問題社員49 経歴を詐称した。
1 経歴詐称が判明した場合の対応
経歴を詐称していたことが分かる証拠を確保した上で、本人から事情を聞くことが必要です。事情聴取の後、本人が自主的に退職する意思があるかどうかを確認し、退職意思がある場合には退職届を提出してもらい、退職の手続をとることになります。
本人に退職する意思がない場合には、普通解雇(本採用拒否)、懲戒解雇(諭旨解雇)を検討します。
2 普通解雇(本採用拒否)
本採用拒否できるか否かは、採用当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知った場合に、そのような事実に照らしその者を雇い続けていくのが適当でないと判断することが、解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められることが必要です。
採用する段階で、当該詐称経歴をどれ程重視していたかがポイントになります。
3 懲戒解雇(諭旨解雇)
有効に懲戒処分をする前提として、就業規則に懲戒事由を定めこれを周知させておくことが必要です。
履歴書や採用面接の際に、学歴、職歴、犯罪歴等の経歴を偽り、または真実の経歴を秘匿した場合は、懲戒事由となり得ますので、労働契約を終了させたい場合には、懲戒解雇を検討します。
懲戒処分が有効といえるためには、詐称された経歴が「重要なもの」といえなければならず、重要なものといえるか否かは、詐称の内容や当該労働者の職種などに即して具体的に判断していくことになります。
会社が「その事実を採用選考時に知っていれば当該社員を採用しなかった」といえるかどうかがポイントになります。
4 経歴詐称の防止策
求職者に各種証明書を提出してもらうことが重要です。
例えば、最終学歴は卒業証明書や成績証明書を提出してもらうこと、語学のスキルは検定の合格証等、職歴は前職の退職証明(労基法22条1項)を提出してもらうことが考えられます。
退職証明は、「労働者の請求しない事項を記入してはならない。」(同条3項)と定められていますが、採用選考時に退職事由が記載されている退職証明書を提出するよう伝えれば退職事由を確認できます。ただし、退職証明を請求できるのは労働者ですので、採用を考えている会社が労働者の意に反して取得させることはできません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
(勤務弁護士作成)