問題社員337 他責傾向が強く成長が著しく遅い。
動画解説
この記事の要点
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他責は本人の価値観・スタイル。考え方は容易に変わらない 考え方を変えさせることをメインの目標にしても、多くの場合は徒労に終わる |
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変えるべきは「考え方」ではなく「行動」である 労働契約で会社が要求できるのは、内心ではなく、しっかり働くこと。行動の改善に注力する |
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他責の主張には「具体的な事実」で向き合う 価値観の勝負にせず、いつ・どこで・何をやったのか、なぜ環境や他人のせいなのかを説明させる |
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同じ環境でうまくいっている人(モデルケース)を示す 価値観を押し付けず、相手の考え方を「通訳」して読み解きながら対応する |
目次
1. 他責傾向が強く成長が遅い社員という問題
いくら教育しても、自分の非を認めることを極端に嫌がり、職場環境や他人の責任にすることばかり考えるため、成長が著しく遅い社員がいる。こうした社員にどう対応すればよいのか、というご相談です。本記事では、他責傾向が強く成長が著しく遅い社員への対処法を、会社側の視点から解説します。
2. まず理解すべきこと(考え方は変えにくい)
まず、社長に理解していただきたいのは、人がどのように考えるかは、基本的に自由だということです。おそらく、こうご相談される社長は、「人のせい、環境のせいにばかりしているから、自分の足りないところに気づけず、成長しない。だから、いつまでも仕事ができるようにならない。改善するには、まず考えを改めることが大事なのだ」とお考えなのだと思います。
他責は、本人の価値観・スタイルになっている
しかし、多くのこのタイプの社員への対応を社長方と一緒に行ってきた経験から言うと、周りのせい、環境のせい、他人のせいにするという他責傾向の強い方は、それが本人の価値観、いわばスタイルになっているのです。どうしてそういう考えを持つに至ったかには、生まれついての素質に加え、本人が生まれ育ってきた環境なども大きく影響しており、その蓄積で今があります。ですから、この物の考え方は容易に変わるものではありません。よほど大きな出来事があるか、本人が自分で何かに気づくかしない限り、変わりにくいものです。そこを変えようとするのは、あまり効果的ではありません。
3. 変えるべきは「考え方」ではなく「行動」
では、どうすればよいのか。行動を改めてもらうことに注力すべきだと考えます。なぜなら、雇っている社員と会社との関係は、契約だからです。労働契約・雇用契約を結んだ、契約の相手方に過ぎません。その主な内容は、給料を会社が払って、しっかり働いてもらう、という契約です。
会社が要求できるのは、内心ではなく「しっかり働くこと」
つまり、頭の中でどんなことを考えていようが、しっかり働いてもらいさえすれば、文句がないはずの契約なのです。やるべきことをやっていないというのなら、それはきっちり働いていないからであって、問題のある物の考え方を持っているから、ではありません。社長からすれば、その考え方が間違っているから、それを改めてもらって成長につなげたい、という発想でしょう。しかし、残念ながら、こうした方の考えは容易に変わりません。本人に気づいてもらうしかないのですが、気づかせようとあれこれやっても、たいてい徒労に終わります。長い年月付き合う中で、やがて気づいてもらえるならよいのですが、これをメインのターゲットにしてはいけません。どう考えるかは、たとえ平社員であっても自由であり、会社にできるのは、せいぜいアドバイスまでです。「きっちり仕事をしてください」と要求できるのが労働契約ですから、考えを改めさせることは、時間をかけて影響を与えていくという戦略に切り替え、まずはしっかり仕事をやってもらう、行動を改めてもらうことに注力してください。
4. 行動を改めてもらう具体的なやり方
やり方はいろいろ考えられますが、基本となるのは、しっかり指示に従って動いてもらうことです。いちいち教えなくても自分で動いてほしい、自分で考えて答えを出してほしい、と社長は思うでしょう。ゆくゆく、とくに幹部社員にはそうあってほしいものです。しかし、今回はそうした社員とは全然違います。他人・環境のせいにばかりして、成長が著しく遅い社員の話をしているのです。そうした方に「自分の頭で考えなさい」と言っても、できるわけがありません。
細かい指示から始め、段階を上げていく
そうではなく、何をどうすればよいのか、できるだけ細かく伝えて、その通りにまずやってもらいましょう。それすらできない方もいますから、細かく指示し、場合によってはやって見せて、しっかりやれるようになってもらえれば、最低限の合格点だと考えてください。それができるようになったら、もう少し一般的な、普通の指示を出します。細かく話さなくても、ある程度は指示の内容を理解して動いてもらえるようになったな、と思えれば成功、というくらいに考えてみてください。いきなり高いレベルを求めず、段階を踏んで能力を開発していくのです。
5. 他責の主張には「具体的な事実」で向き合う
もちろん、その中でうまくいかなくなったとき、「誰々さんが悪い」「会社の環境が悪い」と、いろいろ言ってくると思います。これにも向き合う必要がありますが、向き合うのは、そのやり方や言動に問題がある、この仕事のやり方に問題がある、という部分にフォーカスした面談です。考えが間違っているという部分をやり取りしても、生産性がありません。価値観の勝負のようになってはいけないのです。労働契約で、価値観を会社に合わせなければならない義務は、労働者にはありません。会社にあるのは、きっちり働いてくださいと要求する権利ですから、しっかり仕事をしてください、というところにフォーカスして話をしていきましょう。
「なぜ環境や他人のせいなのか」を、事実で説明させる
仕事のやり方について、普段の指示と同様にまず細かくやり方を伝え、うまくいったかどうかを検証していきます。その中で、本人が「環境が悪い」「誰々さんのせいだ」と言い出したら、それはどうしてなのかを、具体的な事実をベースに議論してください。何月何日の何時ごろ、どこで、何をやったことがうまくいかなかったのか、それが環境のせいであるのはどうしてなのか、先輩や同僚のせいであるのはどうしてなのかを、本人に説明させます。「自分はやれることをしっかりやっている」と言うのであれば、それが仕方のないことだったと言える理由を、事実を踏まえて説明させてください。実際のパフォーマンスの事実についてやり取りしていくと、どこかで議論は噛み合います。反対意見のままかもしれませんが、噛み合ったうえで「意見が違いますね」という結論になる可能性は高く、少なくとも「確かにこのやり方はうまくいかなかったかもしれない」というところまではたどり着けることがあります。上手な対話が必要で、うまくいくケースもいかないケースもありますので、具体的な言葉のやり取りについては、日本語の指導までできる弁護士にオンライン打ち合わせを頻繁に入れ、相談しながら対応するとよいでしょう。
6. モデルケースを示して説得力を高める
より根本的に、こちらの言い分の説得力を高める方法があります。それは、同じような環境、同じような人たちの中で、うまく仕事ができている人を見せることです。いわばモデルケースです。
「同じ環境でできている人がいる」と示せれば、他責は言いにくくなる
「環境が悪いと言うけれど、誰々さんはできていますよね。同じような人たちと仕事をしていても、誰々さんはしっかりできているじゃないですか。環境や周りの人が悪いだけでなく、あなたの実際の行動に問題があったのではないですか」と、どこをどうすればよいのかを、うまくいった人の事例も踏まえて話すのです。すると、環境が悪い、周りの人が悪い、とは言いにくくなります。「誰々さんは特別に出来がよいだけで、自分は普通の能力なのに、環境が悪く周りの協力も得られないからうまくいかないのだ。そんな特別にできる人の話を持ってこないでほしい」くらいは言われるかもしれません。それでも、うまくいっている人が、できれば複数いることを示せれば、会社の言い分の説得力が増し、本人の言い分の説得力は落ちていきます。逆に、誰もうまくいっている人がいないのであれば、社長のほうも反省しなければなりません。環境がそれほど悪くない、周りも悪くない、と言うのであれば、誰かはうまくいっているはずだからです。誰もうまくいかないのなら、環境や周りに問題がある可能性もありますので、そこは振り返ってしっかりチェックしてください。
7. 価値観を押し付けず、相手の考えを「通訳」する
ここで注意したいのが、経営者の価値観を押し付けないことです。経営者の価値観だと、「周りの環境に恵まれていなくても、それを乗り越えていくのが人生だろう、それが仕事というものだろう」と考える方が多いものです。自分自身が、いくら環境が悪くても苦難を乗り越えて会社を育ててきたからです。そうした経営者的な発想を持つ者同士なら話が合うかもしれませんが、相手は違います。給料を稼ぐために就職して仕事をしている、一人の社員に過ぎません。そういう方に「普通こうだろう」と経営者的な価値観を押し付けても、たいていうまくいきません。「確かに社長のおっしゃるとおりですね」と話を合わせてくれるかもしれませんが、心の中では絶対にそう思っていないものです。
「自分だったら」ではなく、相手の価値観で相手の立場を読む
ですから、「自分だったらこうなのに」「自分が相手の立場だったらこうなのに」という考えでは足りません。発想そのものが違うのですから、この人の価値観で、相手の立場だったらどうなのか、というところまで考えないと、どう行動するのか、どんなことを考えているのかを読むことはできません。これはなかなか難しく、とくに自社の社員が相手だと感情も入ってしまうため、冷静に客観的に相手の考えを読むのが難しくなります。まるで外国語のように聞こえてくることもあるでしょう。私の仕事でもよくあることで、「誰々さんはこう言っているが、こういう意味で言っているのですよ」と通訳するように解説すると、「そんなつもりで言っているのですか、だったらこう言えばよいのに」と言われます。「いや、この人の行動パターンやスタイルだと、こうなってしまうのですよ」とお話しすると、「そういうものなんですか」とよく言われます。ちょうど言語のようなもので、相手のような物の考え方をする人が、相手の立場だったらどういうつもりで言ったり、やったりしているのかを読んで対応する必要があります。それが難しい場合は、通訳が必要です。
8. まとめ
- 他責は本人の価値観・スタイルであり、考え方は容易に変わらない。変えることをメイン目標にしない
- 変えるべきは「考え方」ではなく「行動」である。会社が要求できるのは、内心ではなく、しっかり働くこと
- 行動は、細かい指示から始め、段階を上げて能力を開発していく
- 他責の主張には、価値観の勝負にせず、具体的な事実で向き合う。なぜ環境や他人のせいなのかを説明させる
- 同じ環境でうまくいっている人(モデルケース)を、できれば複数示す。誰もいなければ会社側も見直す
- 価値観を押し付けず、相手の考え方を「通訳」して読み解きながら対応する
他責傾向の強い方は、社長とは発想がまったく違い、「自分が彼・彼女の立場だったらこう考えるのでは」という当てはめでは、考えも行動も読めません。こちらから見れば人のせい・環境のせいにばかりしているように見えるものが、本人のスタイル・価値観からすると、正当な理由があるのです。驚くことに、まっとうなことを言っていると本気で思っていたりします。「そんなはずはない」と決めつけず、人によって物の考え方が全然違うのだ、ということをまず理解してください。そのうえで、労働契約はしっかり働いてもらう契約に過ぎず、どんな物の考え方をするかは労働者の自由で、契約で強制できるものではないことも、よく理解してください。だからこそ、考え方を変えさせるのではなく、行動にフォーカスして能力開発をしていくのです。それでも考え方を変えてほしいと願うのであれば、同じような環境・人たちの中で成功し、生き生きと輝いている先輩をたくさん輩出できるような会社に育てていく。そうすれば、「自分もあんなふうになりたい」と、考え方が変わるかもしれません。こうしたケースにお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 他責的な考え方を、指導で改めさせることはできますか。
A. 考え方そのものは、本人の価値観・スタイルになっていることが多く、容易には変わりません。よほど大きな出来事があるか、本人が自ら気づくかしない限り変わりにくいため、考え方を変えさせることをメインの目標にすると、たいてい徒労に終わります。労働契約で会社が要求できるのは、内心ではなく、しっかり働くこと、すなわち行動です。まずは行動を改めてもらうことに注力し、考え方への働きかけは、時間をかけて影響を与えていく戦略に切り替えるのが現実的です。
Q2. 「環境が悪い」「あの人のせいだ」と言われたら、どう対応すればよいですか。
A. 価値観の勝負にせず、具体的な事実で向き合ってください。何月何日の何時ごろ、どこで、何をやったことがうまくいかなかったのか、それが環境や他人のせいであるのはどうしてなのかを、本人に説明させます。「自分はやることをやっている」と言うなら、それが仕方のないことだったと言える理由を、事実を踏まえて説明させます。実際のパフォーマンスの事実についてやり取りすると、議論が噛み合い、少なくとも「このやり方はうまくいかなかったかもしれない」というところまではたどり着けることがあります。
Q3. 成長を促すために、ほかにできる工夫はありますか。
A. 同じような環境・人たちの中でうまくやれている人を、モデルケースとして示すことが有効です。できれば複数示せると、会社の言い分の説得力が増し、本人の他責の主張は通りにくくなります。逆に、誰もうまくいっている人がいないのであれば、環境や周りに問題がある可能性もありますので、会社側も見直しが必要です。また、経営者の価値観を押し付けるのではなく、相手の考え方を読み解きながら対応することが大切です。言葉のやり取りが難しい場合は、弁護士に相談しながら進めるとよいでしょう。
最終更新日:2026年7月18日