問題社員280 「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」は誤解です。

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この記事の要点

「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」は誤りで、パワハラかどうかは客観的に決まる——「平均的な労働者の感じ方」が判断基準

この誤りに縛られると、問題社員に「パワハラだ」と言われただけで必要な注意指導ができなくなる。大切な社員を守れなくなる

相手がパワハラと感じても、客観的にパワハラでなければパワハラではない——正当な注意指導はパワハラにならない

問題社員への適正な注意指導を、相手の「パワハラ」という主張で委縮してはならない。客観的に見て正当な指導であれば堂々と行うことができる

社長がパワハラのつもりがなくても、客観的にパワハラと評価されれば問題になる——「悪気がなかった」は言い訳にならない

相手の主観だけでパワハラが決まらない点は社長に安心材料だが、社長の悪気のなさも判断基準にはならない。平均的な労働者がパワハラと感じる言動はパワハラになる

1. 「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という誤解が広まっている

会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。

「相手がパワハラだと思ったらパワハラなんですよ」という話を聞いたことがある経営者の方は多いのではないでしょうか。しかし、これは誤りです。

少し考えてみてください。「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という論理が通るなら、相手が気に食わないことを何でもパワハラにできてしまいます。そうなると、経営者・管理職は相手の気分一つで何もできなくなってしまいます。そんなはずがありません。

2. パワハラの正しい判断基準——「平均的な労働者の感じ方」という客観的基準

パワハラかどうかは客観的に決まります。具体的には「平均的な労働者の感じ方」によって判断されます。

パワハラかどうかの判断基準

❌ 相手がパワハラだと感じたかどうか(主観) これはパワハラかどうかの判断基準ではない
❌ 社長がパワハラのつもりだったかどうか(主観) これも判断基準ではない(多少の考慮要素にはなる)
✓ 平均的な労働者がパワハラだと感じるかどうか(客観) これが正しい判断基準

つまり、正当な注意指導を行ったところ相手がパワハラだと言い出しても、客観的に見て平均的な労働者がパワハラと感じないようなものであれば、パワハラにはなりません。「パワハラだ」という相手の言葉に委縮して必要な注意指導をやめる必要はありません。

3. 社長にとっての「安心材料」と「耳の痛い話」

この客観的基準の考え方には、社長にとって安心材料になる部分と、耳の痛い部分の両方があります。

安心材料と耳の痛い話

社長への安心材料 相手だけがパワハラだと感じても、客観的にパワハラでなければパワハラにはならない。正当な指導を「パワハラだ」と言われても委縮しなくてよい
耳の痛い話 社長が「パワハラのつもりはなかった」「悪気がなかった」と言っても、客観的に平均的な労働者がパワハラと感じる言動を取っていれば、パワハラになる。悪気のなさは言い訳にならない

本当にパワハラと認定された事案というのは、「相手がパワハラと感じたからパワハラになった」のではなく、「客観的に見てもパワハラと評価されるような言動があったからパワハラになった」のです。この点をしっかり理解してください。

4. パワハラ指針に定める3要素

職場におけるパワーハラスメントの定義として、厚生労働省のパワハラ指針には次の3要素すべてを満たすものとされています。

パワハラの3要素(すべて満たすことが必要)

  1. 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

指針には「客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない」とも明記されています。

「客観的に見て」という部分が重要です。相手がどう感じたかではなく、客観的に判断されるものなのです。

5. この誤解に縛られると起きる問題——必要な注意指導ができなくなる

「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という誤解を信じ込んでしまうと、どうなるでしょうか。

問題社員に対して必要な注意指導を行ったとき「パワハラです」と言われるたびに委縮してしまい、必要な指導ができなくなります。その結果、周りで嫌な思いをしている大切な社員たちを守れなくなります。

もし「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」という誤解が正しければ、周りの社員に暴言を吐いている問題社員に対して注意指導しようとしても、「パワハラ」と言われた瞬間に止まらざるを得なくなります。そうなれば問題社員が守られ、真面目に働いている社員たちが被害を受け続けます。そんなことはあってはなりません。

パワハラかどうかは客観的に決まります。正当な注意指導にパワハラだと言われたら「それは誤解です」と伝え、適切な注意指導を続けてください。そうすることで、周りで一生懸命働いている社員たちを守ることができます。

6. まとめ

  1. 「相手がパワハラだと思ったらパワハラ」は誤り——パワハラかどうかは客観的に決まる
  2. 判断基準は「平均的な労働者の感じ方」——相手の主観でも社長の主観でもなく、客観的基準
  3. 正当な注意指導はパワハラにならない——相手に「パワハラだ」と言われても委縮して指導をやめてはいけない
  4. 社長の悪気のなさは言い訳にならない——客観的に平均的な労働者がパワハラと感じる言動はパワハラになる
  5. 必要な注意指導を行うことで周りの社員を守る——問題社員への適正な指導を続けることが経営者の責任

パワハラ対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「パワハラだ」と言われて注意指導をやめてしまいました。どうすればよいですか。

A. まず行った注意指導の内容が客観的に見て適正なものだったかを確認してください。具体的事実に基づき礼儀正しく行った業務上の注意指導であれば、パワハラにはなりません。「パワハラだ」という主張に委縮せず、必要な指導を再開することをお勧めします。具体的な状況については弁護士に相談してください。

Q2. 感情的に叱ってしまうことがあります。パワハラになりますか。

A. 感情的な叱り方は、客観的に見て「平均的な労働者が不快・嫌がらせと感じる」程度に達した場合にパワハラと評価されるリスクがあります。「気持ちはわかるが言い方は良くなかった」という状況でも問題になることがあります。感情を抑えて具体的事実に基づいた指導を行うことが、パワハラ防止と教育効果の両立につながります。

最終更新日:2026年4月30日


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