問題社員282 職場内のハラスメントが「会社自身の問題」である理由

動画解説

この記事の要点

社員同士のハラスメントは「個人間のトラブル」ではなく「会社自身の問題」——社長が主体的に対処しなければならない

職場でのハラスメントを放置することは、社長が会社の秩序管理を怠っていることと同じ。リーダーとして問題を止められる力があるからこそ、社員はついてくる

ハラスメントが不法行為と認定されると会社が「使用者責任」を負い、満額を一旦支払う必要がある——加害社員への求償は難しいことが多い

退職後の加害社員へは連絡すら取れなくなることが多い。「後で本人に負担させる」は当てにならない。会社が一旦全額払うリスクを認識することが重要

会社には安全配慮義務がある——職場環境が著しく悪い状態を放置すると、それ自体が損害賠償の原因になる

ハラスメントを放置することは雇用契約上の安全配慮義務違反になりえる。「気持ちよく才能を発揮できる環境を整える義務」が雇い主にはある

1. ハラスメントを「個人間のトラブル」と捉えることの問題

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

社員の間でハラスメントが起きていると耳にした場合、「困った社員たちだ。仲良くやってほしい」と思いながらも、どこか「本人同士の問題だ」という感覚で見ている経営者の方がいます。しかしこれは認識が違います。

職場内でのハラスメントは、個人間のトラブルではなく、会社自身の問題です。会社が雇用者として主体的に対処しなければならない問題です。

2. ハラスメントは「会社自身の問題」——リーダーとしての対処責任

なぜハラスメントは会社自身の問題なのでしょうか。

第一に、それは社長の大事な会社で起きていることだからです。雇用契約・労働契約に基づいて働いてもらっているのですから、職場でハラスメントをされても困ります。社長の見ていないところで嫌がらせをするような社員を認めるわけにはいきません。

ハラスメントをする社員に「なぜ勝手にやっているのか、社長に気づかれないだろうと思っているのか、社長はこういうことを止められないと思っているのか」という感覚で捉えてください。そんな行為を認めるわけにはいかない——こういった強い姿勢が、リーダーとして会社を守ることになります。

ハラスメントを行う社員をしっかりストップできる経営者だからこそ、社員はついてきます。問題社員を止められないまま放置していると、被害を受けている社員が「この職場を去るしかない」と感じて先に辞めていきます。優秀な社員から順に辞めていくという最悪の結果を招きます。

3. 法律的なリスク① 使用者責任——会社が満額を一旦支払う義務

法律的な観点からも、ハラスメントへの対処が「会社自身の問題」であることを理解する必要があります。

社員がハラスメントを行い、それが不法行為と認定された場合、会社は使用者責任(民法第715条)として損害賠償義務を負います。加害者である社員と連帯して、被害者への損害賠償を支払う義務が会社に生じます。

被害者が弁護士に相談すれば、「会社も一緒に訴えましょう」と必ずアドバイスされます。加害者個人より会社の方がお金を払ってもらいやすいからです。会社を訴えた場合、損害賠償が認められれば会社が一旦全額を支払う必要が生じます。「後で加害社員に負担させればいい」という発想では対応できないことが多いです。

4. 加害社員への求償が難しい現実

「一旦会社が払っても、後で加害社員に請求すればいい」という考えがあるかもしれません。しかし現実には、この求償が難しいことが多いです。

問題が大きくなると加害社員は退職してしまうことが多く、退職後は連絡が取れなくなることがあります。在職中は社長の言うことを聞いていた人も、退職後は全く聞かなくなります。特にハラスメントを行うような方はなおさらです。連絡が取れない相手への求償は現実的に困難です。

だからこそ、ハラスメントが起きる前に、あるいは起きた初期段階で、会社として対処することが重要なのです。

5. 法律的なリスク② 安全配慮義務違反——放置すること自体が違法になる

もう一つの法律的なリスクが安全配慮義務違反です。雇用契約・労働契約には、会社が社員に対して良好な職場環境を保つ義務(安全配慮義務)があります。

社員が気持ちよく才能を発揮して働けるよう職場環境を整える義務が雇い主にはあります。ハラスメントが行われている状況を放置することは、この安全配慮義務に違反するものとして、それ自体が損害賠償の原因になることがあります。

「ある程度の不快な状況」が安全配慮義務違反になるわけではありません。程度の問題です。しかし、ハラスメントが繰り返されているにもかかわらず会社が対処しない、あるいは対処が遅すぎた場合は、会社自身が安全配慮義務違反として訴えられるリスクがあります。

6. まとめ

  1. ハラスメントは個人間のトラブルではなく会社自身の問題——経営者が主体的に対処する責任がある
  2. ハラスメントを止められる経営者にこそ社員はついてくる——放置すると優秀な社員が先に辞めていく
  3. 使用者責任——会社が満額を一旦支払う義務が生じる——被害者の弁護士は必ず会社も共同被告にする
  4. 加害社員への求償は難しいことが多い——退職後は連絡が取れなくなることが多く、求償が現実的でないことがある
  5. 安全配慮義務——放置すること自体が会社の法的責任になる——良好な職場環境を保つ義務が雇い主にはある

ハラスメント対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 社員間のハラスメントを知らなかった場合、会社は責任を負いますか。

A. 知らなかったこと自体が問題になることがあります。会社として適切な相談窓口の設置や定期的な状況確認など、ハラスメントを把握するための合理的な体制を整えていなかった場合、「知る立場にあったのに対応しなかった」と評価されることがあります。ハラスメントの情報が入った際には迅速に対応することが重要です。

Q2. 社員のセクハラについて被害者から相談を受けました。まず何をすべきですか。

A. まず被害者の話を丁寧に聞き、具体的な事実関係を確認することが先決です。次に加害者とされる社員からも事実関係を聴取します。その後、事実関係に基づいて懲戒処分など適切な対応を検討してください。早期かつ適切な対処が、会社の法的リスクを最小化します。具体的な対応については弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

最終更新日:2026年4月30日


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