労働審判と異議申立て

労働審判の方法

  労働審判の方法について,労働審判法は,審判書を作成し送達するのを原則としていますが,実務上は,全ての当事者が出頭している場合は審理を終結する期日において口頭で主文及び理由の要旨を告知する方法により労働審判が行われます。

労働審判の内容

 労働審判の内容は,労働審判委員会が提示した調停案に近い内容の労働審判が出されることが多いです。

 理由の要旨は,「提出された関係証拠及び審理の結果認められる当事者間の権利関係並びに労働審判手続の経過を踏まえると,本件紛争を解決するためには,主文のとおり審判することが相当である。」というような定型的な理由のみが記載されることが多いです。

労働審判が確定した場合の効力

 労働審判は,裁判上の和解と同一の効力を有します。

 その内容によっては,形成力,執行力が認められ,給付を命じる主文を含むものについては,債務名義となります。

労働審判に対する異議

 労働審判に不服のある当事者は,審判書を受け取った日又は期日において労働審判の告知を受けた日から2週間以内に,裁判所に異議の申立てをすることができます。

 いずれか一方の当事者から適法な異議の申立てがなされた場合は,異議を申し立てた当事者に有利な部分を含め,労働審判は失効し,訴訟に移行します。

 異議申立てを取り下げることはできません。

 なお,口頭により労働審判の告知を受けた日から2週間が経過すれば,審判書に代わる調書の送達を受けていなくても異議申立て期間は進行します。

労働審判に対し異議を申し立てるかどうかの判断

 労働審判に異議を申立て訴訟で戦った結果,労働審判で支払いを命じられた金額よりも多額の金銭の支払を命じられることは珍しくありませんので,労働審判に異議を申し立てるか否かは慎重に検討しなければなりません。当該労働審判が妥当かどうか,また,他の労働者への波及効果等も考慮して決定すべきものです。

 労働審判の内容に若干の疑問があったり,納得できないと感じる部分があったとしても,問題の程度が大きくない場合や,他の労働者への波及効果が低い場合は,労働審判に異議を申し立てる必要性は低いと考えます。

 また,代理人の弁護士が異議を申し立てるべきだという意見の場合は,異議を申し立てて訴訟で争うことも検討に値します。しかし,代理人の弁護士が労働審判手続で調停をまとめるべきだとか,労働審判に対し異議を申し立てずに解決した方がいいという意見を述べている場合は,異議を申し立てて訴訟で争っても良い結果に終わることは稀ではないかと思います。

労働審判に対する異議申立てを取下げることはできるのか

 労働審判に対する異議申立ては,申立人,相手方いずれからもできます。しかし,申立人から労働審判に対し異議が申し立てられた場合,労働審判は訴訟へ移行し,その旨の通知が相手方にいくことから,相手方が改めて異議を申し立てるということは考えにくく,申立人が労働審判の異議の申立てを取り下げるとなると,相手方の異議の申立ての機会を奪うことにもなりかねません。

 したがって,労働審判に異議が申し立てられ,労働審判が失効した後は,労働審判の異議申立てを取り下げることはできないものと考えます。

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