問題社員68 始業時刻よりも早く出社した時間の賃金を請求する。
労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の明示的または黙示的な指揮命令下に置かれている時間をいい、客観的に定まるものです。
当該時間が労基法上の労働時間と評価されるかのポイントは、始業時刻前に出社して業務を行う必要性があったのかどうか、使用者が始業時刻前に出社するよう明示または黙示に指揮命令していたのかどうかにあります。
この1時間が労働時間であると認定された場合には、たとえ所定労働時間が8時間の会社で、当該労働者が所定終業時刻に退社していたとしても、早出出勤した1時間分、残業代が発生してしまいます。
例えば社員の月給が25万円で一月平均所定労働時間が176時間の場合であり2年間分の請求をしてきた場合、通常の賃金の時間単価は1420円(小数点以下切捨)、時間外労働の単価は1775円になります。労働日が週5日、一か月22日勤務の場合、残業代は1775円×1時間×22日×24ヶ月=93万7200円になります。
仮に同様の働き方をしていた社員が複数名いた場合、会社が支払うべき残業代はその人数分となりえますので、単に当該社員との問題に留まらなくなります。
裁判例には、一般論として労働者が事業場にいる時間は、特段の事情がない限り、労働に従事していたと推認すべきであると判示したものがありますので、 業務の必要性がないのであれば、始業時刻よりも早く事業場に立ち入らせない等、日々各労働者の労働時間を管理する必要があります。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
(勤務弁護士作成)