問題社員67 役職を外したのに役職手当の不支給に納得しない。

1 人事権の行使としての降職
 会社は、業務上の必要性や労働者の資質などに応じて、組織の中のどこに社員を配置し役割を決めるかの人事権を有していますので、人事権に基づいて当該社員を役職につけたり、外したり(降職させたり)することができます。
 これに対し、懲戒処分として降職させる場合には、就業規則を社員に周知しているか、懲戒処分として降職の規定があるかどうかを確認し、懲戒事由に該当するかどうかを検討していきます。

2 人事権の行使としての降職は権利濫用でない限り有効
 会社に人事権があるからといって、自由に降職できるわけではなく、裁量権を逸脱するような特段の事情がある場合には、権利濫用として無効となります。
 権利濫用に当たるかどうかは、①使用者側における業務上、組織上の降職の必要性の有無・程度、②能力や適正の欠如など、労働者側における有責性の有無・程度、③労働者の受ける不利益の性質およびその程度、④当該企業体における昇進・降格の運用状況を総合的に考慮して判断します。

3 人事権の行使としての降職に伴う役職手当の不支給
 会社が役職手当を支給していた社員を降職させ、それが有効な場合、当該社員は降職により役職手当の受給資格を失いますので、使用者は、役職手当を支払う必要がなくなります。この場合、社員の同意は不要です。

4 就業規則に降職の規定を定めること
 社員の同意は不要とはいえ、降職させる際に社員に納得してもらうよう十分な説明をすることが重要です。就業規則に降職の規定を定めておけば、社員を降職させる際に就業規則に明確な規定があることを示して説明できますので、就業規則に降職の規定や降職した場合の役職手当の規定を定めておくことが望ましいです。
 就業規則例は以下のものが考えられます。

第○条(役職の就任・変更・解任)
 会社は、業務上の必要性に応じて、社員に対し役職に就任させ、役職を変更し、役職から解任することがある。社員は、正当な理由がない限り、これを拒否することはできない。
第○条(役職手当)
1 会社は、次の職位のある正社員に対して、役職手当を支給する。
 ① 部長 10万円
 ② 課長 5万円
 ③ 係長 3万円
2 賃金計算期間の中途において役職手当が支給される役職に就任し又は退任した者の役職手当の金額は、当該賃金計算期間の所定労働日数を基準とした日割計算とし、賃金計算期間中の実労働日数相当額を支給する。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
(勤務弁護士作成)


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