問題社員89 顧客対応に問題があることを理解できず、注意指導しても自己を正当化するだけで改善しない。
目次
動画解説
1. 顧客対応に問題があることを理解しない社員に悩む会社経営者へ
顧客からのクレームが続いているにもかかわらず、本人は「自分はきちんと対応している」「何が問題なのか分からない」と言い張り、注意指導をしてもまったく改善しない。このような社員がいると、会社経営者としては非常に対応に困るものです。
顧客対応は、売上や会社の評判に直結する重要な業務です。そのため、問題があるにもかかわらず本人に自覚がなく、自己正当化を繰り返す状態が続くと、放置するわけにもいきません。一方で、何度注意しても話がかみ合わず、「こちらの言っていることがまったく伝わらない」と感じている会社経営者も多いのではないでしょうか。
特に厄介なのは、本人が手を抜いているわけでも、ふざけているわけでもないケースです。本人なりには一生懸命やっており、「自分は正しい顧客対応をしている」と本気で思い込んでいるため、指導を受け入れる姿勢が見られません。このような場合、単に注意の回数を増やしても、状況はほとんど変わりません。
会社経営者としては、「どうすれば理解させられるのか」「どこまで指導を続けるべきなのか」「限界はどこなのか」と、判断に迷う場面が続きます。感情的に叱責すれば解決する問題でもなく、かといって曖昧な対応を続ければ、会社の信用を損ねるおそれもあります。
本記事では、顧客対応に問題があることを理解できず、注意指導をしても自己正当化を続ける社員に対して、会社経営者がどのような順序で考え、どこまで対応すべきなのかについて、実務的な視点から整理していきます。
2. 本人は本気で「自分は良い顧客対応をしている」と思い込んでいる
顧客対応に問題がある社員への対応で、会社経営者がまず理解しておくべきなのは、本人が決してふざけているわけでも、手を抜いているわけでもない場合が多い、という点です。むしろ本人は、「自分は丁寧に対応している」「顧客のためを思って行動している」と、本気で考えていることが少なくありません。
このような社員は、クレームが発生しても、「相手の受け取り方の問題だ」「理不尽な顧客だった」と受け止め、自分の対応に問題があったとは考えません。注意指導をしても、「なぜ自分が注意されるのか分からない」という反応になりやすく、話がかみ合わない状態が続きます。
会社経営者から見ると、「こんな対応が良いはずがない」「明らかにおかしい」と感じる場面であっても、本人の認識は全く異なります。本人の中では、自分なりの正解がすでに出来上がっており、その枠組みの中で物事を判断しているためです。
この状態で、「もっと丁寧にやれ」「ちゃんと考えろ」といった抽象的な注意を重ねても、改善にはつながりません。本人としては、「自分はすでに丁寧にやっている」「ちゃんと考えている」という認識があるため、指導の意図を理解できないからです。
顧客対応に問題があるにもかかわらず改善しない社員については、「分かっていない」のではなく、「違う基準で正しいと思っている」と捉える必要があります。この前提を理解しないまま対応を続けると、指導は空回りし、会社経営者の負担だけが増えていくことになります。
3. 自己正当化が続く社員への対応が難しくなる理由
顧客対応に問題があることを指摘しても、「自分は間違っていない」「相手の捉え方の問題だ」と自己正当化を続ける社員に対して、対応が難しくなる最大の理由は、本人が修正すべき点を自分事として捉えられていない点にあります。
通常、注意指導が機能する前提には、「自分にも改善すべき点があるかもしれない」という最低限の受け止めがあります。しかし、自己正当化が強い社員の場合、その前提が成立していません。本人の中ではすでに結論が出ており、「自分は正しい」「悪いのは顧客側だ」という認識で固定されています。
この状態で指導を続けると、会社経営者や上司の言葉は、「納得できない注意」「理不尽な指摘」として受け取られやすくなります。その結果、話し合いは平行線をたどり、回数を重ねるほど本人の反発や防御的な態度が強まっていきます。
さらに厄介なのは、本人が感情的に荒れているわけではなく、理屈として自己正当化している点です。冷静に説明しているつもりで、「なぜ自分の対応が正しいのか」を延々と語るため、会社経営者としても「議論しても無駄だ」と感じやすくなります。
このような社員に対して、「分からせよう」「考えを変えさせよう」と説得を続けると、対応する側のエネルギーが大きく消耗します。自己正当化が続いている段階では、説得や抽象的な指導では限界があることを、会社経営者として冷静に認識する必要があります。
4. 抽象的な注意指導が通用しない理由
顧客対応に問題がある社員に対して、「もっと丁寧に対応してください」「相手の気持ちを考えてください」といった抽象的な注意をしても、ほとんど効果がないケースがあります。特に、自己正当化が強い社員に対しては、このような指導はほぼ通用しません。
なぜなら、本人はすでに「自分は丁寧に対応している」「顧客の気持ちを考えている」という認識を持っているからです。その状態で抽象的な言葉を投げかけても、「自分はできている」という結論に戻るだけで、具体的に何を変えればよいのかが伝わりません。
会社経営者としては、「こんなことは言わなくても分かるはずだ」「常識の範囲だ」と感じる内容であっても、本人の中では基準がまったく異なっています。抽象的な言葉は、それぞれが自分に都合のよい解釈をしてしまうため、行動の修正につながらないのです。
また、抽象的な注意は、本人に反論の余地を与えやすいという問題もあります。「私は十分丁寧だと思っています」「これ以上どうすればいいのですか」といった形で、話が議論にすり替わり、指導の目的がぼやけてしまいます。
自己正当化が続く社員への指導では、「丁寧に」「ちゃんと」「常識的に」といった言葉は極力使わず、具体的な行動レベルまで落とし込むことが不可欠です。抽象論で理解してもらおうとする姿勢そのものが、対応を長期化させる原因になっている場合もあります。
5. 客観的事実を用いた具体的な注意指導の重要性
自己正当化が強い社員に対して顧客対応の改善を求める場合、最も重要なのは、評価や感想ではなく、客観的な事実を基に話をすることです。「感じが悪い」「対応が雑だ」といった主観的な表現では、本人は納得せず、反論に終始してしまいます。
例えば、「〇月〇日の対応で、顧客から『説明が一方的だった』『質問する時間を与えてもらえなかった』というクレームが入っている」「このやり取りで、顧客は途中で話すのを諦めている」といったように、日時・行動・結果を具体的に示すことが重要です。事実を積み重ねて示すことで、本人の認識とのズレを可視化できます。
このとき注意すべきなのは、「どう思うか」「なぜそうしたのか」を最初から問い詰めないことです。自己正当化が強い社員ほど、理由を聞かれると、防御的になり、言い訳や理屈の説明に終始してしまいます。まずは、「何が起きたのか」「会社として問題視しているのはどの行動か」を淡々と伝えることが重要です。
また、可能であれば、録音データ、メールの文面、顧客アンケートなど、第三者が見ても分かる資料を用いると効果的です。「あなたが悪い」という構図ではなく、「事実としてこうなっている」という形にすることで、感情的な対立を避けることができます。
顧客対応に問題があることを理解できない社員に対しては、説得ではなく事実提示が基本です。客観的事実に基づいた具体的な注意指導を行うことで、ようやく改善のスタートラインに立つことができます。
6. 「良い顧客対応」を本人に説明させるという方法
顧客対応に問題があることを理解できない社員に対しては、こちらから一方的に「こうするべきだ」と説明し続けるだけでは限界があります。そのような場合に有効なのが、「良い顧客対応とは何か」を、あえて本人に説明させるという方法です。
例えば、「あなたが考える良い顧客対応とは、具体的にどのような対応ですか」「今回の対応のどの点が、顧客にとって良かったと考えていますか」と問いかけてみてください。このときの目的は、本人を言い負かすことではなく、本人の中にある基準を言葉にさせることにあります。
自己正当化が強い社員ほど、自分なりの理屈や価値観に基づいて行動しています。その中身を表に出さない限り、会社経営者側とのズレは見えてきません。本人に説明させることで、「会社が求めている顧客対応」と「本人が正しいと思っている顧客対応」との違いが、はっきりします。
もし、本人の説明内容が会社の基準と大きくズレているのであれば、「会社としては、その考え方は取らない」「この点が問題だ」と、具体的に指摘することができます。逆に、説明が曖昧であれば、「では、そのやり方でクレームが出た理由をどう考えるか」と、事実と結び付けて話を進めることも可能です。
この方法の重要な点は、「分かっていないから教える」のではなく、「どう考えているのかを確認する」という姿勢で臨むことです。本人の認識を一度外に出させることで、ようやく指導の土台が整います。自己正当化が強い社員への対応では、この一手間が、その後の判断を大きく左右します。
7. 教育指導を尽くしても改善しない場合の限界
客観的事実を示し、具体的に注意指導を行い、「良い顧客対応とは何か」を本人に説明させる。ここまで丁寧に教育指導を行っても、なお顧客対応が改善しない社員は、残念ながら存在します。これは、指導のやり方が悪いというよりも、能力や適性の問題であることが多いです。
会社経営者としては、「ここまでやったのだから、そろそろ変わってほしい」「もう少し時間をかければ理解するのではないか」と期待してしまいがちです。しかし、何度事実を示しても認識が変わらず、自己正当化を繰り返す状態が続いているのであれば、それ以上の改善は見込みにくいと考えるべき段階に来ています。
この段階で重要なのは、「もっと分からせよう」「考えを変えさせよう」と粘り続けないことです。教育指導を続けるほど、本人は防御的になり、関係が悪化するケースも少なくありません。また、対応にかかる時間と労力が、会社経営者や現場の負担になっていきます。
顧客対応は、会社の信用に直結する業務です。改善が見られない状態を長期間放置すれば、顧客満足度の低下やクレームの増加といった形で、会社全体に悪影響が及びます。「もう少し様子を見る」という判断が、結果的に会社にとって大きなリスクになることもあります。
教育指導には限界があります。どこまでやったのかを冷静に振り返り、「これ以上続けても同じ結果になる」と判断したのであれば、次の選択肢を検討する段階に入ったと考えるべきです。それは、逃げではなく、会社経営者としての合理的な判断です。
8. 適性が合わない仕事を続けさせるリスク
顧客対応に問題があり、十分な教育指導を行っても改善が見られない場合、その仕事自体が本人に合っていない可能性を考える必要があります。顧客対応は、単なる手順の問題ではなく、対人感覚や価値観、判断の積み重ねが求められる業務です。適性が合わない場合、努力だけで乗り越えるのは難しいのが現実です。
このような状態で同じ仕事を続けさせることは、会社にとってもリスクになります。クレームが繰り返されれば、顧客満足度が下がり、会社の信用が損なわれかねません。「一人の社員の問題」と軽く考えていると、知らないうちに会社全体の評価に影響が及ぶこともあります。
また、本人にとっても負担は大きくなります。どれだけ注意されても改善できない状況が続けば、「何をやってもダメだ」「自分は否定されている」と感じやすくなり、精神的に追い詰められていくことがあります。結果として、モチベーションの低下や体調不良につながるケースも少なくありません。
会社経営者としては、「もう少し頑張らせれば何とかなるのではないか」と考えてしまいがちですが、適性が合わない仕事を続けさせることが、誰にとっても不幸な結果を招く場合があることを冷静に認識する必要があります。
顧客対応に限らず、仕事には向き不向きがあります。改善が見込めないにもかかわらず同じ業務を続けさせることは、指導ではなく放置に近い状態になってしまいます。この段階では、次の判断に進むことが、会社経営者に求められる責任ある対応です。
9. 配置転換や退職を検討すべき場面
顧客対応に問題があり、教育指導を尽くしても改善が見られず、さらにその仕事が本人の適性に合っていないと判断される場合、会社経営者としては、配置転換や退職を含めた判断を検討すべき段階に入ります。これは決して冷たい対応ではなく、現実的な選択肢の一つです。
まず検討すべきなのは、顧客対応を伴わない業務への配置転換です。顧客対応では力を発揮できなくても、他の業務であれば問題なくこなせる社員もいます。可能であれば、一度業務内容を変更し、適性を見極める余地があるかを検討することには意味があります。
もっとも、会社の規模や業務内容によっては、配置転換が現実的でない場合もあります。その場合、「何とか今の仕事を続けさせる」という選択肢に固執するのではなく、退職を含めた話し合いを視野に入れる必要があります。向いていない仕事を続けさせることが、本人のためにも、会社のためにもならないケースがあるからです。
会社経営者として注意すべきなのは、「解雇ありき」で進めるのではなく、あくまで話し合いを重ねる姿勢を持つことです。顧客対応の問題点、これまで行ってきた指導内容、改善が見られなかった事実を整理したうえで、今後の選択肢として配置転換や退職の可能性を伝えることが重要です。
この段階の判断は、会社経営者にとって精神的な負担も大きいものです。しかし、問題を先送りにすればするほど、会社の信用や現場の負担は増していきます。状況を正面から受け止め、現実的な選択肢を検討することが、会社経営者に求められる責任ある対応だといえるでしょう。
10. 会社経営者が覚悟を持って判断すべきポイント
顧客対応に問題があることを理解できず、注意指導をしても自己正当化を続ける社員への対応は、会社経営者にとって非常に神経を使う判断です。感情的に厳しく対応すればトラブルになりかねず、かといって曖昧な対応を続ければ、会社の信用や現場の負担が積み重なっていきます。
重要なのは、「どこまでやったのか」を自分自身で整理することです。客観的事実を示し、具体的な注意指導を行い、本人の考えも確認した。それでも改善が見られなかったのであれば、それは会社経営者の努力不足ではありません。適性や能力の問題として、次の判断に進む段階に来ていると考えるべきです。
顧客対応は、会社の顔ともいえる重要な業務です。一人の社員の問題を放置することで、顧客満足度が下がり、会社全体の評価に悪影響が及ぶことは、決して珍しくありません。だからこそ、「本人が納得しないから」「かわいそうだから」という理由だけで判断を先送りにすることは、経営判断として適切とはいえません。
配置転換や退職を検討するという判断は、誰にとっても簡単なものではありません。しかし、向いていない仕事を続けさせることが、本人にとっても会社にとっても不幸な結果を招く場合があることを、会社経営者は理解しておく必要があります。
顧客対応に問題がある社員への対応は、現場任せにできる問題ではなく、会社経営者自身が覚悟を持って決断すべきテーマです。これまでの経緯と事実を踏まえ、自社にとって何が最善なのかを考え抜き、責任を持って判断することこそが、会社経営者に求められる役割だといえるでしょう。
最終更新日2026/2/7

