問題社員279 問題社員の解雇でトラブルを避けるには
動画解説
この記事の要点
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最も多い失敗パターンは「追い詰められていきなり解雇」——注意指導・懲戒処分の積み上げなしに解雇すると、解雇無効で大金を取られる 周りの社員が限界を迎えて社長に訴えた時点で急に動いても遅い。もっと早い段階から注意指導・懲戒処分を積み上げることが唯一の正解 |
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「30日前予告すれば解雇できる」は誤解——解雇予告は手続きであり、解雇の実体的要件(客観的に合理的な理由)とは別の話 労基法上の解雇予告を守っても、労働契約法上の解雇権濫用法理を満たさなければ解雇は無効になる。この2つは別々の問題 |
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「試用期間14日以内なら自由に解雇できる」も誤解——解雇予告不要なだけで、客観的に合理的な理由の要件は変わらない 労基法の条文は「解雇予告なしで解雇できる」という意味ではなく、「解雇予告が不要になる」という意味に過ぎない |
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「労基署に相談して解雇したから大丈夫」も誤解——労基署は労基法違反を判断する機関であり、解雇の有効無効は裁判所が判断する 労基署の確認=裁判で勝てる保証ではない。解雇の有効無効に関する法律相談は弁護士に行うこと |
目次
1. 最多パターン「追い詰められていきなり解雇」の問題点
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
問題社員の解雇でトラブルになる最も多いパターンは、「追い詰められていきなり解雇」です。
典型的な経緯はこうです。問題のある社員がいるが、経営者はあまりうるさく言わず放置気味になっていた。懲戒処分もしていない。たまに注意することはあるが、しっかり改善させるまでには至っていない——そのうち周りの社員が限界を迎え、社長のところに「もう耐えられません。あの人がいるなら私たちが辞めます」と訴えてくる。社長が慌てて解雇したところ、解雇無効として内容証明が届き、労働審判・訴訟になり、お金をたくさん取られてしまう。
「なんであんなにひどい社員なのに解雇無効なんだ、おかしい」と思う経営者は多いです。確かに本当に問題のある社員です。しかし問題は、問題が小さいうちから具体的事実に基づいた注意指導・懲戒処分を積み上げてきたかどうかです。これが足りない場合、どれだけ問題社員でも解雇が無効になってしまいます。
解雇によるトラブルを避けるためには、追い詰められて動くのではなく、問題がエスカレートする前の早い段階から注意指導・懲戒処分を積み重ねていくことが唯一の正解です。
2. 解雇に必要な2つの法的要件
解雇でトラブルを避けるための前提として、解雇に必要な法的要件を正確に理解しておくことが重要です。
解雇の有効要件(労働契約法第16条)
| ① 客観的に合理的な理由 | 社長の主観ではなく、裁判官が見ても「これは解雇してもしょうがない」と思えるだけの客観的な事実・理由があること |
| ② 社会通念上の相当性 | 解雇という手段が、社会常識的に見ても相当と認められること |
この2つを満たさない解雇は、解雇権の濫用として無効となります(労働契約法第16条)。解雇予告など手続き的な要件を守っても、この実体的な要件が満たされなければ解雇は無効です。
3. 誤解①「30日前予告すれば解雇できる」
よくある誤解の一つ目が「30日前に予告さえすれば解雇できる」というものです。
確かに、労働基準法第20条は、解雇する場合は30日前に予告するか、30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないと定めています。これは守らなければならない手続き的要件です。
しかしこれは解雇に関する規制のうちの一つに過ぎません。解雇予告という手続きを守っても、先述の「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ、解雇は無効になります。この2つは全く別の話です。
解雇予告手当を払って即日解雇→解雇無効で大金を取られるというケースは実際に多くあります。手続きを守ることは必要ですが、それだけで解雇が有効になるわけではありません。
4. 誤解②「試用期間14日以内なら解雇できる」
二つ目の誤解が「採用後14日以内なら自由に解雇できる」というものです。どこかでそういう話を聞いた経営者の方がいらっしゃいますが、これも正確ではありません。
労働基準法には、採用後14日以内の試用期間中の者については解雇予告が不要になるという規定はあります。つまり「30日前の予告なしに解雇できる」ということです。
しかしこれは「解雇予告制度の適用が除外される」という意味であって、「自由に解雇できる」という意味ではありません。客観的に合理的な理由が必要であることに変わりはありません。「採用してすぐだから自由に解雇できる」という発想は誤りです。
5. 誤解③「労基署に相談して解雇したから大丈夫」
三つ目の誤解が「労働基準監督署に相談して解雇したから大丈夫だ」というものです。
労働基準監督署は、労働基準法などの労働法令を使用者に遵守させることを目的とした行政機関です。労基署が確認することは「労基法違反にならないかどうか」です。つまり「30日前予告しているか」「解雇予告手当を払っているか」などの手続き的な要件です。
労基署の確認は「労基法違反にならないか」の確認です。「解雇が有効かどうか(裁判で勝てるか)」の判断は全く別の話です。労基署が問題ないと言っても、裁判で解雇無効になってしまうケースは実際にあります。解雇が有効かどうかの法律相談は、弁護士に行うことが必要です。
6. まとめ
- 「追い詰められていきなり解雇」が最多の失敗パターン——早い段階からの注意指導・懲戒処分の積み上げが唯一の正解
- 解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要——手続き的要件(解雇予告)とは別の実体的要件
- 「30日前予告すれば解雇できる」は誤解——解雇予告は手続き的要件の一つに過ぎない
- 「試用期間14日以内なら自由に解雇できる」も誤解——解雇予告が不要になるだけで、実体的要件は変わらない
- 「労基署に相談したから大丈夫」も誤解——労基署は労基法違反を判断する機関。解雇の有効無効は弁護士に相談する
解雇のトラブル防止でお悩みの経営者の皆様は、必ず事前に弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 解雇予告手当を払って即日解雇しました。これで問題ないですか。
A. 解雇予告手当の支払いは手続き的要件を満たしますが、解雇の有効性(客観的に合理的な理由・社会通念上の相当性)とは別問題です。即日解雇したとしても、その解雇に客観的に合理的な理由がなければ解雇無効となります。すでに解雇した後でもトラブルになる可能性がありますので、弁護士に相談してください。
Q2. 解雇が無効になった場合、具体的にどのような影響がありますか。
A. 解雇が無効とされると、解雇通知日以降に支払われるべきだった給与をすべて支払う義務(バックペイ)が生じます。また、元の地位への復職を命じる判決が出ることもあります。さらに解雇無効の裁判は長期化することが多く、その間の弁護士費用・担当者の労力も大きな負担となります。解雇は必ず事前に弁護士に相談してから行ってください。
最終更新日:2026年4月30日