問題社員168 労働義務を果たさず権利だけを主張する。
目次
動画解説
1. 労働義務を果たさず権利ばかり主張する問題社員とは
会社経営者から労務相談を受ける中で、しばしば耳にするのが「労働義務を果たさず、権利ばかり主張する問題社員がいる」という悩みです。職場では真面目に働いている社員も多い中で、このような社員がいると、職場の雰囲気が悪化し、周囲の社員の不満が高まりやすくなります。
そもそも労働契約は、会社が賃金を支払い、社員が労働を提供するという関係によって成り立っています。したがって、労働義務を果たさない状態は契約の基本構造に反する問題です。会社としては当然、社員に対して契約どおりの労働を求めることができます。
もっとも、会社経営者が「労働義務を果たさない」と感じているケースを詳しく整理してみると、その意味合いは必ずしも一つではありません。例えば、出勤しない、仕事をサボる、業務命令に従わない、成果が上がらないといったように、実際にはさまざまな状況が含まれていることがあります。
また、「権利ばかり主張する」という言葉も、単に法律上の権利を主張しているだけとは限りません。会社経営者としては、「仕事を十分にしていないのに、休暇や待遇などの権利ばかり主張してくる」という違和感から、このような表現を使うことが多いものです。
このような問題を適切に解決するためには、まず「労働義務を果たさない」という言葉の中身を具体的に整理することが重要です。実際にどのような行動が問題なのかを明確にしなければ、適切な対応を取ることはできません。
2. 会社経営者が感じる「権利ばかり主張する社員」の違和感
会社経営者が「権利ばかり主張する問題社員がいる」と感じる場面は、決して珍しいものではありません。職場では、真面目に働いている社員ほど、「なぜあの人だけ権利ばかり主張するのか」という不満を抱くこともあり、職場の雰囲気が悪くなる原因にもなります。
もっとも、法律上の観点から見ると、社員が権利を主張すること自体が直ちに問題になるわけではありません。例えば、休暇を取得する権利や、労働条件に関する権利を主張することは、本来認められているものです。そのため、「権利を主張している」という事実だけで問題社員と評価することはできません。
それにもかかわらず、会社経営者が強い違和感を抱くのは、「権利の主張」と「労働義務の履行」とのバランスが崩れていると感じるからです。つまり、仕事を十分にしていないにもかかわらず、待遇や権利の部分だけ強く主張しているように見えると、不公平感が生まれやすくなります。
例えば、業務への取り組みが十分ではないのに待遇面については強く要求するような場合、周囲の社員から反感を買うこともあります。このような状況が続くと、職場内の信頼関係が崩れ、組織としての一体感が弱まる可能性もあります。
ただし、ここで会社経営者が注意しなければならないのは、問題の本質は「権利を主張していること」ではない可能性が高いという点です。実際には、その前提となる「労働義務が十分に果たされていないのではないか」という問題が存在していることが多いのです。
そのため、問題社員への対応を考える際には、「権利ばかり主張する」という印象にとらわれるのではなく、まずは労働義務がどのような形で果たされていないのかを具体的に整理することが重要になります。
3. 労働義務を果たさない問題社員の典型的なケース
会社経営者が「労働義務を果たさない問題社員がいる」と感じる場合、その意味は一つではありません。実際の相談でも、同じ言葉が使われていても、具体的な状況はケースごとに大きく異なります。まずは、どのような行動が問題になっているのかを整理することが重要です。
例えば、最も分かりやすいケースは出勤しない、あるいは欠勤が続く場合です。このような場合は、労働契約の前提となる労働提供そのものが行われていないため、会社としても比較的対応方針を整理しやすいケースと言えます。
しかし、会社経営者が「労働義務を果たさない」と感じている場面の多くは、実はこのような単純なケースではありません。出勤はしているものの、仕事をサボっているように見えるケースもあります。この場合は、単純に欠勤の問題として扱うのではなく、職場のマネジメントや業務管理の問題として整理する必要が出てきます。
さらに、より深刻なケースとして、会社からの業務命令に従わない社員が挙げられます。会社が具体的な業務を指示しているにもかかわらず、合理的な理由なくこれを拒否する場合には、企業秩序の観点からも問題が大きくなります。
また、会社経営者の中には、「成果を上げていない社員」を指して「労働義務を果たしていない」と表現することもあります。この場合は、仕事をしていないというよりも、能力不足や適性の問題として整理すべきケースも少なくありません。
このように、「労働義務を果たさない」という言葉の中には、複数の異なる問題が含まれていることがあります。問題社員への対応を適切に行うためには、まずどのタイプの問題なのかを見極めることが不可欠です。
4. 出勤しない・欠勤が続く問題社員への対応
労働義務を果たさない問題社員の中でも、最も分かりやすいケースが出勤しない、あるいは欠勤が続く場合です。労働契約は、会社が賃金を支払い、社員が労働を提供することで成立しています。そのため、出勤しない状態が続く場合には、契約の前提となる労働提供が行われていないことになります。
このような場合、まず確認すべきなのは欠勤の理由です。例えば、私傷病による体調不良で出勤できない場合には、会社の就業規則に基づき休職制度を適用することが考えられます。休職期間を経ても復職が難しい場合には、退職や解雇の問題を検討することになるケースもあります。
一方で、特に体調不良などの事情もなく、本人の意思で欠勤を続けているような場合には、会社としての対応はより厳しくなる可能性があります。合理的な理由なく出勤しない状態が続けば、職場の業務運営に大きな支障が出るため、懲戒処分や解雇が検討されることもあります。
もっとも、会社経営者が「労働義務を果たさない」と感じているケースの多くは、実際にはこのような欠勤の問題ではありません。多くの場合、社員は出勤しているものの、仕事への取り組み方に問題があるケースが含まれています。
5. 仕事をサボる問題社員へのマネジメント対応
会社経営者が「労働義務を果たさない」と感じるケースの中で、実務上比較的多いのが出勤はしているものの、仕事を十分にしていないように見える社員です。いわゆる「仕事をサボる問題社員」のケースです。
このような場合、単純に「労働義務を果たしていない」と評価するだけでは、問題の解決につながらないことがあります。なぜなら、出勤している以上、形式的には労働の提供が行われているようにも見えるため、対応の仕方を誤ると会社側の主張が曖昧になってしまうことがあるからです。
そこで重要になるのが、マネジメントの問題として捉える視点です。社員の自主性を尊重するあまり、業務内容や仕事の進み具合をほとんど確認しない体制になっている会社もあります。しかし、実際に仕事をサボる社員がいる場合には、そのような管理方法では十分に対応できません。
会社としては、社員がどのような業務を担当し、どの程度の仕事を行っているのかを適切に把握できる体制を整える必要があります。会社経営者自身が確認することが難しい場合には、管理職に業務管理を行わせるなど、仕事の状況を把握できる仕組みを作ることが重要です。
そのうえで、仕事をしていない状況が確認された場合には、具体的にどの業務を行うべきなのかを明確に伝え、必要に応じて注意や指導を行うことになります。それでも改善が見られない場合には、厳重注意書の交付や懲戒処分など、段階的な対応を検討することも必要になるでしょう。
6. 業務命令に従わない問題社員への対応方法
労働義務を果たさない問題社員の中でも、特に会社経営者が深刻に感じるケースの一つが、会社の業務命令に従わない社員です。会社が明確に業務を指示しているにもかかわらず、それを拒否するような行動は、企業秩序の観点からも重大な問題となります。
もっとも、実務上は「業務命令に従わない」と評価できるかどうかを慎重に判断する必要があります。例えば、「もっとしっかり仕事をしなさい」といった抽象的な指示だけでは、具体的な業務命令が出されているとは言いにくい場合があります。そのため、社員が従うべき内容をできるだけ具体的に示すことが重要になります。
例えば、どの業務をいつまでに行うのか、どのような形で業務を進めるのかといった点を明確に伝えることで、会社の指示内容がはっきりします。そのうえで、合理的な理由もなく指示に従わない場合には、業務命令違反として対応を検討することができるようになります。
このようなケースでは、まず本人に対して事情を確認し、説得を行うことが一般的です。それでもなお業務命令に従わない場合には、厳重注意書の交付や懲戒処分を検討することになります。場合によっては、解雇が検討されるケースもあり得ます。
会社経営者として重要なのは、業務命令を出す際に、何をするべきなのかを具体的に示すことです。指示の内容が曖昧なままでは、社員が従わなかった場合でも問題の整理が難しくなってしまいます。
7. 成果が上がらない社員は能力不足なのか
会社経営者が「労働義務を果たさない問題社員だ」と感じるケースの中には、仕事はしているものの成果が上がらない社員が含まれていることがあります。このような場合、単純に「労働義務を果たしていない」と評価するべきかどうかは慎重に検討する必要があります。
多くの場合、このようなケースでは社員が全く仕事をしていないわけではなく、一定の業務は行っているものの、期待される成果に届いていないという状況です。その背景には、業務に対する能力不足や適性の問題があることも少なくありません。
本人の能力や適性と業務内容が合っていない場合には、単に社員を責めるだけでは問題は解決しません。そのため会社としては、まず配置や業務内容が適切であるかを見直すことが重要です。社員の適性に合った業務に配置することで、パフォーマンスが改善することも少なくありません。
また、成果が上がらない場合には、人事評価制度を通じて待遇に反映させる方法もあります。賞与や昇給の評価に反映させることで、会社としての評価を明確にすることができます。もっとも、能力不足が極めて大きい場合には、雇用の継続が難しくなるケースもありますが、法律上のハードルが高いため、慎重な判断が必要になります。
8. 権利主張そのものは違法ではないという基本
「権利ばかり主張する問題社員」という相談を受けるとき、会社経営者がまず理解しておくべき重要な点があります。それは、社員が権利を主張すること自体は直ちに問題になるわけではないということです。
労働契約のもとでは、社員には休暇を取得する権利などが認められています。仮にパフォーマンスが高くない場合であっても、仕事の成果と権利の行使は本来別の問題であり、権利そのものを否定することは適切ではないからです。
もっとも、会社経営者が違和感を抱く場面の多くは、「権利を主張していること」そのものではなく、労働義務とのバランスが取れていないように見えることにあります。仕事への取り組みが不十分である一方で、待遇については強く主張してくる場合に、不公平感が生まれやすくなるのです。
また、権利の主張の仕方が周囲への配慮を欠き、職場の雰囲気を悪くしているようなケースでは、権利の内容そのものではなく、職場での協調性という観点から教育や指導を行うことが考えられます。
9. 問題社員対応で会社経営者が意識すべきポイント
「労働義務を果たさず権利ばかり主張する問題社員」といっても、欠勤、サボり、業務命令違反、能力不足など、実際にはさまざまなタイプの問題が混在していることが多いものです。そのため、まずは問題の内容を冷静に分析し、具体的に整理することが不可欠です。
会社経営者が感じている違和感の根本には、労働義務が十分に果たされていないのではないかという問題があります。そのため、まずは社員に対して契約上求めることができる労働義務をしっかり果たさせることに焦点を当てることが重要です。
具体的には、どの業務をどのように行うべきなのかを明確に示し、会社としての指揮命令を適切に行うことが必要になります。感情的に判断するのではなく、段階的な対応(注意、指導、改善機会の付与等)を積み重ねていくことが、最終的な法的リスクの軽減に繋がります。
10. 労働義務を果たさない問題社員の対応を弁護士に相談するメリット
労働義務を果たさず権利ばかり主張する問題社員への対応は、非常に悩ましい問題です。状況を整理せずに感情的に対応してしまうと、不当解雇などの訴えを招き、問題がさらに複雑化してしまうリスクがあります。
特に注意が必要なのは、法律上どのように評価されるのかは別の問題であるという点です。能力不足や態度の問題を理由とした処分は、対応の手順や客観的な証拠が不足していると、会社側が不利になる可能性が高いのです。このような場面で役立つのが、労務問題に詳しい弁護士への相談です。
弁護士に相談することで、問題を法的観点から整理し、適切な注意・指導の手順、厳重注意書や懲戒処分の書面作成など、実務的なアドバイスを受けることができます。また、後に紛争が発生した場合に備えた資料の蓄積もサポートします。社員全体が安心して働ける職場環境を守るためにも、状況が深刻化する前にぜひご相談ください。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
最終更新日 2026/03/25

