この記事の結論
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退職勧奨は、自発的な退職意思の形成を促す単なる事実行為

退職勧奨とは、使用者が労働者に対して辞職や労働契約の合意解約の承諾を促すことをいいます。裁判所は、退職勧奨は法律に根拠を持つ行政行為ではなく、単なる事実行為であると述べています(下関商業高校事件、最高裁一小昭和55年7月10日判決)。

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個別面談を通じて行われるのが通常

整理解雇の回避や目標退職者数の確保、あるいは特定の労働者の退職促進のため、労働者との個別面談を通じて行われるのが通常です。普通解雇・懲戒解雇事由がある場合の再就職への配慮として行われることもあります。

 整理解雇という重い手段を避けつつ、円滑に人員調整を進める方法として、多くの会社が退職勧奨を活用しています。その法的な性格を正確に理解しておくことが、適切な運用の出発点になります。

 会社側専門の弁護士の立場から、退職勧奨の基本的な性質を解説します。

01退職勧奨とは

 退職勧奨とは、使用者が労働者に対して辞職や労働契約の合意解約の承諾を促すことをいいます。804の記事で解説した合意退職の典型例の一つであり、労働者の自発的な意思による退職を目指す点で、一方的な意思表示である解雇とは根本的に異なります。

02退職勧奨が用いられる場面

 厳格な解雇規制を回避するために、使用者が経営上の理由によるリストラを行うに際して、希望退職募集制度を実施しながらも目標退職者数を確保する目的で、あるいは、希望退職募集制度実施後の事業方針に適合しない労働者等の特定の労働者の退職を促す目的で、労働者との個別面談を通じて行われるのが通常です。また、目標退職者数が少ない場合や必要な人材の流出を回避する目的で、あえて希望退職募集制度を実施せずに、多数の労働者と個別面談をして退職勧奨を行うケースもあります。

03解雇事由がある場合の退職勧奨

 労働者に普通解雇事由あるいは懲戒解雇事由が認められる場合に、労働者の再就職の不便に配慮し、退職勧奨を行うケースもあります。懲戒解雇歴が残ることによる再就職への悪影響を避けるため、会社側の配慮として自主的な退職を促すという形で運用されることがあります。

04退職勧奨の法的性格(下関商業高校事件)

 退職勧奨の法的性格について、裁判所は、「退職勧奨は、任命権者がその人事権に基づき、雇用関係あるものに対し、自発的な退職意思の形成を慫慂するためになす説得等の行為であって、法律に根拠を持つ行政行為ではなく、単なる事実行為である」と述べています(下関商業高校事件、最高裁一小昭和55年7月10日判決)。つまり、退職勧奨自体は、それ自体で法的な効果(労働契約の終了)を生じさせるものではなく、あくまで労働者に自発的な退職の意思決定を促す説得行為にとどまるということです。

05会社側が押さえておくべき視点

 退職勧奨が単なる事実行為であるということは、会社側にとって、労働者を退職に追い込む一方的な権限があるわけではないことを意味します。退職勧奨は、あくまで労働者の自発的な意思決定を促す説得行為であり、労働者がこれに応じるかどうかは、労働者の自由な判断に委ねられています。

 この性質を踏まえると、退職勧奨の頻度や態様が、労働者の自由な意思決定を妨げる程度に達すると、違法な退職強要として不法行為に該当するリスクがあります。退職勧奨を実施する際は、面談の回数・時間・言葉遣いなどが、社会通念上相当な範囲にとどまるよう配慮することが重要です。労働者が明確に退職の意思がない旨を示しているにもかかわらず、執拗に勧奨を続けることは避けるべきです。

06よくある質問(FAQ)

Q. 退職勧奨と解雇は、何が違いますか。

退職勧奨は、使用者が労働者の自発的な退職意思の形成を促す事実行為にすぎず、それ自体で労働契約を終了させる効力はありません。これに対し、解雇は使用者による一方的な労働契約の終了通知です。

Q. 労働者が退職勧奨に応じなくても、退職を強制することはできますか。

できません。退職勧奨は単なる事実行為であり、労働者に応じる法的義務はありません。応じるかどうかは労働者の自由な判断に委ねられます。

Q. 退職勧奨を何度も繰り返すと、問題になりますか。

頻度や態様が労働者の自由な意思決定を妨げる程度に達すると、違法な退職強要として不法行為に該当するリスクがあります。社会通念上相当な範囲にとどめる必要があります。

経営上のポイント 退職勧奨とは、使用者が労働者に対して辞職や合意解約の承諾を促すことをいいます。整理解雇を回避しつつ目標退職者数を確保する目的や、特定の労働者の退職促進、解雇事由がある労働者への再就職配慮など、様々な場面で個別面談を通じて行われます。裁判所は、退職勧奨は法律に根拠を持つ行政行為ではなく単なる事実行為であると述べています(下関商業高校事件、最高裁昭和55年7月10日)。この性質から、退職勧奨は労働者の自発的な意思決定を促す説得行為にとどまり、応じるかどうかは労働者の自由な判断に委ねられます。頻度や態様が社会通念上の相当性を欠くと、違法な退職強要として不法行為になるリスクがあるため、面談の回数・時間・言葉遣い等への配慮が重要です。退職勧奨の実施は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。退職勧奨の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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