労働問題641 1年単位の変形労働時間制とはどのようなものですか?

1年単位の変形労働時間制とは
 1年単位の変形労働時間制(労基法32条の4)は、繁忙期、閑散期が季節などによって生じるような場合に対応した長期の変形労働時間制です。たとえば、衣料品の製造・販売をしている会社で、1年のうち、夏季と年末年始が特に忙しいような業種などが考えられます。
 1年単位の変形労働時間制を導入するためには、労使協定の締結(労基法32条の4第1項)及び就業規則(従業員数が10人未満の場合は就業規則に準ずるもの)の定めが必要になります。
 もっとも、1年単位の変形労働時間制は、労働日および労働時間を労使協定において具体的に定めなければならないため、1日8時間、1週40時間を超えて労働させる日や週の労働時間を予め定めておくことが困難な業務、労使協定で定めた時間が頻繁に変更される業務については、1年単位の変形労働時間制を適用する余地は無いとされています(平成6年1月4日基発1号、平成11年3月31日基発168号)。

労使協定
 労使協定では、次の事項を定めます。
1 対象者の範囲
 変形労働時間制で働かせる対象者を特定させる必要があります(労基法32条4第1項1号)。
2 具体的な変形期間
 変形労働時間制の対象となる期間を定める必要があります(労基法32条4第1項2号)。
3 対象期間
 対象期間のうち、特に繁忙となる期間がある場合は、その期間を「特定期間」として定める必要がありますが、繁忙となる期間が存在しない場合には、定める必要はありません。
 また、対象期間は、1か月以上の一定の期間に区分することも可能です。
4 労働日および労働時間
 対象期間の労働日および労働時間を具体的に定める必要があります。ただし、対象期間を一か月以上の一定の期間に区分している場合は、最初の区分期間のみ労働日および労働時間を特定し、その後の区分期間については期間ごとの労働日数および総労働時間を定めておけば足りるとされています。
 このように対象期間を区分した場合、区分期間の始まる30日前までに労使協定の労働者側当事者の同意を得て、当該区分期間における所定労働日および所定労働時間を書面で定めていなければなりません(労基法32条の4第2項、労規則12条の4第2項)。
5 法定労働時間の総枠内で定める
 対象期間における各労働日の所定労働時間は、「40×変形期間の歴日数÷7」の計算方法によって算出した法定労働時間の総枠内に収まっていなければなりません。特例により週法定労働時間が44時間の事業場であっても、この総枠内に収まっている必要があります(労規則25条の2第4項)。
 具体的な法定労働時間の総枠は、次のとおりです。
対象期間     法定労働時間の総枠
1年(365日) 2085.7時間
1年(366日) 2091.4時間
6か月(183日) 1045.7時間
4か月(122日) 697.1時間
3か月(92日) 525.7時間
 1日および1週間の労働時間の限度については、対象期間が3か月以内の場合は、1日10時間、1週52時間が限度となり、3か月を超える場合は、次の要件を満たす必要があります(労規則12条の4第4項)。
①対象期間を通じて、労働時間の合計が48時間を超える週が連続する場合、その連続は3週間を限度とする。
②変形期間の初日から3か月ごとに区分した各期間において、その労働時間が48時間を超える週の初日の数が3以下であること。(最後に3か月未満の期間が生じるときは、その期間を含む。)
 また、連続労働日については、6日を限度としています。ただし、上記3の対象期間を定めている場合は、1週間に1日の休日を確保できる日数としているため、連続勤務は12日まで可能になります。
6 有効期間
 労使協定では、有効期間についても定める必要があります。

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