問題社員65 虚言癖がある。

動画解説

 

1. 虚言癖がある社員が経営判断に与える深刻な影響

 社員が事実と異なることを平然と口にする、都合の悪いことを隠すために話を作る、確認すると話が二転三転する。このような虚言癖がある社員の存在は、会社経営者にとって想像以上に深刻な問題を引き起こします。

 まず最大の問題は、経営判断の前提となる情報の信頼性が崩れることです。会社経営は、現場から上がってくる報告や数字、状況説明をもとに意思決定を行います。その情報が虚偽であった場合、判断そのものが誤った方向に導かれ、結果として会社に損害が生じるおそれがあります。

 また、虚言癖がある社員が一人いるだけで、職場全体の空気は大きく変わります。「あの人の話は信用できない」「また嘘をついているのではないか」といった疑念が広がると、社員同士の信頼関係が崩れ、無用な確認作業や疑心暗鬼が常態化します。これは生産性の低下を招くだけでなく、職場の人間関係を悪化させる要因になります。

 さらに厄介なのは、虚言癖がある社員ほど、自分をよく見せるために成果を誇張したり、責任逃れのために他人のせいにしたりする傾向がある点です。このような行動が放置されると、真面目に働いている社員ほど不公平感を抱き、「正直者が損をする会社だ」という認識が広がっていきます。

 会社経営者として特に注意すべきなのは、この問題を「性格の問題」「少し話を盛る癖があるだけ」と軽く捉えてしまうことです。虚言癖は単なる癖ではなく、会社の意思決定や組織の信頼基盤を揺るがすリスク要因です。初期段階で適切に向き合わなければ、後になってより大きなトラブルとして表面化する可能性があります。

 したがって、虚言癖がある社員の問題は、個人的な好き嫌いや印象の問題ではありません。会社経営者として、「この問題が経営にどのような影響を及ぼしているのか」という視点で捉えることが、適切な対応を考えるための出発点になります。

2. 「嘘をつく社員」を放置してはいけない理由

 虚言癖がある社員について、「多少話を盛るだけだ」「そのうち周囲が見抜くから大丈夫だ」と考え、深く介入せずに放置してしまう会社経営者は少なくありません。しかし、この対応は結果として、会社にとって大きなリスクを抱え込むことになります。

 まず問題になるのは、嘘をつく行為が黙認されているというメッセージが社内に伝わってしまう点です。誰も注意せず、評価も下がらない状態が続けば、「多少嘘をついても問題にならない」「正直に報告するより、都合のいい話をした方が得だ」という誤った価値観が職場に広がります。これは組織として非常に危険な兆候です。

 また、虚言癖がある社員を放置すると、周囲の社員が無意識のうちにフォローや確認作業を増やすようになります。「本当かどうか分からないから自分で確認しよう」「後でトラブルにならないように証拠を残しておこう」といった行動が常態化し、本来不要な業務負担が発生します。これは目に見えにくい形で、生産性を確実に下げていきます。

 さらに深刻なのは、トラブルが起きたときに責任の所在が不明確になることです。虚偽の報告が原因で問題が生じた場合でも、話が二転三転し、事実関係の整理に時間と労力を取られます。その間に、取るべき対応が遅れ、被害が拡大することも珍しくありません。

 会社経営者として注意すべきなのは、「証拠がないから何もできない」と考えてしまうことです。確かに、嘘を立証するのは簡単ではありません。しかし、「話が食い違っている」「説明が一貫しない」「報告内容と結果が合っていない」といった兆候が積み重なっていれば、放置する理由にはなりません。

 虚言癖がある社員の問題は、時間が経てば自然に解決するものではありません。むしろ、放置すればするほど本人は「このやり方で通用する」と学習し、行動が固定化していきます。その結果、後になって強い対応を取ろうとすると、「今まで問題にされなかったのに、なぜ急に責められるのか」という反発を招きやすくなります。

 だからこそ、会社経営者としては、「小さな違和感の段階」で向き合うことが重要です。虚言癖を見過ごさず、事実確認を徹底し、必要に応じて指導や対応を行う姿勢を示すことが、会社を守ることにつながります。放置は中立ではなく、リスクを拡大させる選択であることを理解しておく必要があります。

3. 虚言癖の原因を切り分ける重要性

 虚言癖がある社員への対応で、会社経営者がまず行うべきなのは、「なぜ嘘をつくのか」という原因を切り分けることです。虚言癖と一言で言っても、その背景や動機は一様ではなく、原因を誤って捉えると対応を大きく間違えることになります。

 実務上、虚言癖の原因は大きく分けて複数のパターンに分類できます。たとえば、自分を優秀に見せたいという承認欲求から話を誇張するケース、ミスや責任追及を恐れて事実を歪めるケース、業務能力が不足しており、その穴を隠すために嘘を重ねるケースなどです。表面上は同じ「嘘」でも、背景は全く異なります。

 ここを切り分けずに、「嘘をつく社員は信用できない」「性格の問題だ」と一括りにしてしまうと、指導の方向性が定まりません。注意指導で改善する社員もいれば、配置や業務内容を見直さなければ改善しない社員もいますし、懲戒処分を検討すべきケースもあります。

 会社経営者として特に注意したいのは、意図的な虚偽と、防衛的な虚偽を混同しないことです。悪意をもって会社や他人を欺こうとしている場合と、失敗を恐れて咄嗟に嘘をついてしまう場合とでは、評価も対応も変わります。後者を前者と同じ扱いにすると、不必要に関係を悪化させるおそれがあります。

 原因を切り分けるためには、単発の発言だけを見るのではなく、行動の傾向や一貫性を観察することが重要です。話が毎回変わるのか、特定の場面でだけ虚偽が出るのか、誰に対して嘘をつくのかといった点を整理すると、背景が見えやすくなります。

 また、原因を切り分ける作業は、「本人を理解するため」だけではありません。後に注意指導や懲戒処分、配置転換、最終的な雇用判断を行う際に、「会社として合理的な判断をした」と説明できる基盤を作る意味もあります。原因を整理せずに行った対応は、後から正当化しにくくなります。

 虚言癖がある社員への対応は、感情的になりやすいテーマです。しかし、会社経営者としては一歩引き、なぜその行動が起きているのかを冷静に切り分けることが不可欠です。この整理ができて初めて、次に取るべき具体的な対応が見えてきます。

4. モラルが低く意図的に嘘をつく社員への基本対応

 虚言癖がある社員の中には、単なる防衛反応や未熟さではなく、自分の利益のために意図的に嘘をついているケースが存在します。このタイプの社員については、理解や教育を重ねれば改善するという前提で対応するのは、会社経営者として非常に危険です。

 たとえば、自分のミスを他人のせいにする、実績を水増しして報告する、不利な事実を隠して上司や経営者を誤導する、といった行為が繰り返されている場合、それはモラルの問題として評価すべき段階に入っています。このような行動は、本人の能力不足というよりも、価値観や倫理観の問題であることが多いからです。

 会社経営者としてまず取るべき対応は、事実と評価を切り分けて整理することです。「嘘をついた」という印象論ではなく、「いつ、何について、どのような事実と異なる説明があったのか」を客観的に把握します。感情的に問い詰めるのではなく、事実確認を積み重ねることが重要です。

 次に必要なのは、曖昧な態度を取らないことです。意図的な虚偽が疑われる場合、「次から気をつけてください」「誤解だったかもしれませんね」といった曖昧な指導では、本人に「この程度なら大丈夫だ」という誤った学習をさせてしまいます。会社として、虚偽の報告や説明は許容されない行為であることを、明確に示す必要があります。

 この段階では、教育指導よりも注意指導として位置づけることが適切です。「正直に報告する義務がある」「事実と異なる説明は評価や処分の対象になり得る」という点を、具体的に伝えます。人格を否定する必要はありませんが、行為の問題性については明確に指摘すべきです。

 また、意図的に嘘をつく社員には、重要な判断材料や単独で完結する業務を任せないという対応も検討すべきです。虚偽の情報が混入するリスクを前提に、業務の設計や報告ルートを見直すことは、会社を守るための合理的な措置です。

 モラルが低く意図的に嘘をつく社員への対応は、「分かってもらう」ことを目的にしてはいけません。会社として守るべきルールと限界を示すことが目的です。この線を曖昧にしたまま関係を続けると、後になってより大きなトラブルとして表面化する可能性が高くなります。

5. 注意指導・懲戒処分を行う際の実務上のポイント

 虚言癖がある社員に対して、注意指導や懲戒処分を検討する場面では、会社経営者として特に慎重な実務対応が求められます。対応を誤ると、「感情的に処分された」「根拠なく疑われた」と主張され、かえって会社側が不利な立場に置かれるおそれがあります。

 まず大前提として、虚言癖そのものを理由に処分を行うのではなく、具体的な行為を問題として整理する必要があります。「嘘をつく性格だから」ではなく、「○月○日の報告内容が事実と異なっていた」「確認を求めたにもかかわらず虚偽の説明を行った」といった形で、行為と事実を明確に切り分けます。

 注意指導を行う際には、本人の言い分を一度は聞く姿勢を持つことが重要です。もっとも、ここで議論を深めすぎる必要はありません。重要なのは、「事実と異なる説明があったこと」「会社として正確な報告を求めていること」「今後も同様の行為があれば評価や処分の対象になること」を、冷静かつ明確に伝えることです。

 懲戒処分を検討する場合には、特に慎重さが求められます。単発の虚偽だけでいきなり重い処分を行うのはリスクが高く、原則としては、注意指導を重ねても改善が見られない場合や、虚偽の内容が業務に重大な影響を与えた場合に限られます。この段階では、「繰り返し」「影響の大きさ」が重要な判断要素になります。

 また、処分を行う場合には、就業規則との整合性を必ず確認しておく必要があります。虚偽報告や不誠実な行為が懲戒事由として位置づけられているか、処分の種類や手続が規定どおりかといった点を押さえずに進めると、後に無効と判断されるリスクがあります。

 実務上、注意すべきなのは、「証拠が完全に揃っていないから何もしない」という判断です。虚言癖の問題は、書面の証拠が残りにくいことも多く、完全な立証を待っているうちに問題が拡大するケースがあります。事実関係を整理し、合理的に説明できる範囲で段階的に対応することが現実的です。

 注意指導や懲戒処分は、問題を終わらせるための手段ではなく、会社としての姿勢と限界を示すためのものです。この対応を丁寧に積み重ねておくことで、後に配置転換や雇用判断を検討する際にも、会社側の判断が合理的であったと説明しやすくなります。

6. 虚言癖がある社員を配置すべきでない業務とは

 虚言癖がある社員への対応を考える際、会社経営者として必ず検討すべきなのが、どの業務を任せるべきでないかという視点です。教育や注意指導と並行して、この判断を誤らないことが、会社を守るうえで極めて重要になります。

 まず、虚言癖がある社員を配置すべきでない典型的な業務は、報告内容の正確性が前提となる業務です。たとえば、進捗報告、数値管理、トラブル対応の報告など、報告された内容をもとに次の判断が行われる業務では、虚偽が混入するリスクそのものが致命的になります。

 また、顧客対応や社外との交渉業務も慎重に考える必要があります。事実と異なる説明をした場合、会社の信用を損なうだけでなく、後から訂正が難しいトラブルに発展する可能性があります。本人に悪意がなかったとしても、「説明が食い違っている」「言っていることが違う」という評価が広がれば、会社全体の信頼問題に直結します。

 さらに、裁量が大きく、一人で完結する業務も注意が必要です。虚言癖がある社員に単独判断を任せると、問題が表面化したときにはすでに手遅れになっているケースが少なくありません。チェック機能が働かない環境は、虚偽が積み重なりやすい構造を作ってしまいます。

 一方で、すべての業務を一律に外す必要があるわけではありません。虚言癖がある社員であっても、作業内容が明確で、成果物が客観的に確認できる業務や、複数人で進める業務であれば、リスクを抑えながら関与させることは可能です。重要なのは、「嘘が入り込む余地がどこにあるか」を意識して業務を設計することです。

 会社経営者として注意すべきなのは、「信じるか信じないか」という感情論で配置を決めてしまうことです。信頼関係の問題として捉えるのではなく、業務リスクの問題として冷静に整理することが重要になります。信頼できないから外すのではなく、虚偽が混入すると経営上の影響が大きい業務から外す、という整理です。

 虚言癖がある社員をどの業務に配置するかは、その社員の評価を決める話ではありません。会社としてどのリスクを許容し、どのリスクを排除するかという経営判断です。この判断を曖昧にせず、業務内容とリスクの関係を整理することが、次の「原因別対応」や「最終判断」につながっていきます。

7. 能力不足が原因で虚言癖が生じるケースの考え方

 虚言癖がある社員の中には、モラルの問題というよりも、業務能力の不足が原因で嘘を重ねてしまっているケースがあります。このタイプを見誤ると、必要以上に強い対応を取ってしまい、問題をこじらせることになりかねません。

 典型的なのは、業務の進捗が遅れているにもかかわらず「順調です」と報告してしまう、理解できていない指示について「分かりました」と答えてしまうといったケースです。本人としては、その場をやり過ごしたい、無能だと思われたくないという防衛的な心理が働いています。

 このタイプの社員は、最初から嘘をつくつもりで行動しているわけではありません。できていない現実を正直に伝えることへの恐怖や、評価が下がることへの不安が先に立ち、結果として虚偽の説明をしてしまうのです。そのため、意図的・悪質な虚言癖と同列に扱うのは適切ではありません。

 会社経営者として重要なのは、**「なぜ正直に言えないのか」**という点に目を向けることです。業務の難易度が高すぎないか、フォロー体制が不足していないか、失敗を過度に責める文化になっていないかといった点を、一度冷静に振り返る必要があります。

 このタイプへの対応では、「嘘をつくな」とだけ指導しても改善は期待できません。それよりも、「できていないことを報告しても不利益は生じない」「分からないと言ってよい」というメッセージを、具体的な行動で示すことが重要です。たとえば、正直な報告をした場合には評価を下げない、フォローに回るといった対応を積み重ねることです。

 また、能力不足が明らかな場合には、業務内容や役割を見直すことも検討すべきです。できない業務を任せ続ければ、本人は追い込まれ、虚偽の説明に頼る状況から抜け出せません。教育や業務調整によって、正直に報告できる環境を作ることが、結果的に虚言癖の改善につながる場合もあります。

 会社経営者として注意すべきなのは、「嘘をついた」という結果だけを見て処分を考えることです。能力不足が原因であるにもかかわらず、モラル違反として扱ってしまうと、本人はさらに萎縮し、虚偽が深刻化する可能性があります。

 能力不足が原因で虚言癖が生じているケースでは、評価・教育・業務設計の問題として整理することが、最も現実的でリスクの少ない対応です。この切り分けができるかどうかが、次に進む判断の質を大きく左右します。

8. 教育指導で対応すべき社員と限界の見極め

 虚言癖がある社員への対応を続けていく中で、会社経営者が必ず直面するのが、この社員は教育指導で改善が見込めるのか、それとも限界に来ているのかという判断です。この見極めを誤ると、問題を長期化させ、周囲の社員にも悪影響を及ぼします。

 教育指導で対応すべき社員の特徴としては、虚偽の内容が比較的軽微であること、指摘された際に言い訳ではなく反省や戸惑いを示すこと、そして一定期間、正直な報告をしようとする姿勢が見られることが挙げられます。このような社員は、「嘘をついている自覚」があり、行動を修正しようとする余地が残っています。

 この場合、会社経営者として重要なのは、抽象的な精神論ではなく、「どのような報告が求められているのか」「どこまで正直に言えばよいのか」を具体的に示すことです。正確な報告をした際には、過度な叱責や不利益を与えないという姿勢を一貫して示すことで、虚偽に頼らずに済む環境を作ることができます。

 一方で、教育指導の限界が見えてくるケースもあります。注意指導を重ねても説明が一貫せず、指摘されるたびに話を変える、他人のせいにする、虚偽が巧妙化していくといった傾向が見られる場合、改善の可能性は低いと評価せざるを得ません。この段階で「もう少し様子を見よう」と対応を先延ばしにすることは、会社にとってリスクになります。

 会社経営者として意識すべきなのは、「教育した期間」と「改善の兆し」をセットで評価することです。一定期間、明確な指導を行い、それでも行動に変化が見られないのであれば、それは教育の問題ではなく、適性や価値観の問題として整理すべき局面に入っています。

 また、この見極めは本人のためでもあります。改善が見込めない状態で教育を続けることは、本人を追い詰め、結果として虚偽をさらに重ねさせる原因にもなります。限界を認識したうえで、次の対応に進むことは、冷たい判断ではなく、現実的な経営判断です。

 教育指導で対応すべきか、限界を迎えているかを見極めることは簡単ではありません。しかし、この判断を曖昧にしたまま問題を抱え続けることが、最も大きなリスクになります。どこまでが教育で、どこからが次の段階なのかを意識的に区切ることが、会社経営者には求められます。

9. 配置転換でも対応できない場合の最終判断

 教育指導を行い、業務内容を調整し、配置転換まで検討したにもかかわらず、虚言癖による問題が解消しない場合、会社経営者としては雇用をどう整理するかという最終判断に向き合う必要があります。この段階では、「何とかならないか」という期待よりも、経営としての合理性が問われます。

 まず確認すべきなのは、「虚言癖があること」自体ではなく、その結果として業務運営にどの程度の支障が出ているかです。正確な報告が前提となる業務が回らない、周囲が常に確認やフォローに追われている、信頼関係が崩れ組織として機能しなくなっている。このような状態が継続しているのであれば、配置や工夫で吸収できる限界を超えていると評価せざるを得ません。

 この局面で重要なのは、「ここまで会社として対応を尽くした」という経過を整理できているかどうかです。教育指導を行った事実、注意指導を重ねた経緯、配置転換や業務調整を試みた内容が整理されていなければ、どのような結論を出しても、後から正当性を説明することが難しくなります。

 実務上は、まず退職勧奨という形で話を進めることが現実的な選択肢になります。ただし、「嘘をつくから辞めてもらう」という伝え方は避けるべきです。「会社としてこれ以上任せられる業務がない」「適性のある職務を用意できない」という整理で、冷静に話を進める必要があります。

 普通解雇を検討する場合は、さらに慎重さが求められます。虚言癖を理由とする解雇は、判断を誤ると無効と評価されるリスクが高く、この段階では必ず弁護士の助言を受けながら進めるべきです。独断での判断は、会社にとって大きな負担となりかねません。

 会社経営者として大切なのは、「我慢し続けること」が最善ではないと理解することです。問題を先送りすれば、周囲の社員の不満は蓄積し、組織全体の信頼関係がさらに損なわれます。段階的な対応を尽くしたうえでの判断であれば、それは冷酷な決断ではなく、経営判断として合理性を持ちます。

 配置転換でも対応できない場合の判断は、非常に重く、精神的な負担も大きいものです。しかし、会社を守り、他の社員を守るという視点を忘れず、現実を直視した判断を行うことが、会社経営者に求められる最終段階の対応と言えるでしょう。

10. 虚言癖問題を経営者だけで抱え込まないという選択

 虚言癖がある社員への対応は、会社経営者にとって非常に消耗の大きい問題です。事実確認、指導、配置調整、周囲への配慮など、判断を重ねるほど負担は大きくなります。そのため、この問題を経営者一人で抱え込まないという選択が、実務上きわめて重要になります。

 まず認識しておくべきなのは、虚言癖の問題は「誰が対応しても簡単に解決する類の問題ではない」という点です。丁寧に向き合っても改善しないケースは少なくなく、それは経営者の力量不足を意味するものではありません。構造的に難しい問題であるという前提に立つことが必要です。

 会社経営者が一人で判断を続けると、「まだ我慢すべきか」「もう限界なのではないか」といった迷いが生じやすくなります。この迷いが長引くほど、対応は遅れ、周囲の社員の不満や不信感が積み重なっていきます。結果として、問題が拡大し、より厳しい選択を迫られることにもなりかねません。

 そのため、虚言癖の問題が一定期間続いている場合には、早い段階で第三者の視点を取り入れることが有効です。社内であれば信頼できる幹部や管理職、社外であれば顧問弁護士などに相談し、「会社としての対応が合理的か」を客観的に確認することが、判断のブレを防ぎます。

 特に、注意指導や懲戒処分、退職勧奨、解雇といった判断が視野に入る段階では、専門家の助言を受けることは不可欠です。虚言癖というテーマは、評価や感情が絡みやすく、後から紛争になりやすい分野でもあります。事前に整理しておくことで、会社としてのリスクを大きく下げることができます。

 また、経営者が一人で抱え込まないという姿勢は、周囲の社員にとっても安心材料になります。「会社はきちんと向き合っている」「独断で処理しているわけではない」という認識が広がれば、不満や不信感の拡大を防ぐことにもつながります。

 虚言癖がある社員への対応は、最終的に厳しい判断を伴うこともあります。しかし、それは経営者が冷酷だからではなく、会社を守り、組織全体を健全に保つための判断です。一人で抱え込まず、必要な支援や助言を受けながら進めることが、結果として最も安定した解決につながります。

 問題社員対応は、孤独な戦いになりがちです。だからこそ、虚言癖の問題についても、「経営者一人で背負わない」という選択を、意識的に取ることが重要だと言えるでしょう。

 


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