労働審判申立書受領後の流れ

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労働審判手続の流れ(概要)

 労働審判手続の流れ(概要)は、裁判所が作成したリーフレットの「~労働審判手続の流れ~」によくまとめられています。
 私が会社経営者の皆様に労働審判手続の流れの概要を説明する際にも、「~労働審判手続の流れ~」を用いています。
 まずは、「~労働審判手続の流れ~」に目を通しましょう。

労働審判申立書受領後の具体的な流れ

 労働審判申立書受領後の具体的な流れは、概ね次のとおりです。

1 弁護士への相談・依頼
 労働審判事件の調停や労働審判が当事者の権利義務関係を踏まえて行われることなどもあり、労働審判手続の対応には専門的な知識経験が必要になります。裁判所から労働審判手続申立書等が届いたら速やかに労働事件を主に取り扱っている会社経営者側弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
 労働審判手続申立書が届いてから第1回労働審判期日までは1か月程度しかないのが通常です。弁護士は1か月先でも予定が入っていることが多く、労働審判手続では第1回労働審判期日の変更を認めてもらいにくい傾向にあります。依頼したい特定の弁護士がいるのであれば、スケジュールを速やかに確保してもらう必要があります。
 依頼する弁護士が決まったら、労働審判手続申立書と同封されている『労働審判手続の進行に関する照会書』に弁護士に依頼する予定である旨記入し、FAXするとよいでしょう。以後、裁判所からの連絡は弁護士が窓口になりますので、自社で直接裁判所からの連絡の対応をしなくてもよくなります。

2 答弁書の作成提出
 第1回労働審判期日の1週間~10日前の答弁書提出期限までに答弁書を作成して提出します。労働審判手続申立書が届いてすぐに弁護士に依頼すれば、答弁書提出期限まで3週間程度あるのが通常です。他方、弁護士への依頼が遅れると答弁書提出期限までの日にちが短くなり、十分な準備ができないまま第1回労働審判期日に臨むことになりかねません。
 労働審判手続は、第1回労働審判期日で証拠調べを終えて調停を開始することが多いこともあり、第1回労働審判期日までで勝負が決まってしまうのが通常です。第1回労働審判期日の審理は申立書と答弁書を前提に行われますので、答弁書の準備が不十分だと、不本意な結果に終わりやすくなります。労働審判手続を有利に進めるためには、労働審判手続申立書が届いたら速やかに会社経営者側弁護士に相談・依頼し、充実した答弁書を作成提出する必要があります。 

3 第1回労働審判期日
 第1回労働審判期日では、冒頭で争点及び証拠の整理をした上で証拠調べを行い、調停が試みられます。労働審判事件における証拠調べは、労働審判委員会が主導する審尋を中心に行われており、労働審判官や労働審判員から口頭で質問されますので、これに対して会社側の担当者が口頭で説明する必要があります。問題となっている事実関係について直接体験し、説明できる人物が説明しないと説得力がありませんので、事実関係を直接体験し説明できる人物が期日に出頭する必要があります。
 証拠調べが終わると調停が試みられます。第1回労働審判期日で調停が成立し、第2回労働審判期日が開催されないことも珍しくありません。労働審判事件の3分の1近くが、第1回労働審判期日までに終局しています。
 第2回労働審判期日を開催することになった場合には、当事者間で第2回労働審判期日に行う手続及び準備すべきことを確認し、準備に必要な期間を考慮した上で、第2回労働審判期日の日程調整を行います。第1回労働審判期日にかかる時間は通常は2時間程度です。

4 第2回以降の労働審判期日
 第2回労働審判期日では、第1回労働審判期日で行われた証拠調べや調停を前提として、引き続き調停が試みられます。第1回労働審判期日で証拠調べが不十分な場合は追加で証拠調べがなされますが、第1回労働審判期日までにいったん形成された労働審判委員会の心証を覆すことは、最初から十分な主張立証を行って会社に有利な心証を形成してもらうのと比べて難易度が高くなる傾向にあります。労働審判事件の3分の2を超える事件が、第2回労働審判期日までに終局しています。第2回労働審判期日で調停がまとまらない場合、第3回労働審判期日を開催しても調停がまとまる見込みが低い場合には第2回労働審判期日で労働審判が出されるのが通常です。第2回労働審判期日にかかる時間は30分~2時間程度です。
 第3回労働審判期日を開催すれば調停がまとまる可能性がそれなりにある場合は、第3回労働審判期日が開催され、さらに調停が試みられることになります。第3回労働審判期日で調停が成立しない場合には、労働審判や24条終了がなされます。労働審判手続は第3回労働審判期日までに終えるのを原則とされていることもあり、第4回労働審判期日が開催されることはほとんどありません。

労働審判の対応を弁護士に依頼する必要性

 労働審判法は、弁護士を代理人に選任することを義務付けていません。弁護士に依頼せずに代表権のある社長などが労働審判期日に出頭して対応することは理論上は可能です。
 しかし、労働審判手続では権利義務関係を踏まえて調停や労働審判が行われますので、労働問題に関する専門知識と労働裁判実務経験の豊富な弁護士でなければ対応することは困難です。労働問題に関し専門的な知識経験を有する弁護士に依頼せずに労働審判の対応をした場合、本来よりも解決金の額が高くなるなどの不利益を受けることになりかねません。また、弁護士でないと代理人になれませんので(労働審判法4条1項)、代表権のある社長等が期日に出頭しないと平取締役や人事労務担当部長等が出頭したとしても調停を成立させることはできません。
 労働審判を申し立てられた相手方の約85~90%が代理人をつけて対応している事実は、労働審判の対応を弁護士に依頼する必要性の高さを裏付けるものといえるでしょう。

「第1回労働審判期日までが勝負」

 労働審判対応のポイントを一言で言うと、「第1回労働審判期日までが勝負」です。労働審判手続では、第2回労働審判期日までに主張及び証拠書類の提出を終えることとされていますが(労働審判規則27条)、これは直ちに第2回労働審判期日までに会社の主張立証を準備すればいいということを意味しません。実際の労働審判手続では、第1回労働審判期日で証拠調べを行って心証を形成し、労働審判委員会が形成した心証に基づき直ちに調停に入ることは珍しくありません。第1回労働審判期日における調停では、第1回労働審判期日までに形成された心証に基づいて試みられることになりますので、後から主張立証しようと思っているものがあったとしても考慮してもらえません。
 第2回労働審判期日が開催された場合であっても、第1回労働審判期日で行われた証拠調べや調停を前提として証拠調べや調停が行われることに変わりありません。第1回労働審判期日終了後になされた主張立証により、第1回労働審判期日までにいったん形成された労働審判委員会の心証を覆すことは、最初から十分な主張立証を行って会社に有利な心証を形成してもらうのと比べて、難易度が高くなる傾向にあります。第1回労働審判期日までに主張立証できなかった重要な事実等があるのであれば、第1回労働審判期日終了後であっても主張立証していくべきですが、第1回労働審判期日までに主張立証を終えている場合と比較して、会社に有利な心証を形成してもらいにくくなることを肝に銘じなければなりません。労働審判事件は第1回労働審判期日までに充実した準備を行うことが勝敗の分かれ目であることが多く、まさに「第1回労働審判期日までが勝負」と言えるでしょう。
 「第1回労働審判期日までが勝負」であるとすれば、答弁書等の作成に十分な時間をかけて万全の態勢で第1回労働審判期日に臨みたいところです。業務が忙しいなどの理由から答弁書等の作成に十分な時間がかけられないような場合は、第1回労働審判期日を延期してもらいたいと考えたくなるかもしれません。しかし、第1回労働審判期日の変更は、認められにくい傾向にあります。期日の変更を認めると労使紛争を迅速に解決できなくなってしまいますし、労働審判手続では労働審判官(裁判官)と当事者双方だけでなく、労働審判員2名の日程調整もしなければならないからです。
 もっとも、会社側が最低限必要な反論準備ができなかったり、会社関係者が期日に出頭できなかったりすれば第1回労働審判期日は事実上空転してしまいます。第1回労働審判期日を当初の予定どおり開催することにこだわる意味がどれだけあるのかという疑問が生じてきます。第1回労働審判期日変更について申立人の了解が得られるのであれば、迅速解決のみを理由として第1回労働審判期日を変更しない理由にはならないでしょう。労働審判手続申立書が届いたばかりで労働審判員が選任される前であれば、労働審判員とのスケジュール調整の問題も生じません。裁判所によっては、申立人の同意などを条件として第1回労働審判期日の変更を認める運用をしていることもありますので、どうしても第1回労働審判期日の変更が必要な場合は、裁判所に事情を説明して、交渉してみるといいと思います。


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