をかける余裕がある
・その間に合意退職につながる場合もある

4. 「異議を留めつつ従う」という社員への対応

中には「転勤命令は不当だと思っているので裁判で争う。ただし一応転勤先で働く」という社員もいます。この場合解雇はできません。命令通りに働いているのですから、命令違反を問えません。

このような社員に対しては、人事移動命令を維持して淡々と対応することが正解です。会社として命令が正当だという自信があるのであれば、裁判を起こされても冷静に対応してください。必要性のある人事移動で、不利益の程度も相当の範囲内で、不当な動機もないのであれば、裁判でも勝てる可能性が高いです。

5. まとめ

① まず命令を出す——打診の拒否は命令違反ではない

意向確認に対して否定的な返答をしただけでは解雇できません。書面またはメールで明確な命令を出すことが前提です。

② 命令を出す前に命令の有効性を確認する

命令権限・業務上の必要性・不利益の程度・動機目的の正当性を確認してから命令を出してください。弁護士に確認することをお勧めします。

③ 拒否されてもすぐに解雇せず1ヶ月以上説得する——その後の解雇が有効になりやすい

十分な説得活動を経た上での解雇が、裁判での有効性を高めます。「異議を留めつつ従う」という社員には解雇でなく淡々と命令を維持する対応になります。

よくある質問(FAQ)

Q 転勤を打診したら「行きたくない」と言われました。解雇できますか?
A

打診を断られただけでは解雇できません。まず命令の有効性を確認した上で書面で転勤命令を出してください。それでも拒否された場合に、1ヶ月以上の説得活動を経た後に解雇を検討することになります。命令の有効性や説得活動の進め方について弁護士に相談することをお勧めします。

Q 「転勤命令は不当だが一応従う、裁判で争う」と言っています。どう対応すればよいですか?
A

命令通りに働いているため解雇はできません。人事移動命令を維持して淡々と対応してください。裁判を起こされたら、命令の必要性・不利益の程度・動機の正当性を主張して対応します。命令が正当なものであれば勝てる可能性が高いです。弁護士と連携して対応してください。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/16