問題社員223 極端に能力が不足していて仕事ができない社員を本採用してしまった後の解雇

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この記事の要点

本採用後の能力不足を理由とした解雇はハードルが高い——「使用期間中は問題なかったのに今さら」という反発が生まれやすい

本採用で「この会社で働き続けられる」という期待が生まれる。元々低い能力でずっと雇い続けていた場合、今さら能力不足を理由にするのは法的にも難しい

能力不足以外の懲戒処分・解雇理由(業務命令違反・無断欠勤・長期欠勤)がないか全般的に確認する

能力が低い社員は他の問題行動(遅刻・業務命令拒否・突然の長期欠勤等)を起こすことも多い。こちらの問題を確認することが解決策になる場合がある

向いていない仕事を続けさせることは会社だけでなく本人にとっても辛い——体調悪化→長期欠勤→休職満了退職という流れも選択肢

向いていない仕事でストレスを抱えた結果、体調を崩して長期欠勤・休職になるケースも多い。これを解雇の機会として対応することも実務上ある

1. なぜ本採用後の能力不足解雇はハードルが高いのか

使用期間を設ける目的の一つは、採用のミスマッチを早期に解消することです。使用期間中であれば、適性のない社員に対して本採用拒否という対応が取りやすい(ハードルはやや低い)です。

しかし本採用してしまった後の能力不足を理由とした解雇はハードルが大きく上がります。本採用によって「この会社でずっと働き続けられる」という社員の期待が生まれるからです。

⚠ 元々低い能力で雇い続けてきた場合は特に困難

「2年前も3年前も5年前も、私の能力はこんなものでした。何も変わっていないのにいきなり能力不足と言われてもおかしいでしょ。嫌がらせではないですか」——こういった反論は正当性があります。元々低い能力でずっと雇用し続けてきたなら、今さら能力不足を理由に解雇することは法的にも難しい面があります。

能力不足を理由とした解雇が認められやすいのは、「以前はできていたのに何かきっかけで急激にパフォーマンスが落ちた」ケースや「時代の変化によって以前は許容されていた能力が今は到底不十分になった」ケースなど、変化があった場合です。

2. 能力不足以外の解雇・懲戒処分理由を確認する

「能力が低い」という評価で問題を抱えている社員は、同時に他の問題も起こしていることが多いです。現実に解雇等につながるケースの多くは、能力不足以外の別の理由が組み合わさっています。

▶ 能力不足社員に多い別の問題行動

遅刻・無断欠勤の常態化:だらしなく時間が守れない。注意指導・懲戒処分を重ねていくことで解雇理由になりえる

突然の長期欠勤・連絡不通:突然休み始めて連絡が取れなくなる。これを理由とした解雇有効になることがある

業務命令の拒否:「この仕事はやりたくない」と言ってやるべき業務を拒否する。業務命令書を交付した上で命令違反として懲戒処分・解雇の対象になりうる

大事なのは、「能力不足という漠然とした評価」にこだわるのではなく、「何月何日に何をしたか・何をしなかったか」という具体的な事実を掘り起こすことです。能力不足だと感じている社員でも、よく見ると「やろうとしない(能力ではなく意欲の問題)」「やってはいるがうまくできない(純粋な能力不足)」に分かれます。前者はより積極的な対応が可能です。

3. 向いていない仕事・体調悪化のパターンから解決につながる場合も

極端に能力が低い社員に多いのが、「その仕事に向いていない」というケースです。向いていない仕事を続けることは、会社にとっても辛いですが、本人にとっても非常に辛いです。

向いていない仕事でストレスを抱えて働き続けると、体調を崩すことが多くなります。欠勤が増え、最終的には長期欠勤になったり、休職制度がある会社では休職に入り、休職満了退職になるというパターンがあります。

▶ よくある流れ(実務上)

向いていない仕事でストレス蓄積
→ 体調不良が続く・欠勤が増える
→ 長期欠勤(長期欠勤を理由とした解雇が可能になる場合も)
→ または休職に入り、休職期間満了で退職

このような場合、能力不足を理由とした解雇にこだわるよりも、長期欠勤・休職の問題として対応する方が解決につながることがあります。また仕事が向いていない人が向いている仕事に転職するのは、本人にとっても良いことです。弁護士と相談しながら対応方針を決めてください。

4. まとめ

① 本採用後の能力不足解雇は単純ではない——元々低い能力でずっと雇用していた場合は特に困難

能力が以前から変わらないのに今さら理由にするのは難しい。能力が急激に低下したケースや、時代の変化で基準が変わったケースは論拠になりえます。

② 能力不足以外の問題(業務命令違反・無断欠勤・長期欠勤)がないか確認する

能力低い社員は他の問題も起こしやすい。こちらを具体的な事実として確認・記録することで対応できる場合があります。

③ 体調不良・長期欠勤・休職のパターンとして対応することも選択肢

能力不足を主理由とした解雇にこだわらず、実際に起きている問題(欠勤・休職等)として対応する方が解決につながることもあります。

よくある質問(FAQ)

Q 本採用した社員が全く仕事ができません。解雇できますか?
A

能力不足を理由とした解雇はハードルが高く、単純な能力低下だけでは難しいケースが多いです。まず能力不足以外の問題行動(業務命令違反・無断欠勤・長期欠勤等)がないか確認してください。能力不足が本当に解雇理由になりうるかどうかについては、具体的な状況を弁護士に相談して判断してもらうことをお勧めします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/16