問題社員271 問題社員への書面での注意指導のポイント
動画解説
この記事の要点
|
✓
|
書面での注意指導は強力なツール——ただし口頭指導なしにいきなり使うと失敗する 書面を受け取った問題社員は「これは大事だ」と意識する。しかし口頭での対話なしに書面だけ渡すと、アリバイ作りにしか見えず教育効果が下がる |
|
✓
|
書面には「具体的事実→評価→改善指示」の順で書く——評価的言葉だけの書面は教育効果も証拠価値も低い 「何月何日の何時頃、どこで、誰が、どのように、何をしたか」という5W1Hの事実を記載し、それがなぜ問題なのかを評価した上で、どう直せばいいかを伝える |
|
✓
|
渡し方は手渡しが基本——「受け取っていない」と言われることはそれほど多くない。「内容が違う」という反論の方が圧倒的に多い 渡した事実(日時・場所・やりとり)を記録してメールで報告しておけば十分。郵送が必要な場合はレターパックライトが手軽で追跡可能 |
|
✓
|
書面のPDFをメールで送ることも有効な合わせ技——見ていないと言えなくなる。普段使っているメールアドレスへの送信が効果的 手渡しや郵送と組み合わせてPDFをメール添付することで、受取の否認が困難になる |
目次
1. 書面での注意指導の効果と限界——口頭指導が前提
会社経営者の皆様、こんにちは。弁護士法人四谷麹町法律事務所の代表弁護士、藤田進太郎です。
書面で問題社員に注意指導することには、実は大きな効果があります。口頭での注意指導だけを軽く考えていた問題社員も、書面で注意されると「これは大事だ」と意識を変えることがあります。懲戒処分まで至らなくても、書面による注意指導は口頭だけとは違う重みを持ちます。
ただし、書面での注意指導には大事な前提があります。まず口頭でしっかり注意指導してから、それでも改善しない場合に書面を使うという順序が正しいです。何でもかんでも強い手段を使えばいいわけではありません。
口頭での指導をほとんど行わないまま書面だけを渡す場合、本人に行動を直してもらう気がないのではないかと見えることがあります。また証拠作り・アリバイ作りにしか見えないこともあり、教育効果が著しく下がります。
まず会議室での面談を複数回行い、具体的事実を示して口頭で指導する。それでも改善しない相手に対して、書面での注意指導が活躍する場面が来ます。
2. 書面への記載内容——具体的事実が最重要
書面に何を書くかが最も重要です。よくある失敗は、評価的な言葉だけで書面を締めることです。
❌ 教育効果・証拠価値ともに低い書き方
「あなたはパワハラを行いました」「常日頃から協調性がなく、勤務態度が悪いです」——このような評価的表現のみの書面は、「自分は嫌われているから言われているだけだ」と受け取られやすく、教育効果がほとんどない
✓ 教育効果・証拠価値ともに高い書き方
「何月何日の何時頃、どこで、あなたが、どのような形で、何をしたのか」という具体的事実を記載する。その上で、それがなぜ問題なのかを評価し、今後どのように改めるべきかを伝える形で締める
自分のことをよく観察してくれている人からの具体的な指摘は、「手ごわいな」「この指摘は的確だ」という認識を生みます。それが行動改善につながり、かつ裁判でも強い証拠になります。
3. 5W1Hで書く——「なぜ」は難易度が高い
書面への記載に際して、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)を意識してください。「なぜ(Why)」についても書ければ理想ですが、難易度が高い要素です。
「なぜ(Why)」が難しい理由
「なぜそれをしたのか」という動機・理由は、本人の内心の問題です。推測で書いた場合に実際と違っていたり、本人が「こういうつもりだった」と言っているが本音は違うというケースもあります。まず「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」の5つをしっかり書けていれば合格点です。「なぜ」については、本人の言い分を聴取して明確に認定できる場合に限り、応用として書き加えることを検討してください。
4. 書面の渡し方——手渡しが基本
毎日出社している社員であれば、手渡しが基本です。「受け取っていない」と言われることを心配する方が多いですが、実際の事案を見ると受け取り否認よりも「受け取ったが内容が事実と異なる」という反論の方が圧倒的に多いです。
渡した際に大切なのは、渡した事実の記録です。日時・場所・誰が渡したか・その際にどんなやりとりがあったかをメモして、上司や顧問弁護士にメールで報告しておいてください。これで十分です。
なお、書面をビリビリに破いて撒き散らすなどの行動があった場合は、むしろその写真を撮って証拠に残してください。それ自体が問題行動の証拠になります。
5. 出社していない場合——レターパックライトとPDFメールの活用
出社していない社員や在宅勤務の社員に書面を届ける場合は郵送になります。その際にお勧めするのがレターパックライトです。
レターパックライトのメリット
- 追跡番号で配達状況が確認できる(郵便局のウェブサイトで追跡可能)
- ポストに投函するだけで送れる(窓口での手続き不要)
- 書留郵便より手軽で安価
さらに、書面のPDFを本人の仕事用メールアドレスに送信することも有効な合わせ技です。「見ていない」「届いていない」という主張を防ぐことができます。手渡しや郵送とは別に、PDFメールも送っておくことで受け取りの否認が困難になります。
6. まとめ
- 書面での注意指導は強力——ただし口頭指導との組み合わせが大前提。いきなり書面だけ渡すと逆効果になることがある
- 書面には具体的事実を記載する——5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)を基本として、評価的言葉だけで終わらせない
- 「なぜ(Why)」の記載は内心の問題なので難易度が高い——明確に認定できる場合のみ書き加える
- 渡し方は手渡しが基本——渡した事実をメールで記録・報告しておけば十分
- 郵送にはレターパックライトを活用——PDFをメール添付することとの合わせ技で受け取り否認を防ぐ
書面での注意指導のポイントでお悩みの経営者の皆様は、ぜひ弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 書面を手渡ししようとしたら「受け取らない」と言われました。どうすればよいですか。
A. 受け取りを拒否された場合は、その場で「受け取りを拒否した」旨を記録し、メールで上司や顧問弁護士に報告してください。その後、レターパックライトや書留郵便で郵送する方法も取れます。また、PDFをメールで送信することも合わせて行ってください。受け取りを拒否すること自体、就業規則上の問題行動となる場合があります。
Q2. 注意書を渡した後「内容が事実と違う」と反論されました。どう対応すればよいですか。
A. この反論は最も多いパターンです。注意書の内容は具体的事実に基づいて作成されているはずですので、「どの部分がどのように事実と違うのか」を具体的に説明するよう求めてください。反論の内容も記録しておき、弁護士に相談の上、必要に応じて内容を精査してください。事実をしっかり記載した書面であれば、相手の反論への対処もしやすくなります。
最終更新日:2026年4月30日