問題社員186 上司の見ていないところで周囲の社員に些細な嫌がらせをする
動画解説
目次
「些細だから放置」は禁物です。放置するとエスカレートし、職場崩壊につながります。早い段階で面談を行い、鉄は熱いうちに打つことが経営者の責任です。
上司の目が届かない場面での些細な嫌がらせは、周囲の社員にとって大きなストレスになっています。些細に見えても放置すれば問題はエスカレートします。面談による事実確認から始め、改善しない場合は段階的に対応を強めていくことが実務上の基本です。
■ 些細でも放置してはいけない:確認作業が最初の一歩
周りの人がストレスに感じているからこそ社長の耳に届いています。本当に些細かどうかを確かめ、職場環境を悪化させていないかをまず確認することが重要です。
■ 最初のアプローチは「面談」:決めつけず、まず話を聞く
いきなり厳重注意・懲戒処分ではなく、「こういった話があるんだけど、どうなの?」というスタンスで面談します。やっている側に嫌がらせの自覚がないケースも多く、伝えること自体が改善のきっかけになることがあります。
■ 改善しない場合:具体的事実に基づく指摘と段階的対応
面談を繰り返しても改善しない場合は、具体的事実(何月何日・どこで・何をしたか)をベースに指摘し、厳重注意・懲戒処分へと段階的に対応を強めます。
1. 些細な嫌がらせでも放置してはいけない理由
些細であっても職場環境を悪化させている可能性がある
まず最初に会社経営者の皆様が考えなければいけないことは、些細な嫌がらせであったとしても何らかの対応が必要だということです。なぜかというと、些細なものであっても、周りの人からするとストレスだからこそ社長の耳に入ってきている程度のものだからです。
「気のせいかな」というケースだってあるかもしれませんが、職場環境を悪くしている可能性もかなりあります。ひどい場合には、これといった明確な問題が職場にあるわけではないのに、なぜかみんな辞めてしまう——そんな職場になりかねないということも、現実には起こります。
ですので、「些細なものかな」「大した話じゃないな」と思っても、本当に些細なものなのかどうかを確かめてみようとするくらいは考えていただくのがよいかと思います。確認の結果、本当に些細な話で被害を訴えている方が単なる気にしすぎだったなら、それはそれで構いません。結構なケースで、それなりの問題があるケースというのはありますので、しっかりチェックしてみてください。
放置するとエスカレートする——入社当初は些細だった強者問題社員の実例
それに、今は些細だったとしても、その行動を放置するとエスカレートする傾向にあります。弁護士として対応してきたかなり強者の問題社員も、入社当初は些細な嫌がらせをする程度だったという方が多いのです。
ですので、まず些細なものと思っても、些細かどうかまずしっかり確かめてみましょう。それが大事です。
⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)
こうした問題をめぐる経営者からのご相談でよく聞かれるのは、次のようなパターンです。
・「入社当初から些細な嫌がらせがあったが、大したことはないだろうと見過ごしていたところ、1年後には複数の社員が相次いで辞める事態になった。当初に対応していれば防げた」
・「これといった明確な問題はないはずなのに、なぜか職場の雰囲気が悪く、人が定着しない。調べてみたら特定の社員が陰でちょこちょこ嫌なことをしていた」
些細な段階での早期確認・早期対応が、職場崩壊を防ぐ最大の予防策です。
2. まず「本当に些細かどうか」を確認する
「些細かな」と思っても確認作業は必ずやる
やっていることが些細だと思える程度のものだということは、明確に就業規則違反とか懲戒事由に該当するとか、そこまで至っていないケースもかなりあります。なので、いきなり厳重注意をしたり懲戒処分したりする話ではないことも多いです。
ただ、被害を訴える方がいるわけですから、何らかの問題行動をやっている可能性がある——だから確かめてみる、というスタンスが大事です。確認の結果、本当に些細な話で訴えている方が単なる気にしすぎだったなら、それはそれで構わないじゃないですか。
やっている側は嫌がらせと思っていないケースが多い
些細な嫌がらせとして訴えてくるようなものの中には、やっている側は全然嫌がらせだと思っていないようなものも多く含まれています。よくあるパターンですよね。された側は非常に嫌な気分になっている。しかしやっている側は悪気はない。しかも相手が嫌がっていると思っていない——なんてことも、たくさんあります。
意図的に「些細な嫌がらせしてやるぞ」と計画的にやっているケースはレアで、少ないのです。そこまで賢く計画を練ってまでやることではないですよね。大抵のケースは、その方が普通に生きていて、普通に生活していて、普通に仕事をしていると出てきてしまう癖のようなものが、周りにとっては不快だ・嫌だな・辛いなと思うようなものになってしまっていることが本当に多いのです。
確認の結果、本当に些細だったなら——それはそれで構わない
確認作業をやった結果、本当に被害を訴えている方が気にしすぎだったり、単なるコミュニケーションの齟齬だったりする場合もあります。その場合は双方に対してそれぞれ適切なフォローをして終わりで構いません。大事なのは「確認もせず放置しない」ということです。確認したという事実が、その後の対応の根拠にもなります。
3. 面談による対応:正しいアプローチとは
いきなり厳重注意・懲戒処分ではなく、まず面談から
対応の方法として、まずお勧めなのは面談をするということです。面談を、場合によっては繰り返すということです。なんでかというと、やっていることが些細だと思える程度のものということは、明確に就業規則違反・懲戒事由に該当するとまで至っていないケースもかなりあるからです。なので、いきなり厳重注意をしたり懲戒処分したりする話ではないことも多いのです。
ただ被害を訴える方がいるわけですから、何らかの問題行動をやっている可能性がある——だから確かめてみる、というスタンスでの面談です。
「問題ですよ」ではなく「こういった話があるんだけど、どうなの?」というスタンス
面談では、最初から「あなた、こんなことをやって問題ですよ」とこちらから決めつけて言うのではなく、「こういった話もあるんだけど、どうなの?」という話を面談でやっていくわけです。
そうすると、相手からも答えが返ってきたりします。例えば、「え、そんなことやってましたっけ」「覚えありませんね」というものから、あるいは「確かにそういうことあったけども、本人がこんな嫌がらせをしてきたのがそもそもの発端なんですよ」なんて話なんかも出てくることもあるわけです。こうした情報を引き出すことも面談の重要な役割です。
社長が面談することの効果——上司よりも重みが違う
特に社長が面談した場合、その効果は上司からの注意とは重みが全然違います。上司から「ちょっとそれはどうかな」と言われるのと、社長から「こういった話があるんだけど、どうなの?」と直接話されるのとでは、受け取り方が大きく変わります。
やっている側に嫌がらせの自覚がないケースでは、社長から話を聞かされることで「そういったことを周りが嫌だと感じているんだ、ちょっと気をつけようかな」と思ってもらえるきっかけになることがあります。この面談は結構意味のある作業です。
面談の進め方・言葉の選び方・どこまで話せばよいかについて、早い段階でのご相談をお勧めします。初動の面談のやり方を間違えると、かえって問題が複雑になることがあります。→ 経営労働相談はこちら
4. 悪質・改善しない場合:段階的対応の進め方
具体的事実(何月何日・どこで・何をしたか)をベースに指摘する
特に悪質な場合については、面談も繰り返すことになるし、事実ベースでしっかり話をして、どこがどうおかしいのかを指摘していきます。「何月の何日の何時頃、どこであなたが○○さんにこういうことを言ったりやったりしたよね、どうしてなの?」なんて話をして、本人の言い分を聞いていくわけです。
「もうやりません」なんて言ったり、全然反省しなかったりするかと思いますが、「こういうことをやってはダメだよ」と社長などがしっかり指示する。それでもまた直らず、別な人や別な機会に同じ人に何か嫌がらせをしていると思ったらまた呼び出して面談をする。
それでも直らない場合——面談の繰り返しから厳重注意・懲戒処分へ
面談を繰り返しても改善しない場合は、厳重注意や懲戒処分を検討するということを粘り強くやっていきましょう。社長は忙しくて大変だと思いますが、こういった方がいるとなかなか職場の雰囲気が良くならないのです。
被害を受けているのが1人だけじゃなく2人・3人ともなったらどうでしょう。もう職場の雰囲気はひどいものになります。もちろん1人だけだったとしても、社長から見れば許せる事態ではないですよね。ですので、特に悪質な場合については面談の繰り返し→厳重注意→懲戒処分という流れで、粘り強く対応していきましょう。
社長が対応できない場合——部長・人事担当者の活用と弁護士への相談
社長自身が対応できない場合は、対応できそうな方——部長さん・人事の方など、会社によって様々でしょうが——しっかり対応していくようにしてください。
自分で対応しようとしても上手くできるかなと不安な場合、あるいは社長が忙しいので人事の方や管理職の方に任せようという場合で、正しいやり方ができるかどうか不安だという場合は、弁護士にご相談ください。言葉の使い方から手順まで指導を受けながら、オンラインなどで頻繁に打ち合わせをしながら対応することで、うまくいく可能性が大幅に高まります。
✕ よくある経営者の誤解
「些細なことだから、見て見ぬふりで問題ない」→ 誤りです。
些細に見えても職場環境を悪化させている可能性があります。また放置するとエスカレートする傾向があります。「些細かどうか確かめる」という確認作業だけでも行うことが重要です。
「嫌がらせをした証拠がないから対応できない」→ 誤りです。
証拠が揃っていなくても、「こういった話がある、どうなの?」というスタンスで面談することはできます。この段階では断定・処分は不要で、事実を確認するための対話が目的です。面談自体が改善のきっかけになることも多くあります。
繰り返す嫌がらせへの段階的対応(厳重注意・懲戒処分)の手順・言葉の選び方・記録の残し方について、個別の状況に応じたご相談をお受けしています。→ 経営労働相談はこちら
5. まとめ——鉄は熱いうちに打て・注意指導は愛情
早期対応が職場崩壊を防ぐ——大問題になった事例から学ぶ
些細だと思っていても、これはエスカレートしてどんどん大きな問題になっていく可能性があります。鉄は熱いうちに打てと言いますが、早い段階で対応していると大問題にならずに済むことも多いのです。
本当に大きな問題を起こして辞めていただくことになってしまった問題のある社員の方々を、弁護士として多く体験してきました。ただそういった大問題を起こすような方でも、入社から間もない時期に些細な問題行動だなという段階でしっかり注意指導していたら、こんなことにはならなかったのに——そこで甘い顔をしてしまったばかりに、かえって本人に辞めていただくことになってしまって、会社のためにも周りの社員のためにもならず、何より問題を起こしたご本人のためにもならなかったなというケースをたくさん見てきました。
注意指導は愛情——本人のためにもなる
しっかり間違ったこと・問題のあることを注意指導してあげるというのは、ある意味愛情ですよね。別に怒鳴れと言っているのではなく、穏やかに指摘して話せばいいのです。面倒かもしれません。ある意味愛情がないと、言ってもなかなか直らない方を叱るというのは難しいかもしれません。
しかし経営者としては、自分の会社を守る、働いてくれている方を守るためにも、そしてその問題を起こして普通に話したり行動したりしただけで周りを不快にさせている方を立ち直らせるためにも、しっかり注意指導をやっていく必要があります。これこそがその問題を起こしている方に対する愛情でもあるからです。
正しいやり方・言葉の選び方に不安があれば弁護士へ
もちろんやり方は気をつけてください。正しいやり方・そもそもその発想が正しいのかどうかというのは、弁護士に相談しながら、言葉もよく選んで話していただくのがお勧めです。こういった対応に自信がない場合や、正しい手順でできているか不安な場合は、ぜひ一度ご相談ください。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日 2026/04/05
