問題社員60 休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる。

動画解説

 

1. 休職期間満了ギリギリで復職を求めてくる社員はなぜ多いのか

 休職期間の満了日が迫ったタイミングで、突然「復職したい」「復職可能との診断書が出た」と申し出てくる社員は、決して珍しい存在ではありません。会社経営者としては、「なぜもっと早く相談しなかったのか」と違和感を覚える場面でもあります。

 このような行動の背景には、休職期間が満了すると、原則として休職制度が使えなくなり、退職や解雇といった雇用上の重大な判断が現実味を帯びてくるという事情があります。社員側にとっては、「復職しなければ雇用が維持できない」という切迫感が強く働く時期です。

 また、体調が完全に回復していなくても、「今復職しないと不利になる」「何とか復職の意思を示さなければならない」と考え、十分な準備が整わないまま復職を申し出てくるケースも見受けられます。これは悪意というより、将来への不安から生じる行動といえるでしょう。

 一方で、会社経営者として注意すべきなのは、こうした申出が必ずしも「就労可能な状態」を意味するわけではない点です。休職期間満了という期限に合わせた形式的な復職希望と、実際に業務を遂行できるかどうかは、必ずしも一致しません。

 さらに、社員側が「復職の可否は診断書があれば足りる」と誤解しているケースもあります。会社としては、単に復職の意思が示されたというだけで、直ちに職場に戻さなければならないわけではありません。

 休職期間満了ギリギリでの復職申出は、社員側の不安や事情が強く反映された行動である一方、会社側にとっては慎重な判断が求められる場面です。この特性を理解せずに対応すると、後のトラブルにつながりやすくなります。

 まずは、このような申出が起こりやすい背景を冷静に把握することが、適切な対応を考えるための出発点になります。

2. 休職期間満了時に会社経営者が直面する悩ましさ

 休職期間の満了が近づき、社員から復職の申出があった場合、会社経営者は非常に難しい判断を迫られます。一方で雇用を守る必要があり、他方で職場の安全や業務の円滑な運営にも責任を負っているからです。

 特に悩ましいのは、「復職させなかった場合に問題にならないか」という不安と、「復職させて本当に大丈夫なのか」という懸念が同時に存在する点です。どちらの判断にもリスクがあり、簡単に結論を出せる状況ではありません。

 会社経営者として注意すべきなのは、「休職期間が満了するから、何らかの判断をしなければならない」という時間的プレッシャーです。このプレッシャーの中で、十分な検討をせずに復職を認めてしまうと、再休職や業務上の事故、周囲の社員への負担増加といった問題が生じるおそれがあります。

 また、現場からは「人手が足りないから戻してほしい」「逆に、まだ無理ではないか」といった相反する意見が出ることもあります。会社経営者は、こうした現場感覚と法的・制度的な判断を切り分けて考える必要があります。

 一方で、復職を認めなかった場合には、「不当な扱いではないか」「解雇につながるのではないか」と社員側から不満や不安が示されることもあります。休職制度の運用を誤ると、後に紛争へ発展する可能性も否定できません。

 このように、休職期間満了時の復職判断は、会社経営者にとって精神的にも実務的にも大きな負担となる場面です。重要なのは、感情や場当たり的な判断に流されず、あらかじめ決められた基準や考え方に基づいて対応することです。

 この悩ましさを正しく認識したうえで、次に確認すべき具体的なポイントを整理していくことが、トラブルを防ぐための第一歩になります。

3. 復職判断における最低条件は主治医の診断書である

 休職期間満了時に復職の可否を判断するうえで、会社経営者がまず確認すべき最低条件は、主治医による診断書の有無と内容です。復職の意思表示だけで判断することは、極めて危険です。

 休職制度は、心身の不調により就労が困難となった社員を一時的に業務から離脱させる制度です。その制度の出口である復職についても、「就労可能な状態に回復しているか」という医学的な裏付けが不可欠になります。この裏付けとして最も基本となるのが、主治医の診断書です。

 会社経営者として注意すべきなのは、「本人が復職したいと言っている」「生活のために働けると言っている」といった事情だけで判断してしまうことです。本人の意欲と、実際に業務を遂行できる状態かどうかは、必ずしも一致しません。

 診断書がない場合、会社としては「就労可能である」という客観的な根拠を欠いたまま判断を迫られることになります。この状態で復職を認めてしまうと、後に再休職や業務上のトラブルが生じた際に、「なぜ復職を認めたのか」という点が問題になりやすくなります。

 また、診断書の提出を求めることは、社員に対する不信ではありません。復職判断を適切に行い、本人と職場の双方を守るための最低限の確認です。この点を曖昧にしてしまうと、会社経営者自身が大きなリスクを抱え込むことになります。

 会社経営者としては、「復職の前提として主治医の診断書が必要である」というスタンスを明確に持ち、例外的な対応を安易に認めないことが重要です。これは厳しさではなく、制度運用上の一貫性を保つための判断です。

 復職判断の出発点は、あくまで医学的に就労可能と評価されているかどうかにあります。この最低条件を押さえたうえで、次に診断書の内容をどう評価するかが問題になります。

4. 「復職可」診断書がない場合の基本的な取り扱い

 休職期間満了が迫る中で、社員から復職の申出があったにもかかわらず、「復職可能」と明示された主治医の診断書が提出されないケースも少なくありません。この場合、会社経営者としては、復職を前提とした対応を取るべきではありません。

 診断書がない、あるいは「引き続き加療を要する」「就労については慎重な判断が望ましい」といった内容にとどまる場合、医学的に就労可能であるとの裏付けは存在しません。この状態で復職を認めることは、会社として安全配慮義務の観点からも大きなリスクを伴います。

 会社経営者として注意すべきなのは、「本人が働けると言っている」「生活のために復職したいと言っている」といった事情に引きずられて判断してしまうことです。復職判断は、本人の希望ではなく、客観的に就労可能かどうかを基準に行う必要があります。

 また、「診断書が間に合わなかった」「次回の通院が満了日後になる」といった事情が示されることもありますが、これを理由に例外的な対応をすると、制度運用の一貫性が崩れます。一度例外を認めると、同様のケースで同じ対応を求められることになり、判断基準が曖昧になります。

 復職可の診断書がない場合、会社としては「復職の前提条件が整っていない」と整理するのが基本的な考え方です。この判断は、社員を排除するためのものではなく、無理な復職による再休職や事故を防ぐためのものです。

 会社経営者としては、診断書の提出を求める姿勢を一貫して維持し、「復職可」と明示された診断書がない限り、復職判断には進まないというスタンスを明確にすることが重要です。

 この前提を押さえたうえで、次に問題となるのが、「復職可」と書かれてはいるものの、何らかの就労制限が付されている診断書をどう扱うかという点です。次の項目では、この点を整理します。

5. 就労制限付き診断書をどう評価すべきか

 主治医の診断書に「復職可能」と記載されているものの、「短時間勤務が望ましい」「残業は不可」「業務負荷を軽減すること」といった就労制限が付されているケースは、実務上非常によく見られます。この場合、会社経営者としては、その診断書をどのように評価するかが重要な判断ポイントになります。

 まず理解しておくべきなのは、「復職可」と書かれているからといって、直ちに元の業務内容・労働条件で復職させなければならないわけではないという点です。就労制限は、主治医が医学的観点から示した条件であり、そのまま会社が受け入れなければならない義務があるわけではありません。

 会社経営者として注意すべきなのは、就労制限の内容が、自社の業務実態に照らして現実的かどうかを検討せずに判断してしまうことです。たとえば、恒常的に残業が発生する業務や、突発対応が求められる職種において「残業不可」「業務負荷軽減」といった制限を付した復職が可能かどうかは、慎重に検討する必要があります。

 また、就労制限付きの復職を認めた場合、その制限をどこまで、どの期間守るのかを曖昧にしたまま進めると、現場に混乱を招きます。他の社員に業務負担が偏り、不公平感が生じる原因にもなります。

 会社経営者としては、就労制限付き診断書を「そのまま受け入れるか、全面的に拒否するか」という二択で考える必要はありません。制限内容を踏まえたうえで、自社として対応可能かどうかを検討し、難しい場合にはその理由を整理することが重要です。

 就労制限付き診断書は、復職判断の一材料にすぎません。最終的な判断は、業務内容、安全配慮、職場全体への影響を含めて、会社経営者が行うべきものです。

 この点を踏まえたうえで、次に検討すべきなのが、提示された就労制限が法的にどこまで尊重されるべきものなのか、つまり信義則上相当といえるかどうかという問題です。次の項目では、この考え方を整理します。

6. 就労制限が信義則上相当かどうかの考え方

 就労制限付き診断書が提出された場合、会社経営者として次に検討すべきなのが、その就労制限が信義則上、会社に受け入れを求められる内容かどうかという点です。診断書に記載されているからといって、すべての制限を無条件で受け入れる必要があるわけではありません。

 信義則上相当かどうかを判断する際には、まず制限の内容と範囲を具体的に確認する必要があります。たとえば、「一定期間のみの短時間勤務」なのか、「期限の定めがない恒常的な制限」なのかによって、評価は大きく異なります。期間が限定され、回復の見込みが示されている場合と、先が見えない制限とでは、会社に求められる対応の重さも変わります。

 会社経営者として注意すべきなのは、就労制限が業務の本質部分に及んでいるかどうかです。業務の中核をなす作業が制限される場合、その業務自体が成立しない可能性があります。このような状況で無理に復職を認めることは、形式的には配慮しているように見えても、実質的には適切な配置とはいえません。

 また、就労制限を受け入れた場合に、他の社員にどの程度の負担が生じるかも重要な判断要素です。一人の制限をカバーするために、周囲の社員に恒常的な負担がかかるようであれば、その制限を当然に受け入れるべきとはいえません。

 信義則は、社員の利益だけを一方的に守るためのものではありません。会社と社員双方の事情を考慮し、社会通念上妥当といえる範囲での配慮を求める考え方です。会社の規模、業務内容、職場の体制といった事情も踏まえて判断する必要があります。

 会社経営者としては、「診断書があるから受け入れなければならない」という発想ではなく、「この制限を受け入れることが、会社と職場全体にとって合理的か」という視点で整理することが重要です。

 就労制限が信義則上相当といえるかどうかを冷静に検討することが、次に検討すべき「診断書があっても直ちに復職させるべきでない理由」につながります。

7. 診断書があっても直ちに復職させるべきでない理由

 主治医の診断書に「復職可能」と記載されている場合でも、会社経営者が直ちに復職を認めなければならないわけではありません。この点を誤解したまま対応すると、後に大きな問題を抱えることになります。

 診断書は、あくまで医学的な見地から「就労が可能と考えられる」という意見を示したものにすぎません。実際に、会社の業務内容や職場環境に適応できるかどうかは、医学的判断とは別の次元の問題です。業務の負荷や責任の重さ、人間関係などは、診察室だけでは把握しきれません。

 会社経営者として注意すべきなのは、「診断書がある以上、断ると問題になるのではないか」という不安から、十分な検討をせずに復職を認めてしまうことです。このような対応は、再休職のリスクを高めるだけでなく、職場の混乱や安全配慮義務違反を問われる可能性もあります。

 また、復職後に体調が再び悪化した場合、「なぜこの状態で復職させたのか」という点が必ず問題になります。診断書があったとしても、会社としての判断過程が整理されていなければ、復職判断の妥当性を説明することが難しくなります。

 会社経営者としては、診断書の内容を踏まえつつも、「自社の業務に実際に耐えられるか」「職場として受け入れ可能な体制か」を検討する必要があります。これは、社員を疑うためではなく、無理な復職によって本人を再び追い込まないための判断です。

 診断書が提出されたからといって、復職判断が自動的に決まるわけではありません。復職の可否は、診断書を起点に、会社としての総合的な判断を行うべきものです。

 このような考え方を前提に、次に検討すべきなのが、実際に復職させる前に行う面談や試し出社といった実務上の対応です。次の項目では、この点を整理します。

8. 面談・試し出社による実務上のチェックポイント

 診断書の内容だけで復職の可否を判断することが難しい場合、会社経営者として有効なのが、面談や試し出社を通じた実務上の確認です。これらは、復職を拒むための手段ではなく、適切な判断を行うための重要なプロセスです。

 まず、復職前の面談では、「どのような業務であれば可能と考えているのか」「体調が悪化した場合、どのような対応が必要か」といった点を具体的に確認します。抽象的なやり取りに終始すると、復職後の認識のズレにつながるため、業務内容を前提に話を進めることが重要です。

 会社経営者として注意すべきなのは、面談を単なる形式的な確認で終わらせてしまうことです。復職後に想定される業務量、責任の範囲、周囲との連携などについて、本人が現実的な理解を持っているかを見極める必要があります。

 また、一定期間の試し出社を設けることも、実務上有効な方法です。短時間勤務や限定的な業務から始めることで、実際の職場環境にどの程度適応できるかを確認できます。ここで重要なのは、「様子を見る」という曖昧な位置づけではなく、確認すべきポイントをあらかじめ整理しておくことです。

 試し出社の期間中は、本人の体調だけでなく、業務遂行状況や周囲の社員への影響も含めて確認します。問題が生じた場合には、その内容を記録として残し、次の判断材料とすることが重要です。

 会社経営者としては、面談や試し出社を「復職を前提とした通過儀礼」にしないことが大切です。あくまで、復職が可能かどうかを見極めるための手段であり、結果によっては復職を見送る判断もあり得ます。

 このように、面談や試し出社を適切に活用することで、復職判断の根拠を積み重ねることができます。次に問題となるのが、主治医と産業医の意見が食い違った場合の対応です。次の項目では、この点を整理します。

9. 産業医意見と主治医意見が食い違う場合の対応

 復職判断を進める中で、主治医の診断書と産業医の意見が一致しないケースは少なくありません。主治医は「復職可能」と判断している一方で、産業医が「現時点では慎重にすべき」と意見する場合、会社経営者はどちらを重視すべきか迷うことになります。

 まず理解しておくべきなのは、主治医と産業医では立場と役割が異なるという点です。主治医は、治療を担当し、医学的観点から患者本人の回復状況を評価します。一方、産業医は、会社の業務内容や職場環境を踏まえ、就労の可否や安全配慮の観点から意見を述べる立場にあります。

 会社経営者として注意すべきなのは、「主治医の診断書があるから産業医の意見は無視してよい」と考えてしまうことです。産業医は、職場で実際にどのような業務が行われているかを前提に判断するため、就労の現実性という点では、より会社側の実情に即した意見を示すことがあります。

 意見が食い違う場合には、どちらか一方を機械的に採用するのではなく、その理由や前提を整理することが重要です。主治医が把握していない業務負荷や勤務実態がないか、産業医の懸念が具体的に何に向けられているのかを確認する必要があります。

 また、必要に応じて、主治医に対して業務内容や勤務条件を具体的に伝えたうえで、再度意見を求めることも検討に値します。情報が不足したままの診断書では、復職判断の材料として十分とはいえない場合があります。

 会社経営者としては、最終的な復職判断は会社が行うものであるという前提を忘れてはいけません。主治医や産業医の意見は重要な判断材料ですが、それらを踏まえて総合的に判断する責任は会社側にあります。

 産業医意見と主治医意見が食い違う場面では、判断を急がず、なぜ意見が分かれているのかを丁寧に整理することが、後のトラブルを防ぐための重要な対応になります。

10. 判断に迷うケースで会社経営者が取るべき最終姿勢

 休職期間満了時の復職判断は、診断書、就労制限、産業医意見、現場の受け入れ状況など、複数の要素が絡み合うため、簡単に白黒をつけられないケースが少なくありません。会社経営者として重要なのは、「完璧な正解を探そうとしない」姿勢です。

 復職判断において、どれだけ資料や意見を集めても、将来の体調悪化や業務適応を完全に予測することはできません。そのため、「後から問題にならない判断」を目指すのではなく、「当時として合理的な判断だったと言えるプロセスを踏んだかどうか」が重要になります。

 会社経営者として取るべき最終姿勢は、復職を急がせることでも、機械的に拒否することでもありません。診断書の内容を確認し、就労制限の妥当性を検討し、必要に応じて面談や試し出社を行い、その経過を踏まえて判断する。この一連の流れを丁寧に積み重ねることが、最も重要です。

 また、判断に迷うからといって、曖昧な状態のまま復職を認めることは避けるべきです。「とりあえず戻してみる」という判断は、再休職や職場トラブルにつながりやすく、結果として本人にも会社にも負担を残します。

 会社経営者としては、「社員を守るために慎重な判断をしている」という姿勢を明確に示すことが大切です。それは、復職を認める場合でも、見送る場合でも同様です。説明可能な基準と経過があれば、感情的な対立を抑えることができます。

 休職期間満了時の復職判断は、会社経営者にとって大きな負担となるテーマですが、制度とプロセスに沿って冷静に判断することで、リスクは確実に低減できます。迷いが生じたときほど、場当たり的な対応を避け、会社としての一貫した姿勢を貫くことが、最終的に会社と社員双方を守る判断につながります。

 


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