問題社員121 復職してすぐ休む。

動画解説

本記事の内容は、代表弁護士 藤田進太郎が動画でも解説しています。「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)では、問題社員対応の実務を継続的に配信しています。

この記事の結論
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主治医の診断書は復職判断の必要条件にすぎず、労務提供可能性の確認と安全配慮義務を踏まえた最終判断は会社が行う

診断書のみで形式的に判断すると、再休職のリスクが高まります。

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産業医面談や試し出社を活用しつつ、通算規定など制度面からも再休職を防ぐ設計が求められる

休職制度の設計は、どこまで社員を支えるかという会社経営者の価値判断そのものです。

 復職して間もない社員が再びすぐに休み始めてしまうという問題は、単なる個別対応の問題にとどまらず、組織運営・法的リスク・人員計画に直結する経営課題です。業務の混乱、周囲の社員の心理的負担、そして安全配慮義務をめぐる法的リスクが同時に生じ得ます。

 本記事では、復職してすぐ休む社員への対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを解説します。

01復職してすぐ休む社員が経営に与えるリスクと、診断書を過信しない原則

 復職を前提に配置を組み、業務を割り振っていたにもかかわらず再度の欠勤が発生すると、業務計画は一気に崩れます。「また休むのか」という不信感が周囲の社員に広がれば組織の士気は低下し、善意でフォローしていた社員ほど疲弊して離職リスクにもつながります。また、十分な回復確認をせずに復職させた結果、体調が再悪化すれば安全配慮義務違反が問題となる一方、回復しているにもかかわらず合理的理由なく復職を拒否すれば、それもまた紛争の火種になり得ます。復職判断は「戻したら終わり」ではなく、戻した瞬間から会社経営者の判断責任が問われ続けるものと捉える必要があります。

 復職判断において多くの会社が拠り所とするのが主治医の診断書ですが、「復職可能」と記載された診断書は、復職の必要条件ではあっても十分条件ではありません。主治医は医療の専門家であり、必ずしも会社の業務内容の専門家ではないため、実際の職務の負荷や繁忙期の状況などを正確に把握しているとは限らず、多くの場合本人の申告を前提に判断せざるを得ません。特にメンタル不調の場合、症状の回復と職務遂行能力の回復は必ずしも一致しません。診断書を尊重しつつも、労働契約で予定された労務提供が継続的・安定的に行える状態かどうかを確認し、最終判断は会社が行うという原則を忘れないことが重要です。

02労務提供可能性の確認|産業医面談・主治医面談・試し出社の活用

 復職判断において最終的に確認すべきなのは、労働契約で予定された職務内容を、通常の業務水準で継続的に遂行できる状態にあるかという点です。ここを曖昧にしたまま復職を認めると再度の体調悪化を招くおそれがあり、安全配慮義務違反が問われる可能性があります。一方で、明らかに業務遂行が可能であるにもかかわらず過度に慎重になり復職を拒否することも適切とはいえません。実務上は、残業免除や短時間勤務、業務負担の軽減といった段階的復帰も選択肢となりますが、どの程度の軽減であれば通常業務に移行できる見込みがあるのかを具体的に見極めることが重要です。

 復職判断をより実質的なものにするうえで有効なのが、産業医面談の活用です。ただし、最終判断を行うのは会社であり、産業医は医学的観点から意見を述べる立場にとどまる点に注意が必要です。面談では、具体的な業務内容を説明したうえで、どの程度の業務負荷であれば可能かといった点を具体論に落とし込んで確認することが望まれます。本人の同意を前提に、主治医との面談を検討することも一つの選択肢です。また、診断書や面談だけでは把握しきれない実務遂行能力を確認する方法として、試し出社(リハビリ出社)も有効です。始業時刻に安定して出社できるかは基本的かつ重要な指標であり、試し出社はあくまで復職可否を判断するための確認期間であって正式復職ではないという位置づけを明確にし、目的、期間、業務内容、賃金の扱いを事前に整理しておくことが重要です。

03通算規定・自然退職規定の設計と運用上の注意

 復職してすぐ休むという事態が繰り返される場合、検討すべき制度的対応の一つが通算規定です。同一または類似の傷病による欠勤・休職について、一定期間内であれば日数を通算するという仕組みであり、復職後に再び同様の傷病で欠勤した場合には速やかに休職へ移行させる、あるいは以前の休職期間をリセットせず残期間のみを適用するといった設計が考えられます。もっとも、前回の休職期間満了直前に復職し、その後わずかな欠勤で即座に休職や自然退職という扱いになるような厳格すぎる設計は、実質的妥当性が問われる可能性があり、規定として存在していても具体的事案において有効と評価されるかどうかは別問題である点に留意が必要です。

 復職後一定期間内に同一または類似の傷病で欠勤した場合に休職期間満了とみなし自然退職とする規定についても、慎重な検討が必要です。メンタル不調の場合、回復には波があるため、一時的な体調悪化をもって即座に退職扱いとすることが社会通念上相当と評価されるかどうかは、事案ごとの判断が求められます。重要なのは「規定として可能か」ではなく「その規定を運用した場合にどの程度のリスクを受け入れるか」という視点であり、通算規定や自然退職規定は復職時の実質的確認に代わるものではなく、あくまで補助的なリスク管理手段と位置づけることが適切です。

04休職制度をどう設計するか|中小企業における選択肢

 法律上、私傷病休職制度を設ける義務はなく、制度の有無や期間、通算の扱い、復職基準などは会社経営者の経営判断に委ねられています。特に中小企業では、一人の長期離脱がそのまま経営リスクに直結する規模であれば、無制限に近い休職制度は現実的ではありません。休職制度を設けないという選択肢も理論上は存在しますが、その場合は一定期間の欠勤が続けば普通解雇を検討せざるを得ず、解雇の合理性判断は慎重を要するため、かえって紛争リスクが高まる可能性もあります。休職制度は社員保護のための制度であると同時に、解雇判断を一旦猶予するための調整装置という役割も持っています。

 休職期間をどこまで認めるかは、会社としてどこまで社員を支えるのかという価値判断の問題です。休職期間を一年と定めることは「一年は回復を待つ」という意思表示であり、半年であれば「半年が限度」という判断になります。どちらが正しいという一般解はなく、自社の規模、業種、代替要員確保の容易さ、経営体力を踏まえて決める必要があります。重要なのは、休職期間の満了時に必ず実質的な労務提供可能性を確認することであり、「期間が来たから復職」「満了したから当然退職」という形式的な運用は、いずれもリスクを伴います。

05制度設計は会社経営者の責任

 実務では、休職制度や復職基準を社会保険労務士に任せきりにしていたり、就業規則を昔作ったまま見直していなかったりするケースも見られます。しかし、休職制度の最適解は会社の規模・業種・経営体力によって異なり、外部専門家は助言はできても価値判断までは代わることができません。どこまで支えるのか、どこで線を引くのかという最終決断は、会社経営者が担う責任です。

 復職直後の再休職が繰り返される背景には、復職基準が抽象的である、通算の扱いが不明確である、判断主体が曖昧であるといった制度上の課題が潜んでいることが少なくありません。制度が明確であれば、社員にとっても「どこまで休めるのか」「どの状態で復職できるのか」の予測可能性が高まり、不安や誤解を減らすことにもつながります。問題が顕在化する前に制度を点検し、必要であれば見直すという先手の姿勢が、組織の安定を支える基盤になります。判断に迷う場合は、会社側専門の弁護士にご相談ください。

06よくある質問(FAQ)

Q. 主治医が「復職可能」とする診断書を出した場合、必ず復職させなければなりませんか。

必ずしもその通りではありません。主治医は業務内容の専門家ではないため、診断書は判断の「必要条件」であっても「十分条件」ではありません。会社は、実際の職務遂行能力や安全配慮義務の観点から、総合的に復職の可否を判断する権限と責任を有しています。

Q. 復職して数日で再度欠勤し始めた社員を、即座に自然退職扱いにすることは可能ですか。

就業規則に「通算規定」や「再休職時の自然退職規定」があれば形式的には可能ですが、有効性は慎重に判断されます。復職判断自体に誤りがなかったか、再欠勤の理由が同一傷病かなどの事実関係が争点となるため、実質的な労務提供可能性の確認が重要です。

Q. 「試し出社(リハビリ出社)」期間中に給与を支払う必要はありますか。

試し出社の位置づけによります。本格的な労務提供を求めるのであれば賃金が発生しますが、復職可否を判断するための訓練として業務に従事させない形式であれば、無給とする運用も可能です。ただし、事前に条件を明確にした書面での合意が不可欠です。

経営上のポイント 主治医の診断書は復職判断の必要条件にすぎず、労務提供可能性の確認と安全配慮義務を踏まえた最終判断は会社が行うものです。産業医面談や試し出社を活用して実質的に確認するとともに、通算規定など制度面からも再休職を防ぐ設計を検討してください。休職制度の設計はどこまで社員を支えるかという価値判断であり、その最終責任は会社経営者にあります。具体的な事情に応じて、実務で活用いただける方針をご案内します。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休職・復職対応、就業規則の設計でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月9日


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