問題社員284 会社や上司を誹謗中傷する社員の対応で最も大事なこと
動画解説
この記事の要点
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最優先の目的は「誹謗中傷を止めること」——懲戒処分や退職勧奨はその次の話。まず「止める」ことを最初のゴールに置く 事実と異なる誹謗中傷を放置するほど会社のダメージが蓄積される。犯人探しや処分方針より先に、誹謗中傷を止めることを優先する |
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最も効果的な対応は「早期の面談・事情聴取」——叱りつけるより先に、穏やかに事情を聞くだけで多くのケースは解決する 社長や人事担当者が淡々と事実確認するだけで、本人は「バレている」と分かって恥ずかしくなる。強く叱りつけるより、穏やかな事実確認の方が効果が高い |
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面談では叱る前に事実確認——「これはあなたが書いたのか」「なぜこれを書いたのか」と穏やかに聞く。本人の言い分も聞いた上で対応を決める 頭ごなしに叱ると無駄にこじれる。まず事実確認し、本人の言い分を聞いてから注意指導・懲戒処分方針を弁護士に相談して決める |
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犯人が特定できない場合も「疑わしい全員と話す」という選択肢がある——犯人を特定できなくても、誹謗中傷を止めることはできる 「犯人が分からないから何もできない」ではなく、疑わしい人全員に話すことで、犯人は「バレているかもしれない」と感じ、誹謗中傷を止める効果がある |
目次
1. 誹謗中傷の典型パターン——SNS・メール・取引先への拡散
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
普段は問題のない社員でも、会社や上司との関係がうまくいかなくなってくると、SNSやインターネットに悪口を書き込んだり、関係のない方々に大量の誹謗中傷メールを送ったりするケースがあります。特に悪質なケースでは、取引先にまで送ることがあります。
よく見られる誹謗中傷のパターン
| SNS・インターネット | X(旧Twitter)・Instagram等に会社や上司の悪口を投稿する。本名が特定できるアカウントで書く場合もある |
| 社内メールの拡散 | 関係のない多数の社員に誹謗中傷を含む大量のメールを送信する |
| 取引先への送信 | 会社の対面(体裁)を傷つけることで、会社に自分の要求を通させようとする意図がある場合が多い |
「社内で直接文句を言っても自分の思い通りにならないが、取引先などに送れば会社が困るだろう」という発想から取引先に送るケースもあります。こうした誹謗中傷が続くと、会社の信用・取引関係に深刻なダメージが生じます。
2. 最優先の目的は「止めること」——処分方針はその後で決める
誹謗中傷への対応で最も大事なことを結論から先に申し上げます。最優先の目的は、誹謗中傷をとにかく止めることです。
犯人を見つけて懲戒処分する、やめてもらうというのも大事なことですが、それは次の段階の話です。会社を経営者として守っていく観点から言えば、まず「でたらめな誹謗中傷が広まり続けることを止める」ことを最初のゴールに設定してください。
誹謗中傷は放置するほどダメージが拡大します。その間に処分方針を検討したり、証拠を集めたりすることも大切ですが、それより先に「これ以上広まることを防ぐ」行動を起こしてください。誹謗中傷が続く間は、ずっと会社の評判が傷つき続けます。
なお、会社が本当に問題のあることをやっていて、それが公益通報などの正当な告発に当たるような案件は別です。そうではなく、感情的に理由もなく事実と異なる誹謗中傷を行っているケースを中心にお話しします。
3. 最も効果的な対応は「早期の面談・事情聴取」
では具体的にどうすればよいのでしょうか。最も効果的な対応は「面談を早く行うこと」です。放置してはいけません。
まず証拠を確保してから面談に臨んでください。SNSへの投稿であればスクリーンショット、メールであればPDFに保存するなどしておきます。本人のアカウントや名前が特定できるものは日時とともに手元に用意しておきます。その上で、できるだけ早く本人と面談してください。
面談のタイミングと形式
| 対面が理想 | 可能であれば直接会って話すことが最も効果的。実際に会うことのプレッシャーが誹謗中傷の抑止力になる |
| Zoom・Teams | 遠隔地にいる場合や慣れている社長であれば、対面と同等の効果が期待できる |
| 電話 | 長年電話で交渉してきた経験がある社長であれば有効。自分の得意な手段で臨む |
重要なのは「早く行動すること」と「自分の得意な手段で行うこと」です。Zoomが苦手な社長は対面で話す方が効果的です。得意でない方法では本来の力が発揮できません。
4. 面談での進め方——「叱る前に事実確認」の原則
面談では、いきなり叱りつけることはしないでください。まず穏やかに事実確認をすることが鉄則です。
❌ やってはいけない進め方
「あなたが取引先に誹謗中傷メールを送ったのは何事ですか!会社に対してどういうつもりなんですか!」——頭ごなしに叱りつけると無駄にこじれる原因になる
✓ 正しい進め方
- 「これは○月○日のあなたのアカウントの投稿のようですが、これはあなたが書いたということで間違いありませんか」——まず事実を確認する
- 「どうしてこれを書いたのか、教えてもらえますか」——理由・経緯を穏やかに聞く
- 「こういった取引先へのメールはどんな事情でお送りになったんですか」——本人の言い分をしっかり聞く
叱りつけるのは後でいくらでもできます。まず本人に「やったのか・なぜやったのか」を穏やかに聞くことが大切です。面談で事実が確認できたら、その後の注意指導・懲戒処分の方針をゆっくり弁護士に相談して決めればよいのです。
5. 穏やかな事実確認がなぜ効果的なのか
「強く叱りつけないで穏やかに話すだけで止まるのか?」と疑問に思う方もいます。しかし実際には、穏やかな事情確認の方が強く叱るより効果が高いことが多いです。
その理由を説明します。感情に任せてSNSに投稿したり、取引先にメールを送ったりしたような方の多くは、「大して根拠もなく衝動的にやってしまった」というケースです。そのような方にとって、社長や人事担当者が穏やかなニコニコした表情で淡々と事実確認してくる場面は、実はかなりのプレッシャーになります。
やましいところのある人が、社長に穏やかな表情で淡々と事実確認される場面は相当つらいのです。「会社にしっかりバレているんだ」と分かってしまうと、さらなる投稿・送信をやりにくくなります。これが誹謗中傷を止める効果につながります。強く叱りつけるよりも、このような対応の方が冷静に物事が進みやすい場合がほとんどです。
9割以上のケースは、穏やかな事実確認の面談だけで誹謗中傷が止まるか、大幅に減ります。
6. 本人の言い分も聞く——「それはそれ、これはこれ」の姿勢で
事情確認の中で、本人から「取引先にメールを送ったのはまずかったかもしれないが、上司の○○さんに○○されて本当に嫌だったんです」という話が出てくることもあります。そのような言い分も、しっかり聞いてあげることが大切です。
「言い分はそれとして聞く。でも取引先にこんなメールを送ることが問題だったという点については、それとは別の話だよね」という形で整理できます。
本人の言い分を聞いた上で伝えられること
- 「不満があるなら、人事に相談する、社内の窓口に相談するという方法もあったよね」
- 「上司に問題があると思ったとしても、取引先にメールを送ることがその解決策だったと思う?」
- 「不満はそれとして調査するが、SNSへの投稿・メール送信は問題だったよね」
本人の言い分も聞いた上でこういった話ができれば、「会社側に落ち度があった部分はそれとして対応する。しかし誹謗中傷というやり方は問題だった」という整理が自然とできます。会社側に対応すべき問題がある場合はそれを並行して調査し、誹謗中傷そのものについては別途注意指導・懲戒処分を検討します。
7. 犯人が特定できない場合の対処法
社名や会社への批判が匿名のSNSやインターネット掲示板に書き込まれており、「疑わしい人物はいるが断言できない」という場合があります。そのような場合でも「犯人が分からないから何もできない」と放置してはいけません。
「犯人だと決めつけることはできない」というのはその通りです。しかし会社経営者として最も大事なことは「会社を守ること」です。犯人を特定して処分することではなく、誹謗中傷を止めることが最優先です。
この場合の対処法として、疑わしい方全員に面談して話すという方法があります。「あなたが犯人だ」と決めつけるのではなく、「このような書き込みが見つかって困っています。心当たりはありますか。もし何か会社に対してご不満があるのであれば、こういった形ではなく直接相談してください」という形で全員に話すことができます。
犯人は「もしかして自分のことを疑っているかも。会社にバレているかもしれない」と感じます。この心理的なプレッシャーが、誹謗中傷を止める効果につながります。冤罪の方については「心当たりはない」と答えるだけですので、問題にはなりにくいです。
匿名のインターネット書き込みについては、発信者情報開示請求(プロバイダへの開示請求)という法的な手段で発信者を特定する方法もありますが、時間と費用がかかります。まず面談での対応を先行させて、それでも誹謗中傷が続く場合は弁護士に相談した上で法的手段を検討してください。
8. 面談後の対応——注意指導・懲戒処分は弁護士に相談しながら
面談で事実が確認できたら、その後の対応(注意指導・懲戒処分・退職勧奨等)については、弁護士に相談しながらゆっくり決めてください。
焦って早計な判断をする必要はありません。誹謗中傷が止まることが最優先の目的でしたので、まずそれが達成できれば次のステップに進む余裕が生まれます。
面談後の対応の流れ
- 面談・事情聴取を行い、誹謗中傷の事実と理由を確認する
- 本人の言い分を聞いた上で、会社側に対応すべき問題があれば別途調査する
- 誹謗中傷そのものへの対応方針(注意指導・懲戒処分の程度)を弁護士に相談して決める
- 注意指導書・懲戒処分通知書を作成・交付する
- それでも誹謗中傷が続く場合は退職勧奨・法的措置を検討する
9. まとめ
- 最優先の目的は「誹謗中傷を止めること」——処分方針はその後でゆっくり決める
- 最も効果的な対応は早期の面談・事情聴取——放置せず、できるだけ早く本人と話す
- 面談では叱る前に穏やかに事実確認する——「これはあなたが書いたのか」「なぜ書いたのか」を聞く
- 穏やかな事実確認は強く叱るより効果が高い——バレていると分かることが抑止力になる
- 本人の言い分も聞く——「それはそれ、これはこれ」で整理する
- 犯人が特定できない場合は疑わしい人全員に話す——犯人に心理的プレッシャーを与えることで誹謗中傷を止める
- 面談後の対応は弁護士に相談しながら決める——焦って判断する必要はない
会社や上司への誹謗中傷でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. SNSへの書き込みが事実と異なる場合、法的措置(名誉毀損・業務妨害等)を取ることはできますか。
A. 事実と異なる内容で会社の名誉を傷つける書き込みは、名誉毀損(民法・刑法)の対象になる場合があります。また、業務を妨害するような行為は業務妨害罪として問題になることもあります。ただし法的措置は時間・費用がかかりますので、まず面談での対応を先行させることをお勧めします。法的措置については弁護士に相談の上、個別の事情に応じて検討してください。
Q2. 取引先にメールを送った社員を懲戒解雇することはできますか。
A. 内容・程度によっては懲戒解雇が認められる場合があります。ただし懲戒解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。また、書き込みの内容が全くの虚偽か、一定の事実を含むかによっても評価が変わります。懲戒解雇を検討する場合は必ず事前に弁護士に相談してください。
Q3. 書き込みが本人のものかどうか証明できません。どうすればよいですか。
A. 本人のアカウントであることが特定できれば証拠になります。特定できない場合でも、面談で本人に問いかけることで自白・認否を引き出すことができます。また、書き込みの内容・時期・本人しか知らない情報の有無などから状況証拠として認定できる場合があります。法的な特定には発信者情報開示請求という手続きがありますが、弁護士に相談してから進めてください。
最終更新日:2026年4月30日