問題社員217 問題社員の退職勧奨の進め方
動画解説
目次
1. 退職勧奨とは何か——解雇との根本的な違い
問題社員への対応として「退職勧奨」を考えている経営者が増えています。しかし退職勧奨の本質を正しく理解していないと、うまくいかないどころか状況を悪化させることがあります。
退職勧奨と解雇の最大の違いは、相手の「合意」が必要かどうかです。解雇は使用者の一方的な意思表示であり、相手の同意は不要です。一方、退職勧奨は合意退職を目指すものですから、相手が「はい」と言わなければ何も成立しません。
⚠ 断られた場合のリスクを理解する
退職勧奨を断られると、問題社員はそのまま在籍し続けます。さらに「やめてくれと言われた」という事実でますます態度が悪化するケースが多いです。退職勧奨は「失敗しても元に戻れる」選択肢ではなく、失敗すれば状況がさらに悪くなることを理解した上で臨む必要があります。
2. 退職勧奨で最も大事なこと——「やめなければならない理由」を具体的に説明する
退職勧奨のコツとして「退職条件の上乗せ(解決金の提示)」が注目されがちですが、それより先に必要なことがあります。それが「なぜやめなければならないのかを、具体的な事実で説明すること」です。
案外これができていない会社が多いです。「本当のことを言ったら傷つける」「反発されてやめてもらいにくくなる」と考えて、理由をぼかしたまま退職を求める経営者がいますが、これは逆効果です。
▶ 事実ベースの説明とパワハラの関係
「具体的な事実を伝えたらパワハラと言われるのでは」という心配をする経営者がいますが、裁判でパワハラと認定されやすいのは「態度が悪い」「仕事ができない」といった抽象的・評価的な言葉を繰り返すことです。仕事に関係のある具体的な事実を丁寧に伝えることは、パワハラにはなりません。むしろ抽象的な評価を繰り返す方がパワハラ認定に近づきます。
「何月何日に何をしたから、こういった問題がある」という事実ベースの説明ができると、「好き嫌いで言っているわけではない」ことが伝わり、納得感が生まれます。これは退職条件の提示と組み合わせることで大きな効果を発揮します。
3. 普段からの注意指導・懲戒処分が退職勧奨の土台になる
退職勧奨の場面で「やめなければならない理由の具体的な事実」を説明できるかどうかは、普段からの対応の積み重ねで決まります。
常日頃から「何月何日の何時頃、あなたがどこでどのように何をしたことが問題で、どのように改善してほしい」という形で具体的事実を伝えて注意指導をしていれば、退職勧奨の場面でその蓄積を説明の材料として使えます。さらにプログラムが適切な懲戒処分も経ていれば、その記録も「やめなければならない理由」の根拠になります。
⚠ 注意指導をすっ飛ばしていきなり退職勧奨しない
問題が深刻化してから「今更注意指導や懲戒処分をやっても遅い」と感じてしまい、いきなり退職勧奨に踏み切るケースがあります。しかし懲戒処分なしにいきなり退職を求めても、根拠が薄く相手を説得できません。話がまとまらず、まとまったとしても解決金が高額になりがちです。
4. 「断ったら有効に解雇される」状況を作ることが最強の後ろ盾
退職勧奨が成立しやすくなる最大の要因は、「断ったら有効に解雇されてしまうかもしれない」という状況を作ることです。
普段からの注意指導・懲戒処分をしっかり積み重ねていれば、退職勧奨を断っても解雇が有効になりやすい状況が生まれます。そうなると相手は「断っても解雇される可能性がある。だったら上乗せ条件をもらってやめた方が得だ」と考えるようになります。
弁護士や労働組合に相談しても「これだけ注意指導を受け懲戒処分もあったのだから、提示された条件でやめた方がいい」とアドバイスされる状況になれば、退職勧奨は成立しやすく、解決金の金額も抑えられます。
5. 「解雇するために懲戒処分をする」という逆算思考は失敗する
自分なりに学んで「注意指導と懲戒処分を積み重ねてから解雇するのがポイントだ」と理解した経営者が、解雇することを最初の目標として逆算的に懲戒処分を積み重ねようとすることがあります。しかしこの逆算思考は失敗しやすいです。
▶ 正しい順序と逆算思考の違い
【正しい順序】
「問題を直させるために」注意指導・懲戒処分を繰り返す→それでもダメだった(失敗事例として)退職勧奨・解雇を検討する
【逆算思考(失敗パターン)】
最初から「解雇するために」注意指導・懲戒処分を短期間に畳みかける→準備ができたと思って解雇→裁判でギリギリの戦いになる・解決金が高くなる
注意指導は「直してもらうため」に行い、懲戒処分も「直してもらうため」に行います。それでもなお改善しない場合に、いわば失敗事例として解雇や退職勧奨を検討する——この順序が正しいのです。解雇を目的として手段を積み重ねると、裁判でもそれが透けて見えてしまい、結果として不利になります。
6. まとめ
退職勧奨を成功させるための大きな流れを整理します。
① 普段から具体的事実で注意指導・懲戒処分を積み重ねる
「直してもらうため」に誠実に注意指導・懲戒処分を行います。この積み重ねが退職勧奨の際の説明材料になり、「断ったら解雇」という状況も作ります。
② やめなければならない理由を具体的事実で説明する
「何月何日にこういうことがあった、指導もした、それでも改善しなかった」という事実の積み上げで説明します。これが退職勧奨の核心です。
③ 退職条件を提示して交渉する
「断ったら有効に解雇される」状況が整っていれば、合意退職に応じてもらいやすくなります。解決金も最小限に抑えられます。弁護士のサポートを活用してください。
よくある質問(FAQ)
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日 2026/04/15
