この記事の結論

「4回目」は奇跡に近い例外。3回での完全防衛が鉄則です

労働審判において「次がある」という考えは捨てなければなりません。法15条2項の厳格な運用を前提に、初回期日までに全戦力を投入することが経営リスク回避の要です。

  • 「特別の事情」は極めて狭き門:
    4回目の期日が認められるのは、参考人の急病や、解決が目前に迫った調停成立時のみです。制度本来の「迅速性」を維持するため、裁判所は回数延長に対して非常に厳格な姿勢を取ります。
  • 先延ばしは「不利な心証」を招く:
    「追って証拠を出します」といった訴訟的な対応は通用しません。回数が限られているからこそ、初期段階での主張の不備はそのまま「反論なし」とみなされ、会社側に厳しい判断が下る原因となります。
  • 経営判断としての弁護士選任:
    3回という短期決戦を勝ち抜くには、労働法務の専門知識と、スピードに対応できる実務能力が不可欠です。初動から弁護士が介入し、戦略的な期日管理を行うことが、不確実性を排除する唯一の手段です。

💡 経営上のポイント:

労働審判の通知書が届いた瞬間からカウントダウンは始まっています。4回目を期待せず、限られた期日の中で「いかに会社を守り切るか」というプロジェクト管理の視点で、早急に専門家と連携してください。

1. 労働審判は原則3回以内で終了する制度

 労働審判手続は、原則として3回以内の期日で審理を終結しなければならない制度として設計されています。これは、労働紛争を迅速に解決するという制度趣旨を実現するための中核的なルールです。

 具体的には、労働審判法15条2項において、特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日で審理を終了することが明確に定められています。通常の民事訴訟とは異なり、長期間にわたる審理は想定されておらず、短期間で結論を導くことが前提とされています。

 会社経営者の視点から見ると、この制度はメリットとリスクの両面を持ちます。迅速に紛争が解決する可能性がある一方で、準備不足のまま期日を迎えた場合、そのまま不利な結論に直結する可能性があるためです。

 また、労働審判では、初回期日から実質的な審理が行われ、早い段階で裁判所の心証が形成されます。そのため、初動対応の質が全体の結果を左右するという特徴があります。

 このように、「3回以内」という制約は単なる回数の問題ではなく、短期間で集中的に主張立証を行うことを求める制度設計であり、会社経営者としては、このスピード感を前提にした対応体制を整えることが不可欠です。

2. 労働審判法15条2項の趣旨とは

 労働審判法15条2項は、労働審判手続について「特別の事情がある場合を除き、3回以内の期日で審理を終結する」と定めています。この規定の趣旨は、単に回数制限を設けることではなく、迅速かつ実効的な紛争解決を実現することにあります。

 労働紛争は、解雇や賃金未払いなど、会社経営に直接的な影響を及ぼす問題であり、長期化すればするほど企業活動への負担が大きくなります。そのため、制度としてあらかじめ期日の回数を制限することで、審理の長期化を防ぎ、早期解決を促す仕組みが採られています。

 また、この規定は裁判所だけでなく当事者にも影響を及ぼします。すなわち、会社経営者としては、限られた回数の中で必要な主張や証拠をすべて出し切ることが前提となるため、後出しの対応は基本的に許されません。

 さらに重要なのは、この「3回以内」という枠があることで、裁判所も初期段階から積極的に争点整理を行い、審理を集中的に進める点です。その結果、初回期日から実質的な審理が行われる密度の高い手続となっています。

 会社経営者としては、この規定を単なる形式的なルールとして捉えるのではなく、短期決戦型の手続であることを明確に示す制度的メッセージとして理解することが重要です。その理解が、適切な初動対応と戦略構築につながります。

3. 4回目の期日が認められる「特別の事情」とは

 労働審判において4回目の期日が行われるのは、**「特別の事情」がある場合に限られます。**この「特別の事情」は明確に条文で列挙されているわけではありませんが、実務上は極めて限定的に解釈されると考えられています。

 まず前提として、労働審判は3回以内で終結することが制度の基本であるため、単に「審理が不十分である」「もう少し検討したい」といった理由では、4回目の期日は認められません。あくまで、通常の進行では対応できない例外的な事情が存在する場合に限られます。

 例えば、審理の中で予定されていた手続が、やむを得ない事情によって実施できなかった場合が典型です。このようなケースでは、適正な判断を行うために追加の期日が必要とされることがあります。

 また、もう一つの典型例として、調停が成立する見込みが極めて高い場合が挙げられます。すでに合意内容がほぼ固まっており、最終的な調整のみが残っているような場合には、紛争の円満解決を優先する観点から、例外的に期日が追加されることがあります。

 会社経営者として重要なのは、この「特別の事情」が広く認められるものではなく、あくまで例外的な場面に限定されるという点です。したがって、「必要であれば4回目がある」という前提で対応するのではなく、基本は3回以内で決着がつくという前提で準備を進めることが不可欠です。

4. 参考人の急病などによる例外ケース

 「特別の事情」として典型的に想定されるのが、予定されていた審理がやむを得ない事情で実施できなかった場合です。その代表例が、参考人や関係者の急病などによる出頭不能です。

 労働審判では、必要に応じて当事者本人や参考人の審尋が行われますが、これらは事実認定に直結する重要な手続です。そのため、例えば重要な参考人が期日に出頭できなくなった場合、そのまま審理を終結させてしまうと、十分な判断ができないおそれがあります。

 このような場合には、やむを得ず別途期日を設ける必要が生じ、結果として4回目の期日が設定されることがあります。ただし、ここで重要なのは、単なる都合ではなく、あくまで予測困難かつ回避不能な事情であることが前提となる点です。

 会社経営者としては、こうした例外があることを理解しつつも、自社側の準備不足やスケジュール調整の不備が理由で期日が追加されることは基本的に期待できないと認識する必要があります。むしろ、そのような事情は不利に評価される可能性もあります。

 したがって、参考人の確保や社内関係者の出頭準備については、初期段階から十分に調整を行い、予定された期日で確実に対応できる体制を整えておくことが重要です。労働審判の迅速性を前提とすれば、このような事前準備の精度が結果に直結します。

5. 調停成立が見込まれる場合の取扱い

 4回目の期日が認められるもう一つの典型的な場面が、調停成立が見込まれる場合です。労働審判は、判定による解決だけでなく、調停による合意解決を重視する制度であるため、円満な解決が目前にある場合には柔軟な対応が取られることがあります。

 例えば、当事者間で主要な条件についてはすでに合意が形成されており、残るのは細部の調整のみという状況では、無理に3回以内で終了させるよりも、もう1回の期日を設けて確実に調停を成立させる方が合理的と判断されることがあります。

 この場合のポイントは、単に「話し合いが続いている」という程度では足りず、具体的かつ現実的に調停成立が見込まれる段階に至っていることが必要であるという点です。すなわち、裁判所としても、追加の期日を設けることが紛争解決に直結すると判断できる状況であることが求められます。

 会社経営者としては、このような場面では、解決に向けた意思決定のスピードと柔軟性が重要になります。合意の機会を逃せば、調停が不成立となり、その後の審判や訴訟へ移行するリスクもあります。

 もっとも、この例外もあくまで限定的なものであり、「もう少し交渉したい」という理由だけで4回目の期日が認められるわけではありません。したがって、会社経営者としては、3回以内での解決を基本としつつ、成立直前の局面でのみ例外的に活用される制度であると理解しておくことが重要です。

6. 特別の事情が厳格に解釈される理由

 労働審判において「特別の事情」が厳格に解釈されるのは、制度の根幹である迅速な紛争解決を確保するためです。もしこの要件が緩やかに運用されれば、期日が安易に延長され、制度本来の目的が損なわれてしまいます。

 労働審判は、通常の訴訟と異なり、短期間での解決を前提とした特別な手続です。そのため、あらかじめ「原則3回以内」という明確な枠を設けることで、審理の集中化と効率化を制度的に担保しています。この枠組みを維持するためには、例外である「特別の事情」は厳格に限定される必要があります。

 また、当事者間の公平性の観点からも、この点は重要です。一方当事者の都合で期日が延びることを容易に認めてしまうと、相手方に不必要な負担を課すことになり、手続の公平性が損なわれるおそれがあります。

 会社経営者としては、この厳格な運用を前提に、「追加の期日があるかもしれない」という期待に依存しない対応が求められます。むしろ、すべての主張・証拠を3回以内で出し切ることを前提に準備を進めるべきです。

 このように、「特別の事情」が厳しく限定されているのは、単なる形式的な運用ではなく、制度の実効性と公平性を維持するための不可欠な要素であることを理解することが重要です。

7. 期日が延びることによる会社経営者への影響

 労働審判において期日が4回目に延びることは例外的とはいえ、会社経営者にとっては実務上無視できない影響をもたらします。迅速解決を前提とした手続であるからこそ、期日の追加は経営面にも波及します。

 まず直接的な影響として、時間的・人的コストの増加が挙げられます。期日が増えることで、担当者の拘束時間や資料準備の負担が増加し、通常業務への影響も避けられません。特に中小企業においては、この負担が経営資源に与える影響は小さくありません。

 また、紛争が長引くこと自体が、会社にとって不確実性の継続を意味します。解雇の有効性や金銭的支払いの見通しが確定しない状態が続くことで、経営判断が遅れたり、追加の引当や対応コストが発生したりする可能性があります。

 さらに、社内への影響も見逃せません。関係者のヒアリングや証拠収集が長期化することで、従業員の心理的負担や組織への影響が生じる場合もあります。

 もっとも、4回目の期日が設定される場合には、調停成立が目前であるなど、紛争解決に近づいている局面であることも少なくありません。そのため、単に負担として捉えるのではなく、最終的な解決に向けた重要なプロセスとして位置付ける視点も必要です。

 会社経営者としては、期日延長の可能性も踏まえつつ、コストと解決可能性のバランスを見極めながら対応することが重要となります。

8. 4回目期日を見据えた実務対応のポイント

 労働審判において4回目の期日が認められる場面は限定的ですが、会社経営者としては、例外的に期日が追加される可能性も視野に入れた実務対応が求められます。

 まず重要なのは、基本はあくまで3回以内での終結を前提に準備を行うことです。4回目の期日を前提に主張や証拠を温存するような対応は、結果として不利な評価を招くリスクがあります。したがって、初回から必要な主張立証を出し切る姿勢が不可欠です。

 一方で、実務上は、調停成立が目前である場合などに追加期日が設定されることもあるため、最終局面での柔軟な対応力も重要になります。例えば、解決条件の最終調整や社内意思決定を迅速に行える体制を整えておくことで、機会を逃さずに解決へとつなげることが可能になります。

 また、参考人の出頭や証拠提出のスケジュールについても、予期せぬ事情に備えた余裕を持った調整が求められます。やむを得ない事情が発生した場合でも、適切に対応できる体制を整えておくことが重要です。

 会社経営者としては、労働審判を単なる手続として捉えるのではなく、限られた時間の中で最適な結論を導くためのプロジェクトとして管理する視点が必要です。その中で、期日の追加という例外も含めた全体像を把握し、戦略的に対応していくことが求められます。

9. 初動対応の重要性と期日管理の考え方

 労働審判においては、初動対応と期日管理が結果を大きく左右する重要な要素です。特に「原則3回以内」という制約がある以上、最初の対応の質がそのまま最終的な結論に直結します。

 まず初動対応として重要なのは、申立てを受けた段階で、事案の全体像と主要な争点を正確に把握することです。この段階で方向性を誤ると、その後の主張や証拠提出が的外れとなり、限られた期日の中で十分な主張立証ができなくなります。

 また、期日管理の観点では、単にスケジュールを把握するだけでなく、各期日までに何を準備し、どこまで主張を固めるのかを逆算して計画することが不可欠です。労働審判では、後から補充する余地が限られているため、各期日が持つ意味は非常に重くなります。

 さらに、社内体制の整備も重要です。関係資料の収集、関係者へのヒアリング、意思決定プロセスの整理などを迅速に行える体制を整えなければ、期日ごとの対応が後手に回るリスクがあります。

 会社経営者としては、労働審判を単なる法的手続ではなく、期限が厳格に設定された経営課題として捉えることが重要です。そのうえで、初動から期日ごとの戦略を明確にし、計画的に対応を進めることが、最終的な結果の質を高めることにつながります。

10. 弁護士活用による迅速解決とリスク回避

 労働審判においては、限られた期日の中で結論に至るため、専門的な対応の有無がそのまま結果に直結します。会社経営者にとっては、単なる紛争対応ではなく、経営リスクを最小化するための判断が求められます。

 特に、4回目の期日が問題となるような局面では、「どの段階で解決を図るべきか」「追加の期日が合理的か」といった判断が重要になります。これらは法的知識だけでなく、実務運用や裁判所の傾向を踏まえた総合的な判断が必要です。

 弁護士が関与することで、争点整理や証拠の選定、主張の構成が適切に行われ、不要な争点を排除しつつ、自社に有利な論点に集中することが可能となります。また、期日ごとの対応や裁判所とのやり取りにおいても、適切な対応を取ることで不利な評価を回避することができます。

 さらに、調停成立が見込まれる場面では、適切なタイミングでの意思決定や条件調整が重要となります。弁護士の関与により、解決の機会を逃さず、合理的な条件での合意形成を目指すことが可能となります。

 会社経営者としては、弁護士を問題発生後の対応者としてではなく、初動から関与させることで戦略的に活用する存在として位置付けることが重要です。

 当事務所では、会社経営者の立場に立ち、迅速かつ実効的な解決に向けたサポートを行っています。労働審判への対応に不安がある場合には、早期に弁護士へご相談いただくことをお勧めします。

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

 弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

労働審判の期日回数に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 労働審判で4回目の期日が指定されるのはどのようなケースですか?

A1. 労働審判法第15条第2項の「特別の事情」がある場合に限られます。具体的には、重要な参考人が急病で出頭不能となった場合や、4回目の期日を設ければ確実に調停(和解)が成立すると裁判所が判断した場合など、極めて限定的です。

Q2. 準備が間に合わないという理由で4回目をお願いすることはできますか?

A2. 原則として認められません。労働審判は迅速な解決を目的とした制度であり、当事者の準備不足は「特別の事情」には該当しません。むしろ、初回期日に十分な反論ができないことは、会社側にとって極めて不利な心証を与えるリスクとなります。

Q3. 3回で終わらず4回目も実施できない場合、どうなりますか?

A3. 審理を尽くしても解決に至らない場合、労働審判委員会が審判(判断)を下すか、あるいは「審判不適当」として通常訴訟へ移行させる(24条終了)ことになります。いずれにせよ、4回目以降へダラダラと引き延ばされることはありません。

 

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最終更新日 2026/03/19