問題社員8 社内研修、勉強会、合宿研修への参加を拒否する。

 

1 義務か自由参加か

 まずは、社内研修、勉強会、合宿研修への参加が「義務」なのか「自由参加」なのかをはっきりさせる必要があります。参加が義務ということであれば、研修等に要する時間は社会通念上必要な限度で労基法上の労働時間に該当することになります。研修等の時間が時間外であれば時間外割増賃金の支払が必要となりますし、時間内であっても賃金を支払うことになるのが通常です。
 他方、自由参加ということであれば、当然、参加を義務付けることはできず、参加するかどうかは本人の意思に委ねられることになります。時間外割増賃金等を支払ってでも参加させる業務上の必要があるようなものなのかどうかを、まずは判断する必要があります。

2 使用者が社員に対し受講を命じることができる研修等の内容

 使用者が社員に対し受講を命じることができる研修等の内容は、現在の業務遂行に必要な知識、技能の習得に必要な研修等に限られず、使用者が社員に命じ得ることができる教育訓練の時期及び内容、方法は、その性質上原則として使用者(ないし実際にこれを実施することを委任された社員)の裁量的判断に委ねられています。ただし、使用者の裁量は無制約なものではなく、その命じ得る研修等の時期、内容、方法において労働契約の内容及び研修等の目的等に照らして不合理なものであってはなりませんし、また、その実施に当たっても社員の人格権を不当に侵害する態様のものであってはなりません。合理的教育的意義が認められない教育訓練、自己の信仰する宗教と異なる宗教行事への参加等を義務付けることはできません。
 一般教養の研修への参加を義務付けることができるかは微妙なところですが、一般に本人の意思に反してでも受講させる必要があるような性質のものではないのですから、本人の同意を得た上で、受講させるようにすべきです。どうしても一般教養の研修への参加を義務付ける必要がある場合は、その必要性について合理的な説明ができるようにしておく必要があります。

3 研修等と年次有給休暇の取得

 参加が義務付けられている社内研修、勉強会、合宿研修の期間中の年次有給休暇取得の請求(労基法39条5項本文)がなされた場合、研修期間、当該研修を受けさせる必要性の程度など諸般の事情を考慮した上で、時季変更権行使(労基法39条5項ただし書き)の可否が決せられることになります。
 社内研修等の期間が比較的短期間で、当該社内研修等により知識、技能等を習得させる必要性が高く、研修期間中の年休取得を認めたのでは研修の目的を達成することができない場合は、研修を欠席しても予定された知識、技能の習得に不足を生じさせないものであるような場合でない限り、年休取得が事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使することができます(NTT(年休)事件最高裁第二小法廷平成12年3月31日判決参照)。
 一般教養の研修については、その性質上、時季変更権を行使して研修期間中の年休取得を拒絶することは難しいケースが多いものと思われます。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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