問題社員325 「仕事が忙しい」と言って勝手に早出残業する。

動画解説

この記事の要点

「勝手に」早出残業する=会社の方針に反している

残業代や健康の問題にとどまらず、会社の秩序の問題。方針と違うなら止めなければならない

面談で、必要性を本人に説明させる

方針と違うことを求めているのは本人。説明する責任は本人にある。納得できれば認め、できなければ禁止する

強い言葉は不要。率直・明確に「禁止します」と伝える

こじれるのは、遠回しで指示が不明確なケース。空気を読ませようとせず、してほしくないことをはっきり言う

従わなければ厳重注意書。残業代請求への備えにもなる

早出残業を禁止したことが明確になり、以後は明確な命令違反となる。残業代の話の前に、方針に沿っているかを考える

1. 「勝手に」早出残業するという問題

必要な早出残業であれば、社長が「早出で仕事をしてください」と言って仕事してもらえばよく、何の問題もありません。ところが、「勝手に早出残業をする」というのは、会社の方針とは違う早出残業をしているということです。会社の方針として、早く出てきて仕事してよい、労働時間としても扱う、という方針に沿って残業をするのは、大きな問題にはなりません。注意すべきは健康面や残業代ですが、それは会社の方針でやっていることですから、会社の秩序を乱すものではありません。

しかし、今回のように「勝手に」早出残業するというのは、会社の方針とは違っているはずです。「勝手に」というくらいですから、早出残業をしてほしくないのです。ですので、その時点で早出残業を原則として認めてはいけません。何とか止めなければならないのです。本記事では、「仕事が忙しい」と言って勝手に早出残業をする社員の対処法を解説します。

2. 面談で必要性を本人に説明させる

言うことをあまり聞かない方には、面談が一番役に立つことが多いものです。会議室などに呼んで話します。距離が遠い事業所で、人事や社長が離れた場所から面談する必要がある場合は、ZoomやTeamsを使えば、実際に会ったのとあまり変わらない効果を上げられることが多いところです。

面談では、まず時間を確認します。タイムカードや日報の記録があればそれを指摘し、記録がなければ、どうして早出残業をしているという情報を掴んだのかを伝え、何時ごろに出社し、何をやっているのかを確認します。実際に仕事をしていた可能性が高ければ、「どうして早出残業をしてまで仕事をする必要があるのか」を、具体的な根拠・事実を示して説明させてください。その必要性が納得できるものであれば、早出残業を認めるのか、どの程度認めるのか、認めないのかを判断します。早出残業ではなく通常の残業で対応できないか、人の補充が必要ではないか、なども考えていきます。ポイントは、必要性を説明する責任は本人にあるということです。会社の方針と違うことを求めているのは本人ですから、こちらが不要な理由を説明する必要はありません。

3. 大事なのは、会社の方針に沿っているか

ここでのポイントは、会社の指示通り、会社の方針に沿って動いてもらっているかです。単に本人の健康確保や、余計な残業代を払わない、という小さな話だけではありません。会社が「早出残業をやってよい、労働時間として認めて残業代も払う、自由な社風だから働いてください」と言うなら、それはそれで一つの決断です。しかし、「うちの会社では、残業については管理監督者でもない方に好き勝手にやらせるわけにはいかない、始業時刻から仕事をスタートさせてください」という方針の会社もたくさんあります。

そうした会社の場合は、勝手に始業時刻前に仕事をすること自体にストップをかけなければなりません。会社の方針と違うことを容認してはいけないからです。必要性をしっかり説明でき、根拠も示せて納得できたのであれば、何らかの早出残業を含む対応を認めていけばよいのですが、そうでなければ、しっかり禁止しましょう。

4. 率直・明確に伝える

禁止する方法としては、面談すること自体が大きな効果を持ちます。しっかり面談して説得すると、それだけで早出残業をしなくなる人もたくさんいます。またやってしまう場合は、呼んで、厳しくするわけでもなく淡々と事実確認をして、「ダメですよ、許しませんからね」と簡潔に、率直に、はっきり伝えます。激しい言葉は一切必要ありません

遠回しはダメ。してほしくないことをはっきり言う

悪いのは、何を言いたいのか分からない、遠回しな言い方で指導することです。「早出残業は禁止しますので、始業時刻前に仕事をするのは控えてください」と、はっきり伝えてください。強い口調は全く必要ありませんが、礼儀正しく、率直に、ありのままの指示をします。ここを勘違いして、遠回しに自分の頭で考えさせようとすると、指示内容が不明確なため、言うことを聞かなかったと言われても困ることになります。問題がこじれるケースの多くは、明確に指示を出せていないケースです。「気づいてほしい」「空気を読んでほしい」「察するのは部下の仕事だ」と思っていると失敗します。早出残業の禁止なら、数秒で言えるはずです。はっきり言うとパワハラだと言われるのでは、と心配される方もいますが、パワハラと評価されるのは、無駄に評価的な言葉、たとえば「空気が読めない」「協調性がない」といった余計なことを重ねる場合が多いのです。「早出残業は禁止します」とはっきり言うだけなら、それで終わりです。

5. 従わない場合は厳重注意書

丁寧に、優しい言葉でよいので、はっきり禁止を伝えれば、ほとんどの方はそのうち早出残業をしなくなります。それでもどうにもならない方については、厳重注意書を交付しましょう。

厳重注意書には、いつ、どこで、誰が、早出残業を禁止すると命令・指示したにもかかわらず、指示に従わなかった、今後はこのようなことがないようにしてください、と書いて出します。指示を出した年月日・場所・時間・発言者も書くとよいでしょう。そうすると、早出残業を禁止しているのが明確になります。仮に「面談で禁止すると伝えられたというのは作り話だ」と言われても、厳重注意書を渡した時点で明確に禁止していることになりますので、以後やれば明確な命令違反となります。それでも従わなければ、懲戒処分など、だんだんと重い処分をしていくことになります。

6. 残業代請求の前に考えること

この早出残業の問題は、実際の相談では、残業代請求を受けて初めて問題にする会社が多いところです。「勝手に早く出てきて、新聞を読んだり朝食を食べたりしているのを見たことがあるのだが、早く出てタイムカードを打った時間からが労働時間だと言われて困っている」といった相談です。これに対しては、命令していない、他に早出残業をしている人はいない、必要性がない、などと反論していくこともあります。

残業代だけの話ではない

早く出てきて仕事らしきことをしているのを認めている会社なら、それでよいのです。「労働時間管理はしっかりするが、スタート時間は本人の裁量に委ねる方針だ」と社長が断言している会社であれば、健康管理に気をつけ、三六協定を守り、残業代をきっちり払ってください、というアドバイスになります。しかし、早出残業を認めない方針の会社で勝手に早出残業をされてしまったのであれば、残業代だけの話ではありません。会社の秩序を乱し、会社の方針に従わなくてよい、と言っているのと変わらないからです。方針と違うことをやっているのであれば、残業代の問題だけでなく、止めなければならないのです。残業代の話の前に、この社員は会社の方針に沿った行動を取っているかを、よく考えてみてください。

7. まとめ

  1. 「勝手に」早出残業する=会社の方針に反している。残業代や健康だけでなく、会社の秩序の問題
  2. 面談で、必要性を本人に説明させる。説明する責任は本人にある。納得できれば認め、できなければ禁止する
  3. 大事なのは、会社の方針に沿って動いてもらっているか。方針と違うことを容認しない
  4. 強い言葉は不要。率直・明確に「禁止します」と伝える。こじれるのは指示が不明確なケース
  5. 従わなければ厳重注意書を交付。禁止が明確になり、以後は明確な命令違反となる
  6. 残業代請求の前に、会社の方針に沿った行動を取っているかを考える

技術的な話は弁護士と相談しながら進めれば、手ごわい相手であっても、いずれは指示に従うか、何らかの形で解決することがほとんどです。大事なのは心構えです。会社の方針があり、早出残業がそれに反しているのであれば、残業代という問題だけでなく、止めなければなりません。しっかり会社の方針を守ってもらい、みんなが才能を発揮できるよい会社にしていきましょう。勝手な早出残業や残業代トラブルでお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 命じていない早出残業でも、残業代を払わなければいけませんか。

A. 早く出てきて仕事らしきことをしているのを知りながら放置していると、黙示の指示があったと評価され、残業代を払うことになりやすいのが実情です。他方、明確に早出残業を禁止し、それが黙認されていない状態を作っておけば、命令違反として行われた時間は労働時間に当たらないと主張しやすくなります。まずは面談で禁止をはっきり伝え、従わなければ厳重注意書で禁止を明確化することが、残業代請求への備えにもなります。始業前の在社状況が記録から分かる場合は、早めに事情を確認してください。

Q2. 本人が「仕事が忙しいから必要だ」と言います。認めるべきですか。

A. まず、その必要性を本人に具体的な根拠・事実で説明させてください。会社の方針と違うことを求めているのは本人ですから、説明する責任は本人にあります。納得できる必要性があれば、早出残業を認めるか、通常の残業で対応するか、人を補充するかを判断します。説得力ある説明ができず、本人がやりたいだけであれば、禁止します。本当に業務量が過大なのであれば、残業の可否とは別に、業務配分や人員体制の見直しも検討する必要があります。

Q3. はっきり禁止すると、パワハラだと言われないか不安です。

A. 「早出残業は禁止しますので、始業時刻前に仕事をするのは控えてください」と、業務上の指示を率直に伝えることは、適正な業務指示であり、パワーハラスメントには当たりません。パワハラと評価されやすいのは、「空気が読めない」「協調性がない」といった、評価的で余計な言葉を重ねる場合です。人格を否定するような言い方を避け、してほしいこと・してほしくないことを、礼儀正しく、しかし明確に伝えることが大切です。むしろ、遠回しで指示が不明確な方が、後のトラブルにつながります。

最終更新日:2026年7月18日


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