問題社員199 能力が極端に低い社員に辞めてもらうためのコツ

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この記事の要点

やめてもらうなら試用期間中が圧倒的に有利。法的ハードルの低さと納得感の両面で、この時期を逃してはならない

試用期間中の本採用拒否は法的ハードルがやや低く、本人の納得感も得られやすい。試用期間を過ぎてからの対応は格段に難しくなる

試用期間の長さは自社の業務内容に合わせて設計する。3ヶ月で判断できない業務は6ヶ月以上に変更すべき

「3ヶ月で気づいたが決断できなかった」経験がある会社は6ヶ月への変更を検討する。長ければ良いわけではなく、業務内容で決める

やめてもらう理由は「事実ベース」で具体的に説明することがコツ。評価だけでは納得を得られない

「いつ・どこで・何をした(しなかった)か」を5W1Hで伝えることで、「好き嫌いで言っているのではない」ことが伝わり納得感が生まれる

事実ベースの説明ができれば、退職条件の金額交渉でも有利になる。「ごもっとも」と思われる説明は解決金を不要にすることもある

具体的事実で説明できると、裁判でも和解でも合意退職でも、あらゆる場面で会社が有利になる

1. コツ① 試用期間中に話をつける

(1) なぜ試用期間中が有利なのか

能力が極端に低い社員にやめてもらうためのコツは、まず何より試用期間中に話をつけることです。

「試用期間中でも客観的に合理的な理由がなければ解雇できない」という話を聞いたことのある経営者も多いと思います。これは法律的に正しい知識です。しかし現実の問題として、試用期間中の方が圧倒的にやめてもらいやすいのは確かです。その理由は2つあります。

▶ 試用期間中がやめてもらいやすい2つの理由

① 納得感が得られやすい
試用期間中はお互いに「確認中の段階」という認識があります。「試しに雇ってもらっているだけ」という本人の意識から、残念でも「しょうがない」と感じやすい時期です。試用期間を過ぎると「この会社でずっと働けると思っていたのに」という感情が生まれ、納得感を得るのが格段に難しくなります。

② 法的ハードルがやや下がる
100cmのハードルが80cmになるイメージです。わずかな差ですが、ギリギリで対応できる会社にとっては決定的な意味を持ちます。

本採用後に「あなたは能力が低いからやめてください」と言われた本人の立場を想像してください。「話が違う」「なぜ試用期間中に言ってくれなかったのか」と思うのは当然です。誠実な対応という観点からも、試用期間中に判断して話をすることが正しい姿勢です。

(2) 試用期間の長さは業務内容で決める

「試用期間中に話をつけたいが、3ヶ月では判断できなかった」という経験をした会社は少なくありません。3ヶ月の試用期間では問題に気づいても決断できず、4〜5ヶ月経ってやっと「ダメだ」と判断できた——というケースです。そうなると、すでに試用期間を過ぎてしまっています。

⚠ 試用期間の設計を見直すべきケース

「3ヶ月では判断できなかった」経験が1回でもある会社は、試用期間を6ヶ月に延長することを検討してください。就業規則と採用条件を変更するだけで対応できます。ただし、長ければ良いわけではありません。説明がつかないほど長い試用期間は、裁判所に「不合理」と判断されることがあります。自社の業務内容に応じた適切な長さを設定してください。

試用期間の目安は3ヶ月・6ヶ月が多いですが、業種や業務内容によっては1年程度必要な場合もあります。自社では何ヶ月あれば「この社員は当社の仕事に適しているか」を判断できるかを基準に設計してください。

2. コツ② やめてもらう理由を事実ベースで具体的に説明する

試用期間中であれ試用期間後であれ、やめてもらう際に最も重要なコツは「なぜ能力不足と言えるのか」を事実ベースで具体的に説明することです。

「あなたは能力が低い」「周りのみんながそう言っている」という評価だけを伝えても、本人は「嫌いだから言っている」「気分で言っている」としか受け取れません。単純な評価の伝達では、納得するどころか反発を招きます。

▶ 事実ベースの説明とは(5W1H)

・何月何日に、どのような指示を出したか
・その後、何をした(しなかった)か
・どのように指導・注意したか
・その後も同様のことが何月何日に起きたか
・そもそもどのような仕事で採用されたのに、なぜその仕事ができていないといえるか

こうした具体的な事実を積み上げて説明することで、「好き嫌いで言っているわけではない」「客観的な理由がある」と伝わります。これが本人の納得感につながります。

こうした事実ベースの説明が準備できていれば、退職勧奨がまとまらず裁判になった場合でも、裁判所への説明・証拠として機能します。また証拠が揃っていれば、和解交渉でも有利な条件を引き出しやすくなります。

3. コツ③ 退職条件を提示して交渉する

退職勧奨を進める際は、理由の説明と並行して退職条件の提示と交渉が必要です。主な条件は退職日・会社都合退職か自己都合退職か・金銭的な上乗せの有無・年次有給休暇の取り扱いなどです。

「こんなに問題を起こされたのに、なぜこちらがお金を払わなければならないのか」と感じる経営者もいます。その気持ちはわかりますが、退職勧奨に応じてもらえない場合のコスト(裁判の時間・費用・ストレス、長引く交渉)と比較して、ある程度の金銭を支払うことで早期解決を図る方が合理的な場合があります。

▶ 事実ベースの説明が整っていると退職条件も有利になる

「なるほど、確かに自分はこういうことをしたし、指導もしてもらっていた」と本人が感じる説明ができれば、解決金なしでも合意できることがあります。逆に曖昧な説明では、解決金を高額に要求されることが多くなります。事実の準備が退職条件の金額交渉にも直結します。

4. やめてもらうことは会社だけでなく本人のためにもなる

能力が極端に低い社員にやめてもらうことは、周囲の社員を守るためだけではありません。本人のためにもなることを、経営者として心に留めておいてください。

能力が低く見える状態というのは、多くの場合その仕事に対する適性がないことを意味します。向いていない仕事は本人にとって辛いものです。「早く時間が過ぎないか」と時計を見ながら働いている状態、ひどい場合は体を壊してしまう——これは本人が不幸な状態です。

適性のある別の仕事に就けば、生き生きと働ける可能性があります。それは本人の健康のためにも、キャリアのためにもなります。「やめさせることは残酷だ」ではなく、「向いていない仕事を続けさせることの方が残酷かもしれない」という視点も持ってください。

5. まとめ

能力が極端に低い社員にやめてもらうためのコツを整理します。

① 試用期間中に話をつける

試用期間中は納得感が得られやすく、法的ハードルもやや低い。この時期を逃さないことが最大のポイントです。試用期間の長さは業務内容に合わせて設計してください。

② 事実ベースで具体的に説明する

「いつ・どこで・何をした(しなかった)か」を5W1Hで積み上げて説明します。評価だけの説明では納得を得られません。事実ベースの説明は、退職条件交渉でも裁判でもすべての場面で会社を守ります。

③ 退職条件を提示・交渉する

退職日・会社都合/自己都合・金銭的上乗せなどの条件を提示します。事実の説明がしっかりできていれば、解決金を最小化できることもあります。自力でやるのが難しい場合は弁護士のサポートを受けてください。

よくある質問(FAQ)

Q 試用期間が3ヶ月で、もうすぐ終わります。今すぐ対応できますか?
A

試用期間満了日前に、できるだけ早く動いてください。本採用拒否の通知は試用期間満了日までに行う必要があります。また退職勧奨で合意を目指す場合も、時間が限られています。今すぐ弁護士に相談することをお勧めします。準備できている事実・記録があればそれを持参してください。

Q 試用期間をすでに過ぎてしまいました。今からでもやめてもらえますか?
A

難易度は上がりますが、不可能ではありません。退職勧奨(話し合いによる合意退職)を試みることが現実的な選択肢です。その際も事実ベースの説明が重要です。解雇については法的ハードルが高く、証拠の積み上げが必要になります。まず弁護士に相談して、取りうる選択肢を整理してください。

Q 退職勧奨の際、必ずお金を払わなければなりませんか?
A

必ずではありません。事実ベースで丁寧に理由を説明でき、本人が「確かにそうだった」と納得できた場合、解決金なしで合意退職に至ることもあります。逆に説明が不十分だと解決金を高額に求められやすくなります。お金を払うかどうかよりも、しっかりした事実の準備が先決です。

能力不足社員にやめてもらいたい方はご相談ください

試用期間中の対応・退職勧奨の進め方・解雇対応まで、会社側の立場に特化した弁護士が具体的にアドバイスします。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者 弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日 2026/04/14