労働審判の対応

労働審判の申立書が届いたら──会社側の対応は「初動」が勝負です

 突然、裁判所から労働審判の申立書が届いた。そんな経験がある経営者の方は少なくありません。申立書受領から第1回期日まではわずか約1か月。この短期間でいかに万全の準備をするかが、結果を大きく左右します。

 弁護士法人四谷麹町法律事務所は、会社経営者側に特化した労働審判対応で、全国の経営者をサポートしています。

▼ このページの内容

まずは相談する(会社側・経営者側限定)

1. 労働審判とは

 労働審判手続は、裁判官(労働審判官)1名と、労使それぞれの専門家(労働審判員)2名で構成される「労働審判委員会」が、原則3回以内の期日で紛争を審理し解決を図る手続です。

① スピード

申立てから平均約3か月で約80%が解決。退職した元社員が次の就職先を見つけるまでの期間を利用して申し立てるケースも少なくありません。

② 専門性

裁判官に加えて、労使双方の実務経験を持つ労働審判員が関与するため、調停内容は訴訟判決に近い合理的なものになりやすい構造です。

③ 調停優先

まず調停(話し合いによる解決)が試みられ、まとまらない場合は「労働審判」が言い渡されます。異議申立てがあると自動的に訴訟へ移行します。

対象となる紛争

解雇・雇止め、未払残業代、セクハラ・パワハラ慰謝料など、個々の労働者と事業主との間の民事紛争が対象です。労働組合との集団的紛争は対象外となります。

統計データ(直近)

・全国年間新受件数:約3,200〜3,900件(東京地裁だけで850〜1,200件前後)
・終局事由:調停成立 約67〜70% / 労働審判 約16〜20% / 取下げ 約7〜8%
・東京大学の利用者調査では、使用者側の52.5%が結果に「満足していない」と回答。適切な弁護士対応で、この「不満」を防ぐことができます。

2. 申立書が届いたら──まずこの4ステップで動いてください

⚠ 重要:第1回期日までの時間は1か月程度しかありません

申立書受領から第1回期日まではわずか約1か月。書類が届いた瞬間から、準備は始まっています。

STEP

1

弁護士にすぐ連絡する

労働審判の対応には専門的な知識と経験が必要です。書類が届いたその日のうちに、会社経営者側専門の弁護士に連絡しましょう。弁護士の予定は1か月先まで埋まっていることも多く、早めの行動が不可欠です。

STEP

2

「照会書」に弁護士依頼予定の旨を記入してFAX

依頼する弁護士が決まったら、裁判所から同封されてくる「労働審判手続の進行に関する照会書」に弁護士名を記入してFAXします。以後、裁判所との連絡は弁護士が窓口になります。

STEP

3

関連資料・証拠の収集を始める

就業規則、雇用契約書、タイムカード、メール、業務日誌など、争点に関連する資料を洗い出しておきましょう。弁護士が確認しやすい状態で準備しておくと、答弁書作成がスムーズになります。

STEP

4

答弁書の作成を弁護士と全力で進める

提出期限は第1回期日の1〜2週間前。弁護士への依頼が遅れるほど準備期間が短くなります。充実した答弁書が、労働審判の勝敗を左右します。

まず状況をお聞かせください(会社側・経営者側限定)

3. なぜ弁護士が必要か

 労働審判法は弁護士選任を義務付けていませんが、実態として申立てられた会社の約85〜90%が弁護士を代理人として対応しています。その理由は明確です。

弁護士なし対応のリスク

  • 権利義務関係を踏まえた反論ができず、本来よりも高額の解決金を求められやすい
  • 審尋(口頭での質問)に適切に答えられず、不利な心証を形成されるリスクがある
  • 調停条件の判断を誤り、後から覆せない合意をしてしまう
  • 答弁書の質が下がり、第1回期日の心証形成に大きく影響する

藤田弁護士からひとこと

「労働審判は『第1回期日までが勝負』です。答弁書と証拠の準備に全力を尽くすことが、会社にとって最善の結果につながります。経営者の皆様をストレスから解放したいという思いで、日本全国の対応に当たっています。」

4. 答弁書の作成

 労働審判委員会の心証は、申立書(労働者側)と答弁書(会社側)によって形成されます。第1回期日での証拠調べは、主にこの心証の「確認作業」として行われます。

答弁書の主な記載事項

1. 申立書の趣旨に対する答弁
2. 申立書に記載された事実への認否
3. 答弁を理由づける具体的な事実
4. 予想される争点と関連する重要な事実
5. 争点ごとの証拠
6. 申立てに至る経緯の概要

ページ数の目安

事案により異なりますが、通常は20〜30頁以内、シンプルな事案は数頁で十分なこともあります。「長ければ良い」ではなく、コンパクトで読みやすい答弁書の方が伝わりやすく、効果的です。

証拠の引用方法について(東京・大阪の運用)

東京地裁・大阪地裁では、労働審判員には答弁書のみが事前送付され、証拠の写しは送付されません。そのため、重要な証拠の内容を答弁書本文中に書き込んでおくことが特に重要です。証拠と照らし合わせなくても証拠内容が分かるよう記載することで、労働審判員への訴求力が高まります。

⚠ 提出が遅れると…

答弁書が提出期限に間に合わなかった場合、労働審判官・審判員が内容を十分に検討できないまま第1回期日を迎えることになります。特に2名の労働審判員には裁判所から届くまでのタイムラグがあります。一日でも早く提出することが重要です。

5. 各期日の流れ

第1回期日(申立てから約1か月)
争点確認 → 証拠調べ(審尋:口頭での質問応答)→ 調停。所要時間は通常約2時間。第1回で調停が成立することも珍しくありません(全体の約1/3がここで終局)。
第2回期日(第1回から約2週間後)
引き続き調停。第2回期日までに全体の約2/3が終局します。補充的な証拠調べが行われることもありますが、基本は調停のための期日です。
第3回期日(原則これが最終)
最後の調停機会。まとまらない場合は「労働審判」が告知されるか「24条終了」で訴訟へ移行します。第4回期日が開催されるのは全体の1〜2%程度です。

期日には「誰が」出頭すべきか

  • 争点となる事実を直接体験した人物(報告を受けただけでは説得力が低い)
  • 調停条件の決裁権限を持つ代表取締役・人事労務担当役員など

決裁権者が出頭できない場合は、事前に解決金の範囲等について裁量を与えておくか、期日中に電話で即決できる体制を整えておきましょう。

6. 労働審判の終わり方

終局事由 内容
① 調停成立(約67〜70%) 双方合意による解決。調書は裁判上の和解と同一の効力を持ちます。
② 労働審判(約16〜20%) 調停不成立の場合に言い渡され、2週間以内に異議申立てがなければ確定。異議があれば自動的に訴訟へ移行します。
③ 取下げ(約7〜8%) 申立人が自ら取り下げるもの。期日外の話し合いで和解が成立した場合などに行われます。相手方の同意は不要な点が特徴です。
④ 24条終了(約4〜6%) 事案の性質上3回以内の審理が困難な場合などに労働審判を出さずに終了。自動的に訴訟へ移行します。
⑤ 却下・移送(約1%) 申立てが不適法な場合の却下、または管轄の問題による移送など。

「異議を出すかどうか」の判断基準

労働審判の内容が不当と感じた場合でも、異議を出せば訴訟となり、さらに時間・費用・労力がかかります。判断にあたっては次の点を冷静に考慮してください。

  • 労働審判の内容の法的妥当性
  • 訴訟移行後の時間・費用・労力的コスト
  • 他の労働者への波及効果
  • 低めの解決金で調停をまとめる方がトータルコストが低いケースも多い
異議申立てすべきか迷ったら──まずご相談ください(会社側・経営者側限定)

7. 解決金と調停条項──よくある質問

 調停が成立した場合、「調停条項」として解決内容が記録されます。経営者からよく質問される事項をQ&A形式で整理します。

Q 解決金の額はどうやって決まりますか?

当事者の権利義務関係を踏まえて決定されます。自己の主張を強硬に押し通せば有利になるというものではなく、労働審判委員会の心証に基づき調整されます。分割払いを要求した場合は一括払いより解決金が高くなる傾向があります。

Q 解決金に源泉所得税の控除は必要ですか?

解決金に賃金としての性質がある場合は源泉徴収義務が生じる可能性がありますが、調停条項に控除の明記がない状態で一方的に控除することはトラブルの元です。弁護士のアドバイスのもと、税務リスクを織り込んだ解決金額の設定をお勧めします。

Q 口外禁止条項(守秘義務条項)は入れられますか?

「本件紛争の経緯及び調停の内容について、正当な理由なく第三者に口外しない」といった条項を設けるのが一般的です。インターネットへの投稿等を抑止する効果があります。積極的に盛り込むことをお勧めします。

Q 退職日はいつにすべきですか?(解雇の効力が争われた場合)

可能な限り解雇日を退職日とすることが望ましいです。退職日を調停成立日にした場合、社会保険の遡及手続・社会保険料の負担分担・源泉所得税の問題など、複雑な処理が発生します。

Q 退職理由(会社都合・自己都合)は明記すべきですか?

議論の対象となっていない場合は、明記しないのが普通です。労働者側から「会社都合」の明記を求められた場合、助成金の受給条件等を事前に確認した上で判断してください。問題がなければ、解決をスムーズにするために応じるのも一つの選択肢です。

典型的な調停条項例(解雇の効力が争われた事案)

1 相手方は、令和○年○月○日付け解雇の意思表示を撤回し、申立人が同日付けで合意退職したことを相互に確認する。

2 相手方は、申立人に対し、解決金として○○○万円の支払義務があることを認める。

3 相手方は、前項の金員を令和○年○月○日限り、指定口座に振り込む方法により支払う(振込手数料は相手方の負担とする。)。

4 申立人と相手方は、本件紛争の経緯及び本調停条項の内容を、正当な理由なく第三者に口外しないことを相互に約束する。

5 申立人は、その余の請求を放棄する。

6 申立人と相手方は、本調停条項に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。

7 手続費用は各自の負担とする。

8. 弁護士法人四谷麹町法律事務所のご案内

 会社側の労働審判対応に特化した弁護士が、申立書受領の瞬間から全力でサポートします。

会社側特化

会社経営者側の立場で、問題社員対応・解雇・残業代・ハラスメント等の労働問題に取り組んでいます。

全国対応

東京・麹町の事務所を拠点に、オンライン相談(Zoom・Teams)で全国の経営者をサポートします。

初動の速さ

申立書受領後、迅速に態勢を整え、充実した答弁書の作成に全力を尽くします。

著作・実績

代表弁護士藤田進太郎は労働審判・問題社員対応に関する著作・講演実績多数。

弁護士法人四谷麹町法律事務所

代表弁護士 藤田 進太郎

〒102-0083 東京都千代田区麹町6丁目2番6 PMO麹町2階

労働審判の申立書が届いたら、まずご相談ください(会社側・経営者側限定)

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

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