普通解雇の理由を後で追加することはできますか。
|
1
|
解雇当時に存在した理由であれば普通解雇では追加できる 普通解雇した当時に存在していた理由であれば、追加することができるとされています。 |
|
2
|
懲戒解雇は制裁罰であるため理由の追加はできない 懲戒解雇は普通解雇とは異なり労働者に対する制裁罰であるため、懲戒処分の有効性はその理由とされた事実との関係においてのみ判断される必要があり、後になって懲戒解雇理由を追加することはできません。 |
目次
859の記事で解説した普通解雇の判断基準を踏まえ、実務上重要な論点として、解雇後の労働審判や訴訟の過程で、解雇当初は主張していなかった理由を追加できるかという問題があります。
会社側専門の弁護士の立場から、普通解雇の理由を後で追加できるかを解説します。
01普通解雇では解雇当時の理由を追加できる
普通解雇した当時に存在していた理由であれば、追加することができるとされています。つまり、解雇通知の際には特定の理由(例:能力不足)のみを伝えていた場合でも、実は解雇当時から他の解雇事由(例:協調性の欠如)も存在していたのであれば、後の訴訟等でこれを追加して主張することが認められるということです。
02懲戒解雇では理由の追加ができない理由
他方、懲戒解雇は、後になって懲戒解雇理由を追加することはできません。懲戒解雇は普通解雇とは異なり労働者に対する制裁罰であるため、懲戒処分の有効性はその理由とされた事実との関係においてのみ判断される必要があるからです。刑事罰と同様、「処分の対象となる行為」を明確に特定してこそ、その処分の適正さを判断できるという考え方が背景にあります。
03懲戒処分における同様の考え方(789の記事参照)
789の記事で解説した山口観光事件(最高裁平成8年9月26日判決)は、懲戒当時認識していなかった非違行為は原則として追加主張できないという判断を示していますが、これは本稿で解説した「懲戒解雇では後から理由を追加できない」という考え方と同じ系統に属するものです。普通解雇と懲戒解雇とで、この点の扱いが根本的に異なることを、正確に理解しておく必要があります。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、普通解雇の場合、後の紛争において解雇当時から存在していた事情を追加して主張できる余地があることを念頭に置きつつも、可能な限り、解雇時に把握している解雇理由をできる限り網羅的に整理し、通知しておくことが望ましいといえます。解雇後に新たな理由を追加主張すると、労働者側から「後付けの理由ではないか」という疑いを持たれ、心証上不利になるリスクがあるためです。
懲戒解雇を検討する場合には、対象となる非違行為を、懲戒処分時までに正確かつ網羅的に把握し、処分理由書等に明記しておく必要があります。処分後に把握した非違行為を追加主張することはできないため、処分前の調査を徹底することが極めて重要です。
05よくある質問(FAQ)
Q. 普通解雇の訴訟で、通知していなかった理由を追加してもよいですか。
解雇当時に存在していた理由であれば、追加することができるとされています。
Q. 懲戒解雇でも、同様に理由を追加できますか。
できません。懲戒解雇は制裁罰であるため、懲戒処分の有効性はその理由とされた事実との関係でのみ判断され、後から理由を追加することはできません。
Q. 懲戒解雇を検討する際、どのような点に注意すべきですか。
対象となる非違行為を処分時までに正確かつ網羅的に把握し、処分理由書等に明記しておくことが重要です。処分後に新たな理由を追加することはできません。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。解雇の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日