問題社員208 問題社員の懲戒処分
動画解説
目次
1. 「雰囲気が悪くなるから懲戒処分できない」という誤解を解く
懲戒処分をしていない会社の経営者に理由を聞くと「小さい会社でそんなことをしたら雰囲気が悪くなる」という答えが返ってくることが多いです。
しかし考えてみてください。やめさせなければならないほどの問題社員がいる職場——その職場の雰囲気はすでに悪くなっていませんか。
懲戒処分をしないから雰囲気が守られているのではありません。問題行動が続くから雰囲気が悪くなっているのです。適切な懲戒処分を行うことで、周りの社員に「会社はちゃんと対応してくれた」という安心感が生まれ、むしろ雰囲気が改善するケースもあります。
▶ 早い段階での懲戒処分が改善につながる
「今更懲戒処分をしても治らない」という声もあります。しかし問題が深刻化する前の早い段階で適切な懲戒処分を行うと、立ち直る社員もいます。懲戒処分をきっかけに態度が改善し、信頼できる社員・幹部になったケースも実際にあります。一方で我慢し続けてから「これでもか」と追い詰めた後で相談に来ても、選択肢が限られてしまいます。
2. 懲戒処分で最も大事なのは事実認定——弁護士のサポートを活用する
懲戒処分を行う上で最も大事で最も難しいのが「事実認定」です。「何月何日の何時頃・どこで・誰が・何を・どのようにしたのか」を確定させる作業です。
事実さえ確定できれば、「この事実は就業規則の何条何号に該当するか」「この事実からすればどの程度の処分が相当か」という判断は比較的やりやすい作業です。最も難しいのは、目の前の状況から何が事実として確定できるかを見極める事実認定です。
▶ 弁護士は法律の説明家ではなく「事実認定の伴走者」
弁護士に相談する際、「法律と判例を教えてください」という相談の仕方では不十分です。法律・判例はあくまで前提知識。大事なのは「今当社で起きているこの事案について、何が事実として確定できるか、どう進めれば安全か」という個別具体的な相談を、短い時間で繰り返し行うことです。オンライン(ZoomやTeams)で30分程度の相談を繰り返すことが、最も現実的で効果的なアプローチです。
3. 懲戒処分の前提①——就業規則の懲戒規定の定めと周知
懲戒処分を有効に行うためには、就業規則に懲戒の種類と懲戒事由が定められ、社員から見ようと思えば見られる状態(周知)になっていることが前提です。
⚠ 就業規則を作っても周知しないと懲戒処分が無効になる
就業規則を作ったはいいが棚にしまったままで誰も見られない状態では「周知」があったと言えません。学校の校則を生徒に見せずに校則違反として処分するのと同じです。「どこに置いてあるから見てください」という案内をするか、PDFで配布・アクセス先を通知するなど、社員が実際に見られる状態にしておくことが必要です。
また「入社の際に就業規則を遵守する旨の誓約書を取っている」「労働条件通知書に就業規則による旨を記載している」だけでは周知として弱い場合があります。社員に具体的な場所・アクセス方法を伝えて周知することを徹底してください。
4. 懲戒処分の前提②——弁解の機会を与える(事実ベースで行う)
懲戒処分を行う前に、本人の言い分を聞く機会(弁解の機会)を与えることをお勧めします。弁解を聞くことで事実認定の精度が上がり、本人の納得感も生まれます。
弁解聴取は面談での口頭やり取りと、書面による反論提出の両方を活用します。
▶ 弁解聴取は事実ベースで行う
❌ 評価ベースの聴取(NG例)
「あなたはパワハラをしたでしょ」→「してません」→「してるでしょ」→「してません」(空中戦になって意味がない)
✓ 事実ベースの聴取(正しい例)
「何月何日の何時頃、○○会議室で部下の○○さんに対し大声で○○○と言ったと聞いていますが、これは事実ですか?」
→ 「言っていない」もしくは「言ったが○○という意味ではない」という具体的な反論が可能になる
書面による弁解も活用します。「会社は〇月〇日の行為について〇〇という懲戒処分を検討しています。反論がある場合は〇月〇日までに書面で提出してください。その内容を踏まえて処分を決定します」という形で、書面反論を促してから処分を決定する方法も有効です。
5. 懲戒処分通知書を書面で交付する——始末書との混同に注意
懲戒処分は必ず書面(懲戒処分通知書)で交付してください。口頭だけの懲戒処分は、処分をしたかどうか自体が不明確になります。
懲戒処分通知書の最も重要な記載事項は事実です。「何月何日の何時頃・どこで・あなたが誰に対し・どのように何をしたことが問題であり・これは就業規則何条何号に該当するため・〇〇という懲戒処分に処する」という形で、具体的な事実を書くことが核心です。
⚠ 「始末書」と「懲戒処分通知書」を混同しない
始末書を取ることは「懲戒処分」ではありません。就業規則に「始末書を取り将来を戒める」という規定がある場合、始末書取得自体が懲戒処分の一種(戒告)となります。この場合、後から懲戒解雇などを行うと「同じことで二度処分された(二重処罰だ)」と主張されるリスクがあります。始末書という言葉は使わず、「事情説明書」「事実確認書」などの名称を使うか、または懲戒処分通知書と明確に区分して運用することをお勧めします。
6. まとめ
① 早い段階から懲戒処分を行う——我慢し続けてからでは遅い
問題が軽微なうちに適切な懲戒処分を行うことで改善につながることもあります。追い詰められてから相談しても選択肢が限られます。
② 就業規則の周知・弁解の機会・懲戒処分通知書の交付を適切に行う
この3つの手続きを踏まないと懲戒処分が無効になるリスクがあります。また始末書と懲戒処分を混同しないよう注意してください。
③ 事実認定が最重要——弁護士と継続的に相談しながら進める
「何月何日に何があったか」という事実の確定が懲戒処分の核心です。自力で頑張るのではなく、問題社員対応に慣れた弁護士に継続的に相談しながら進めることで大きな失敗を防げます。
よくある質問(FAQ)
問題社員の懲戒処分でお困りの方はご相談ください
就業規則の確認・事実の特定・弁解聴取・懲戒処分通知書の作成まで、会社側の立場に特化した弁護士が継続的にサポートします。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日 2026/04/15
