問題社員198 能力が極端に低い社員に対する教育指導の仕方
動画解説
目次
1. 能力が低い社員への教育は「普通のやり方」では通用しない
極端に能力が低い社員を採用してしまった場合、現場で最も負担を負うのは周囲の先輩・同僚です。人手不足で採用したのに仕事が進まない、教えても覚えない、自分が一人前にする前に疲弊してしまう——こうした事態は、現場にとって深刻な問題です。
こうした社員への教育指導で最初に理解しておくべきことがあります。それは、平均以上の社員に物を教えるのと同じやり方では通用しないということです。
また、「指示通りにやらない」「言うことを聞かない」と感じているケースの多くは、悪意ではなく単純に理解できていないことが原因です。普通にやっているつもりで、指示通りに動けなかっただけというケースが非常に多くあります。まず「なぜできないのか」を見極めることが出発点です。
人手不足が深刻な時代、やめさせて解決することが難しくなっています。「ほどほどでも戦力になってもらう」ことを目指して、丁寧な教育指導に取り組むことが現実的な対応策です。
2. 「具体的に」教育指導する——3つのステップ
(1) 具体的な手順・状況・例示で伝える
能力が低い社員への教育で最も重要なのは、とにかく具体的に伝えることです。「報連相をしっかり」「もっと工夫して」「自分で考えて」といった抽象的な言葉は、ほぼ機能しません。
▶ 抽象的な指示 vs 具体的な指示の違い
【通じない指示】「報連相をしっかりやること」
【通じる指示】「〇〇という連絡が入ったら、△△さんに電話で『□□の件で◇◇です』と伝えてください。電話が繋がらなければメモを机に置いてください」
能力が低い方の多くは、抽象的な言葉の理解能力が低いことが多いです。これは頭の良し悪しではなく、その仕事・状況に対する理解のフレームワークがまだ形成されていないためです。具体的な状況・手順・例示を使って伝えることが基本になります。
(2) 実際にやって見せる
言葉だけでは理解できない場合、実際に目の前でやって見せることが有効です。言葉を行動に転換すること自体が一つの能力であり、その能力が低い場合には、見ることで理解できるケースがあります。
「なぜそこまでしなければいけないのか」と感じるかもしれませんが、それがこの段階の教育指導に必要なコストです。やって見せることで理解が進むなら、そこに時間を使う価値があります。
⚠ 「自分の頭で考えろ」はNGな指示
「自分で考えて行動できるなら、そもそも能力不足にはなっていない」——この逆説を理解してください。考えてもわからないから困っているのです。考えて動けるベースが形成されてから、初めてその指示が意味を持ちます。今の段階でこの指示を出すと、ミス・事故・会社への損害リスクが高まります。
(3) やらせてフィードバックする
見せた後は、実際にやらせてみることが大切です。そしてやった結果に対して、具体的なフィードバックを返すことがセットです。
ここで注意すべきなのは、褒めるだけでは不十分だということです。「よく頑張っています」という励ましは大切ですが、改善すべき点があれば、率直に・礼儀正しく・具体的に伝えることが必要です。
改善すべき点を伝えることを避けていると、本人は「問題ない」と思い込んだまま成長できません。そして後から「能力不足だ」と言われても「褒めていたのに急に何だ」という反発を招きます。良いことも改善点も、具体的に伝えるのがマネジメントの基本です。
3. やらせる仕事を変えてみる——適材適所の発想
どれだけ丁寧に教育しても「ほどほどのところまでしか行かない」というケースもあります。そういうときに検討してほしいのが、やらせる仕事を変えることです。
人には向き不向きがあります。ある仕事では全くダメでも、別の仕事なら普通にできる、あるいは実は得意だったということは、現実にあります。「この人は能力が低い」という判断は、その人全体の評価ではなく、特定の仕事との相性の問題である場合が少なくありません。
▶ 配置転換を検討する際のポイント
・今の仕事で苦手な部分は何か(理解力・体を動かす能力・対人関係・集中力など)
・その苦手が影響しにくい別の業務はないか
・本人が得意だと感じている作業・傾向はあるか
・配置転換できる現実的な空きポストがあるか
企業規模が小さく、他に配置できる仕事がないという場合もあります。その場合は「自社ではその人の才能を活かせる場がない」という判断になり、退職を検討することになります。しかし試せる可能性がある場合は、一度試してみることをお勧めします。思いがけず活躍することがあるからです。
4. 体調が悪化している場合——退職を検討することも経営者の仕事
向いていない仕事は、本人にとって大きなストレスになります。毎日時計を見て「早く時間が過ぎないか」と思いながら働いている状態が続くと、適応障害やうつ病など深刻な体調悪化につながることがあります。
こうした場合、教育指導を続けることが本人のためになっているかを問い直す必要があります。会社には安全配慮義務があります。体調悪化が深刻な状況になってきたなら、それ以上続けさせることは会社としての責任を果たしていないことになりかねません。
⚠ 雇い続けることが必ずしも「いいこと」ではない
「やめさせるなんてうちはしない」という方針の経営者もいらっしゃいますが、本人が才能を発揮できる場がなく、体調まで崩しているなら、その人のためになっていません。別の会社・別の仕事で活躍していただく方が、本人にとって幸せなことがあります。退職を勧めることも、経営者として向き合うべき場面があります。
体調問題が出ていない段階では、具体的な教育と適材適所を粘り強く試してください。しかし体調悪化が顕著になってきた場合は、退職勧奨も含めた対応を弁護士と相談しながら進めることをお勧めします。
5. まとめ
能力が極端に低い社員への教育指導の要点を整理します。
① 具体的に・やって見せて・フィードバックする
抽象的な指示は通じません。具体的な手順・状況を示し、実際にやって見せ、やらせた後に具体的なフィードバックを返すことがセットです。改善すべき点も率直に伝えることを恐れないでください。
② 仕事を変えてみる——適材適所の可能性を探る
今の仕事がダメでも、別の仕事なら活躍できる場合があります。配置転換の可能性がある場合は試してみてください。思いがけず問題が解決することがあります。
③ 体調が悪化している場合は退職を検討する
向いていない仕事を続けさせることが本人の体調悪化を招いているなら、退職勧奨も含めて真剣に検討してください。雇い続けることが必ずしも本人のためになるとは限りません。
よくある質問(FAQ)
能力不足社員の教育指導・対応でお困りの方はご相談ください
マネジメント段階からのコンサルティング、退職勧奨の進め方まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日 2026/04/14
