問題社員130 部下の業務内容を理解しておらず、成果につながらない指導や指示を繰り返す。

動画解説

 

1. 問題の本質は「適性を無視した配置」にある

 部下の業務内容を十分に理解せず、的外れな指示や評価を繰り返す管理職がいる場合、多くの会社経営者は「本人の努力不足」や「管理能力の欠如」に目を向けがちです。しかし、問題の本質は個人の資質だけにあるとは限りません。

 実務上よく見られるのは、営業部門で高い成果を上げていた社員を、専門性の高い技術部門の管理職に抜擢するなど、実績を理由に畑違いの部署へ配置するケースです。過去の成功体験があるため期待値は高まりますが、業務内容の理解が不十分なままでは、適切な指示や評価ができません。

 その結果、部下の成果が上がらないと「努力が足りない」「やり方が悪い」と責任を転嫁しがちになります。管理職自身が業務の本質を理解していないため、具体的な改善指導ができず、精神論に偏る傾向も生じます。

 会社経営者として重要なのは、「なぜその配置を行ったのか」「その人は本当にその部署のマネジメントに適していたのか」という点を冷静に振り返ることです。

 管理職の役割は、単に数字を出すことではなく、部下の業務を理解し、方向付けを行い、成果につなげることにあります。業務理解が前提となる以上、専門性のミスマッチは重大なリスクになります。

 適性を無視した配置は、本人だけでなく、部下、さらには組織全体の生産性を低下させます。

 会社経営者に求められるのは、「実績があるから大丈夫」という単純な発想ではなく、「そのポジションに必要な能力は何か」という観点から人事を設計する姿勢です。

 問題管理職の背景には、配置段階での判断ミスが潜んでいることが少なくありません。まずはそこを直視することが、解決への第一歩です。

2. 管理職の役割を誤解している可能性

 部下の業務を理解できない管理職の問題を考える際、会社経営者がまず確認すべきなのは、「その管理職は、自らの役割を正しく理解しているか」という点です。

 管理職は、必ずしも自らがプレイヤーとして優秀であることだけが求められる立場ではありません。本来の役割は、部下の業務内容を把握し、適切な目標を設定し、成果につながる環境を整えることにあります。

 ところが、プレイヤーとしての成功体験が強い管理職ほど、「自分のやり方」を基準に部下を評価しがちです。業務の内容が変わっているにもかかわらず、過去の成功パターンを押し付けることで、現場との乖離が生じます。

 また、専門性の高い部署では、細部の理解がないまま抽象的な指示を出しても、実務は動きません。その結果、部下が戸惑い、成果が出ない状況に陥ります。

 会社経営者としては、「なぜ成果が出ないのか」という問いを、部下側だけに向けるのではなく、管理職のマネジメントの在り方にも向ける必要があります。

 管理職の役割は、指示を出すことではなく、成果が出る仕組みを作ることです。業務を理解していなければ、その仕組みを設計することはできません。

 もし管理職自身が、自らを“上位のプレイヤー”としか認識していないのであれば、役割認識の修正が必要です。

 会社経営者には、管理職に対して「何を期待しているのか」を明確に伝える責任があります。役割が曖昧なままでは、評価も指導も機能しません。

 問題管理職への対応は、個人攻撃ではなく、役割定義の再確認から始めるべきです。そこに、改善の余地が残されている場合も少なくありません。

3. 部下の不振は管理職の責任という原則

 部下の成果が上がらない場合、会社経営者としてまず確認すべき原則があります。それは、「部下の不振は、原則として管理職のマネジメント責任の問題でもある」という点です。

 もちろん、部下自身の能力不足や努力不足が原因である場合もあります。しかし、管理職の役割は、部下の能力を見極め、適切な業務配分を行い、必要な指導や支援を通じて成果を引き出すことにあります。

 したがって、部下の不振が継続している場合、単に「部下が悪い」と結論付けるのではなく、「管理職として何をしてきたのか」「適切な指導は行われていたのか」という検証が不可欠です。

 業務内容を十分に理解していない管理職は、具体的な改善指導ができず、抽象的な精神論に終始しがちです。その結果、部下は何をどう改善すべきか分からず、状況が固定化します。

 会社経営者としては、評価の矛先を部下だけに向けるのではなく、管理職のマネジメント手法も含めて検証する姿勢が求められます。

 管理職とは、成果を“自分で出す人”ではなく、“部下に出させる人”です。この本質を踏まえれば、部下の不振は管理職の指導力や配置判断とも無関係ではありません。

 もし部下のパフォーマンスが一様に低下しているのであれば、それは個人の問題というより、マネジメントの問題である可能性が高いといえます。

 会社経営者には、感情論や印象論ではなく、組織構造の観点から原因を特定する冷静な分析が求められます。そこを見誤れば、問題は繰り返されるだけです。

4. 畑違いの管理職配置がもたらす組織リスク

 部下の業務を十分に理解できない管理職が問題となる背景には、しばしば「畑違いの部署への配置」があります。営業で成果を上げていた社員を、専門性の高い技術部門や企画部門に配置するケースです。この場合、過去の成功体験があるため期待値は高くなるものの、実務の理解が追いつかないことが多く、結果として部下への指示が曖昧になったり、成果評価が適切に行えなかったりします。

 こうした配置のミスマッチは、組織全体に負の影響を及ぼします。部下は適切な指導を受けられず、成果が上がらない状況が続くことで士気が低下し、離職や不満の原因となります。また、管理職自身も成果が出ないことにフラストレーションを感じ、プレッシャーを部下に押し付けるリスクもあります。

 会社経営者としては、配置の決定時に「その人の適性や専門性が部署の要求と合致しているか」を慎重に見極めることが不可欠です。単に過去の実績や社内の人手不足だけで配置を決めると、結果的に組織全体の生産性やモラルが損なわれる可能性があります。

 適性を無視した配置は、管理職本人だけでなく部下や周囲の社員、さらには企業全体の業績に影響する重大なリスクです。会社経営者には、短期的な便宜よりも長期的な組織の健全性を優先した判断が求められます。

5. 教育で解決できるケースと難しいケース

 部下の成果が上がらない管理職に対して、まず会社経営者が検討する手段の一つが教育・研修です。業務理解が不足している場合、研修やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通じて必要な知識やスキルを補完し、管理職としての能力を向上させることが可能です。

 具体的には、部署特有の業務フローや成果指標の理解、部下への指示の出し方、評価方法の教育などを行います。これにより、管理職自身が業務を理解し、部下を適切に導くことができれば、問題は改善されます。

 しかし、教育で解決が難しいケースも存在します。例えば、専門知識や経験が全く異なる部署に無理に配置されている場合、学習だけでは追いつかず、成果が出るまでに時間がかかりすぎることがあります。また、本人の意欲やコミュニケーション能力が低い場合も、教育の効果は限定的です。

 会社経営者としては、教育による改善が見込めるか、短期的・中長期的に見て合理的かを見極める必要があります。教育で効果が期待できない場合は、配置転換や役割の再設計を視野に入れることが現実的です。

 ポイントは、教育が万能ではないことを認識しつつ、まずはサポートや研修で改善を試みるとともに、改善が見込めない場合のリスク管理策も併せて検討することです。

6. パワハラ化する場合の注意と懲戒判断

 部下の成果が上がらない状況で管理職が精神論や威圧的な指示に頼ると、パワハラに発展するリスクがあります。会社経営者としては、管理職が不適切な指導を行っていないかを慎重に観察する必要があります。

 具体的には、長時間にわたる執拗な叱責、人格を否定するような発言、必要以上の圧力をかける行為は、部下に心理的負担を与えるため、法的な問題に発展する可能性があります。こうした場合、懲戒処分の検討も含め、速やかに対応策を講じる必要があります。

 ただし、懲戒判断を行う際には、事実関係を正確に把握することが重要です。部下の評価や指摘内容を記録し、必要であれば本人からの弁明機会を設けることで、判断の客観性を確保します。これは、後に紛争や訴訟が発生した場合に、会社としての正当性を示す根拠となります。

 会社経営者として求められるのは、単に部下の不振を叱責するだけでなく、管理職自身が適切なマネジメントを行っているかを確認し、必要に応じて指導・懲戒を行うことです。

 パワハラリスクを未然に防ぐことは、部下の健康を守るだけでなく、組織全体の健全性と法的リスクの回避にも直結します。会社経営者は、法令遵守と組織秩序の双方を考慮して、冷静かつ迅速に対応策を講じることが求められます。

7. 配置転換の可否と経営合理性

 部下や管理職の適性が現部署に合わない場合、会社経営者として最も現実的な対応策の一つが配置転換です。しかし、すべてのケースで容易に実施できるわけではありません。特に、中小企業や専門性が高い部署では、適任者の候補が限られており、転換の選択肢が乏しいことがあります。

 配置転換を検討する際には、単に「やらせてみる」という感覚では不十分です。経営合理性の観点から、以下の点を整理する必要があります。まず、現状のまま配置を続けることで組織にどの程度のリスクや損失が生じるのかを把握します。次に、候補となる他の配置先で業務が適切に回せるか、管理職や部下の能力や適性を評価します。そして、転換に伴う教育や引継ぎのコストも勘案することが重要です。

 会社経営者は、法令遵守と組織運営の両立を考えつつ、合理的に判断する必要があります。配置転換は、単に個人の不適性を理由に行うのではなく、組織全体の生産性向上とリスク管理の一環として位置付けるべきです。

 配置転換が可能な場合、事前に期待される成果や役割を明確に示し、管理職に理解させることも重要です。これにより、転換後の不適応や再度のパフォーマンス低下のリスクを軽減できます。

 会社経営者に求められるのは、感情的判断ではなく、組織全体の合理性を基準にした戦略的な配置決定です。

8. 配置先がない場合の現実的対応

 適性や能力に見合った部署が社内に存在しない場合、会社経営者は現実的な選択肢を検討する必要があります。この場合、単に「今の部署で我慢してやれ」と指示するだけでは、部下も管理職も疲弊し、組織全体の生産性低下を招きます。

 一つの選択肢は、現職のまま教育やサポートを強化して、できる範囲で業務を遂行させることです。しかし、極端に適性が不足している場合、成果が期待できず、長期的には会社に損失をもたらす可能性があります。

 別の選択肢としては、退職勧奨や合意退職を検討する場合もあります。これは、本人の適性と会社の組織運営を踏まえ、双方にとって最適な解決策を模索するものです。ただし、無理に押し付ける形ではなく、十分な説明と選択の余地を与えることが重要です。

 会社経営者は、法的リスク、組織全体の健全性、本人のキャリアの三つの視点から現実的対応策を判断する必要があります。適性に合わない配置を長期間続けることは、誰にとってもメリットがなく、組織リスクを高めるだけです。

 最終的には、配置先がない場合でも、教育、サポート、退職勧奨など、複数の手段を組み合わせて、合理的で公正な対応をとることが会社経営者の責務です。

9. 適性なき配置が関係者全員に与える負担

 適性や能力に合わない管理職をそのまま配置し続けることは、本人だけでなく、部下や周囲の社員にも大きな負担を強いることになります。部下は指示が曖昧で成果が評価されない状況に直面し、フラストレーションやモチベーション低下を感じます。場合によっては、離職や職場不満の増加につながることもあります。

 管理職自身も、業務を理解できないまま責任を負わされることでストレスが蓄積し、健康やパフォーマンスに影響が出る可能性があります。さらに、上司や経営層がサポートに時間を割かなければならず、組織全体の効率も低下します。

 会社経営者に求められるのは、影響を受けるすべての関係者を俯瞰的に捉え、適性なき配置を放置することのリスクを評価することです。個人の努力や責任だけでは解決できない問題であることを理解し、組織全体としての対応策を検討する必要があります。

 場合によっては、教育や指導、配置転換、さらには退職勧奨といった選択肢を組み合わせ、組織全体の健全性と生産性を維持することが、会社経営者としての最も重要な判断になります。

10. 会社経営者が持つべき最終的視点「適材適所」

 部下や管理職の適性と能力を考慮した配置は、単なる人事上の調整ではなく、会社経営者の戦略的判断の核心です。適性を無視した配置を放置すると、組織全体の生産性低下、社員の士気低下、法的リスクの増大など、複合的な問題を引き起こします。

 最終的には、会社経営者として次の視点を持つことが重要です。まず、各社員の適性・能力を正確に把握すること。そして、現状の配置がその能力を最大限に活かせているか、組織全体の成果に貢献しているかを検証します。もし不適切であれば、教育・指導、配置転換、さらには退職勧奨など、合理的で公正な手段を講じる必要があります。

 また、配置判断は個別判断にとどまらず、組織文化や長期的な経営戦略と連動させることが求められます。適材適所を徹底することで、管理職は部下を適切に導き、部下は能力を発揮しやすくなる環境が整います。その結果、組織全体の効率性や士気が向上し、企業価値の最大化につながります。

 結局のところ、管理職や部下の不適性は個人の問題ではなく、会社全体のマネジメント課題です。会社経営者は、法令遵守、組織効率、社員の適正を総合的に考慮しながら、適材適所の原則に基づいた戦略的判断を行うことが不可欠です。

 

最終更新日2026/2/18


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