労働審判手続

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労働審判手続の概要

  労働審判手続は、労働審判官(裁判官)1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名(労働者側1名、使用者側1名)で組織する労働審判委員会が、原則3回以内の期日で個別労働関係紛争を審理し、権利義務関係を踏まえて調停を試み、調停が成立しない場合には労働審判を行うことで労使紛争を解決しようとする手続です。
 日本全国で年間3000件を超える労働審判事件が申し立てられており、申立てから3か月にも満たない平均審理日数で約80%が解決しています。
 労働審判手続の概要については、裁判所のウェブサイトにも掲載されていますので、そちらもご確認下さい。

労働審判手続の主な特徴

 労働審判手続の主な特徴としては、次のようなものが挙げられます。
 ① 申立てから3か月にも満たない平均審理日数で約80%の紛争が解決しています。調停が成立せず訴訟に移行した場合は時間がかかりますが、労働審判手続だけであれば、退職した社員が次の就職先を見つけるまでのわずかな期間を利用して労働審判を申し立て、それなりの金額の解決金を獲得してから転職することも十分に可能です。訴訟を提起することまでは躊躇する労働者であっても、労働審判であれば申し立ててくる可能性があります。
 ② 労働審判官(裁判官)1名が、常時、期日に同席しており、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労使の労働審判員2名とともに、権利義務関係を踏まえた調停を行うため、調停内容は合理的なもの(訴訟で争った場合の判決に近いもの、社内で説明がつきやすく納得しやすいもの)となりやすくなります。
 ③ 労働審判手続で調停がまとまらなければ、たいていは調停案とほぼ同内容の労働審判が出され、労働審判に対して当事者いずれかが異議を申し立てれば自動的に訴訟に移行することになります。調停をまとめず、労働審判に異議を出せば必ず訴訟対応が必要となるため、さらに時間とお金を費やしてまで訴訟を続ける価値がある事案でなければ、調停案や労働審判の内容に多少不満があっても、労働審判手続内で話をまとめてしまった方が合理的と判断されるケースが多くなります。

労働審判手続の対象となる紛争

 労働審判手続の対象となる紛争は、「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」(個別労働関係民事紛争)です。労働者と事業主との間の解雇に関する紛争、未払残業代に関する紛争、セクハラやパワハラに関する紛争等がこれに当たります。
 労働組合と使用者との間の集団的労使紛争は、個別労働関係民事紛争ではありませんので、労働審判手続の対象ではありません。組合員個々人と事業主との間の労使紛争は、労働審判手続の対象になります。
 また、「民事に関する紛争」でなければならないため、行政事件の対象となる紛争は、労働審判手続の対象とはなりません。
 募集・採用等の労働契約成立前の紛争は労働審判手続の対象になりません。採用内定に至っている場合は、始期付解約権留保付労働契約が成立していると主張されるのが通常ですから、労働審判手続の対象になると考えられます。労働契約締結の有無や労働者性に関する紛争も労働審判手続の対象になると考えられます。

労働審判委員会

 労働審判委員会は、労働審判官(裁判官)1名と労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名(労働者側1名、使用者側1名)で構成されます。
 労働審判員は、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者の中から最高裁判所が任命し、労働審判委員会の一員として、事件関係書類を閲覧し、労働審判手続の期日に出席し、当事者の話を聴き、争点整理や証拠調べを行い、調停成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み、調停成立に至らない場合は労働審判を行うなど、労働審判事件の審理全般に関与します。労働審判員は非常勤の裁判所職員であり、出身母体にかかわらず中立かつ公正な立場において職務を行うこととされています。現場の実情を踏まえた労働審判員の説得力のある意見がより妥当な結論を導くこともあり、労働審判員は労働審判手続の中で欠くことのできない重要な役割を担っていると評価することができます。
 労働審判手続を行う権限は労働審判委員会にあります。民事調停の場合と異なり、裁判官(労働審判官)だけで調停を行うことはできません。
 労働審判委員会の決議は過半数(多数決)で決せられ、労働審判委員会の評議は秘密とされています。

労働審判事件の新受件数・平均審理日数・期日実施回数・終局事由・解決率

 労働審判事件の年間新受件数は、日本全国で3300件~3900件程度(東京だけで1000件~1200件程度)で推移しています。
 労働審判事件の3分の2程度が申立てから3か月以内に終結しています。労働審判申立てから終結までの平均審理日数は3か月弱です(2020年は新型コロナ流行等の影響で平均審理日数が100日を超えましたが、一時的な現象と考えられます。)。
 第1回期日までに3分の1近い労働審判事件が終結しており、第2回期日までに合計3分の2を超える労働審判事件が終結しています。
 労働審判事件の終局事由は、調停成立が70%強、労働審判が14~16%程度、取下げが7~9%程度、24条終了が4~5%程度、却下・移送等が1%程度です。労働審判に対して異議が申し立てられるのは60~70%程度、異議が申し立てられず労働審判がそのまま確定するのは30~40%程度です。調停が成立した件数に、労働審判で異議が申し立てられなかった件数、手続外で和解が成立するなどして労働審判手続が取り下げられた推定件数を加えると、労働審判事件の解決率は80%程度と推定することができます。

労働審判手続を利用した理由・労働審判手続の結果についての満足度

 東京大学社会科学研究所の労働審判制度利用者調査(第1回)によると、労働者が労働審判を利用した理由として「あてはまる」との回答が多かったものは、次のとおりです。
 ① 公正な解決を得たかった(97.1%)
 ② 白黒をはっきりさせたかった(95.4%)
 ③ 事実関係をはっきりさせたかった(93.8%)
 ④ 自分の権利を実現し(あるいは守り)たかった(91.2%)
 ⑤ 強制力のある解決を得たかった(90.9%)
 他方、使用者側で「あてはまる」との回答が多かったものは、以下のとおりです。
 ① 公正な解決を得たかった(91.3%)
 ② 事実関係をはっきりさせたかった(86.9%)
 ③ 白黒をはっきりさせたかった(84.6%)
 ④ 会社・団体の権利を実現し(あるいは守り)たかった(78.6%)
 ⑤ 相手側(労働者側)に申し立てられたので仕方なかった(73.2%)
 使用者側が「あてはまる」と考える項目が労働者側よりも少ないのは、使用者側は労働審判を積極的に申し立てた側ではなく、労働審判を申し立てられた側であることがほとんどであることによるものと考えられます。「⑤ 相手側(労働者側)に申し立てられたので仕方なかった」を「あてはまる」と回答した使用者が73.2%にも上るのも無理はありません。それでもなお、「公正な解決を得たかった」を「あてはまる」と回答した使用者が91.3%、「事実関係をはっきりさせたかった」を「あてはまる」と回答した使用者が86.9%、「白黒をはっきりさせたかった」を「あてはまる」と回答した使用者が84.6%にも上っており、使用者側にも労働審判手続を積極的に評価する回答が多いと評価することができるでしょう。
 東京大学社会科学研究所の労働審判制度利用者調査(第1回)によると、労働審判手続の結果について、労働者側は59.5%が「満足している」と回答しているのに対し、使用者側で「満足している」と回答したのは35.5%のみで、逆に52.5%が「満足していない」と回答しています。労働審判手続の結果について、過半数の使用者が「満足していない」と回答していることは注目に値します。「満足していない」結果とならないようにするためには、申し立てられた労働審判事件の対応を万全に行うとともに、普段から経営者側弁護士に相談するなどして労務管理を行うことが重要といえるでしょう。

 


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