問題社員63 会議に集中しない。

動画解説

 

1. 会議に集中しない社員がもたらす経営上の問題

 会議中に居眠りをしたり、読書やネットショッピングなど会議と無関係な行動を取る社員がいると、会社経営者として強い違和感を覚えるはずです。単に「態度が悪い」という問題にとどまらず、会社全体の意思決定や組織運営に悪影響を及ぼす点が、この問題の本質です。

 会議は、情報共有や意思決定、方向性の確認など、会社経営にとって重要な機能を担っています。その場に出席していながら集中していない社員がいるということは、本来期待されている役割を果たしていないことを意味します。経営者の立場からすれば、「なぜその人を出席させているのか」という点自体が問われる状況です。

 また、こうした行動は会議の雰囲気を著しく悪化させます。一人がだらけた態度を取ることで、他の出席者の緊張感も緩み、「この会議は真剣に参加しなくてもいいのではないか」という空気が生まれやすくなります。結果として、会議の生産性が下がり、時間だけが浪費されることになります。

 さらに厄介なのは、このような状況を放置すると、「会議中に何をしていても問題にならない」という誤ったメッセージが社内に広がる点です。会議の秩序が崩れれば、会社としての統制や意思決定の質にも影響が及びかねません。

 したがって、会議に集中しない社員の問題は、単なるマナーや姿勢の話ではなく、会社経営者が会議という場をどう位置づけ、どう統制するかという経営課題として捉える必要があります。この認識を持つことが、適切な対処を考える出発点になります。

2. 会議に出席させる前に確認すべき「役割」の有無

 会議中に集中しない社員がいる場合、会社経営者として真っ先に確認すべきなのは、その社員に会議でどのような役割を期待しているのかという点です。多くのケースで問題の根本にあるのは、社員本人の態度以前に、役割が曖昧なまま出席させているという構造です。

 会議に出席する以上、何らかの役割や期待があるはずです。特定のテーマについて意見を求めたいのか、専門知識を前提とした助言を期待しているのか、あるいは決定事項を持ち帰って実務に反映させる立場なのか。この点が整理されていないと、本人としては「呼ばれただけ」「特にやることがない」という認識になりがちです。

 役割が明確でなければ、集中力が落ちるのはある意味当然です。自分が発言しなくても会議は進む、自分がいなくても支障はないと感じていれば、気が緩み、居眠りや私的行為に流れてしまうこともあります。これは本人の資質の問題というより、会議設計の問題と捉えるべきでしょう。

 会社経営者として重要なのは、「察して動いてほしい」「空気を読んで貢献してほしい」といった期待をしないことです。希望的観測に委ねるのではなく、「あなたにはこの点について意見を出してほしい」「このテーマについて説明をお願いしたい」と、具体的に伝えることが必要です。

 特に、専門性や経験を理由に出席させている場合には、その点を本人に明確に伝えることで、発言のハードルが下がり、会議への関与度も高まります。役割を理解していれば、無関係な行動を取る余地は自然と減っていきます。

 逆に言えば、どうしても役割を説明できないのであれば、その社員を会議に出席させる必要性自体を見直すべきです。役割のない出席は、集中力低下や会議の形骸化を招くだけで、会社にとって大きなメリットはありません。

 会議に集中しない問題への対処は、注意や叱責から始めるものではありません。出席させる前に役割を明確にすること、これが最も基本的で、かつ効果の高い予防策だと言えます。

3. 出席人数が多すぎる会議が生む集中力低下

 会議に集中しない社員が目立つ場合、その社員個人の問題として処理する前に、会議の出席人数が適切かどうかを会社経営者として一度見直す必要があります。実務上、出席者が多すぎる会議ほど、集中力が低下しやすい傾向があります。

 出席人数が増えると、一人ひとりの発言機会は自然と減ります。結果として、「自分は聞いているだけでいい」「特に意見を求められていない」という空気が生まれやすくなります。この状態では、会議への当事者意識が薄れ、居眠りや私的行為に流れてしまうのも無理はありません。

 特に、「念のため出席」「立場上とりあえず呼んでいる」といった理由で参加している社員は、役割が不明確になりがちです。本人としては、会議に真剣に関与しなくても問題にならないと感じてしまい、集中力を維持する動機が弱くなります。

 会社経営者として意識すべきなのは、「会議は多くの人を集めれば良いものではない」という点です。本当に意思決定や議論に必要な人だけを集めているか、その社員がいなければ会議が成り立たないのか、という視点で出席者を精査することが重要です。

 もちろん、情報共有を目的として広めに参加させる会議も存在します。しかしその場合でも、「聞いているだけでよい」という前提を明確にしたり、会議の雰囲気を乱す行動は慎むべきであることを事前に伝えるなどの配慮が必要です。目的を整理しないまま人数だけが増えると、集中しない社員が増える土壌を自ら作ってしまうことになります。

 会議に集中しない問題は、社員の姿勢だけでなく、会議の設計そのものが原因になっているケースも少なくありません。出席人数を絞り込み、「なぜこの人がここにいるのか」を説明できる状態を作ることが、集中力低下を防ぐための基本的な対策となります。

4. 会議中の居眠り・私的行為をどう評価すべきか

 会議中の居眠りや読書、ネットショッピングといった私的行為を目にしたとき、会社経営者としては強い不快感や疑問を覚えるのが自然です。ただし、この問題を感情的に捉えるのではなく、会社としてどう評価すべき行為なのかを冷静に整理することが重要です。

 まず前提として、会議は業務時間中の正式な業務です。その場で居眠りをしたり、会議と無関係な行為を行うことは、原則として職務専念義務に反する行動だと評価され得ます。「会議に出席しているだけで仕事をしている」という考え方は、会社として採るべきではありません。

 もっとも、すべての居眠りや私的行為を同列に扱うべきではありません。一時的な体調不良や、会議の性質上ほとんど発言機会がない場合など、背景事情によって評価が変わるケースもあります。重要なのは、「なぜその行為が起きているのか」を切り分けて考えることです。

 たとえば、疲労が重なり一時的に集中力を欠いてしまったのであれば、直ちに厳しい評価を下すよりも、業務配分や会議の運営方法を見直す余地があります。一方で、恒常的に読書やネットショッピングを行っているのであれば、「会議に集中する必要がない」「多少やっても問題にならない」と本人が認識している可能性が高いと言えます。

 このような行動を放置すると、「会議中に何をしていても構わない」という誤った認識が広がり、会議の秩序そのものが崩れていきます。会社経営者としては、会議中の私的行為は原則として許容されない行為であるという姿勢を、明確に持つ必要があります。

 ただし、評価の仕方を誤ると、「些細なことで過剰に叱責された」と受け取られ、無用な反発を招くこともあります。行為そのものを問題視するだけでなく、「その社員に何を期待しているのか」「会議にどう関わってほしいのか」をセットで伝えることが重要です。

 会議中の居眠りや私的行為は、単なるマナー違反ではなく、会議の位置づけや役割設計の不備が表面化したサインでもあります。個人の態度だけに矮小化せず、会社としてどう評価し、どう是正するかを整理することが、次の対応につながります。

5. 「容認できる行為」と「看過できない行為」の線引き

 会議中に集中しない社員への対応を考える際、会社経営者として必ず整理しておくべきなのが、どこまでを容認し、どこからを看過できないと判断するのかという線引きです。この線引きが曖昧なままだと、対応が場当たり的になり、社内の混乱を招きます。

 まず基本的な考え方として、会議は業務の一環であり、会議と無関係な行為は原則として望ましくありません。したがって、「読書」「ネットショッピング」「明らかに会議と関係のない作業」などは、基本的には容認すべき行為ではないと整理するのが妥当です。

 一方で、すべてを一律に厳しく取り締まることが、必ずしも合理的とは限りません。たとえば、情報共有が中心で発言を求めていない会議において、資料を確認している、関連情報を調べているといった行為まで問題視する必要はないでしょう。重要なのは、「会議の目的と照らして、業務上合理性があるかどうか」です。

 看過できない行為の典型は、会議の雰囲気や秩序を明確に乱す行動です。居眠りをして周囲にだらけた印象を与える、私的行為が目立ち他の出席者の集中を妨げるといった場合には、本人の役割の有無にかかわらず、会社として是正すべき問題になります。

 ここで注意すべきなのは、「本人に役割がないから仕方ない」と放置しないことです。役割が限定的であったとしても、会議の秩序を乱してよい理由にはなりません。役割が軽いのであればなおさら、「最低限守るべき態度」は明確にしておく必要があります。

 会社経営者としては、「この会議では何が求められているのか」「どの程度の関与を期待しているのか」を前提に、容認範囲を整理しておくことが重要です。そのうえで、明らかに線を越えた行為については、個別に声をかけ、是正を求める姿勢を示すべきです。

 線引きをせずに我慢を続けると、「何も言われない=問題ない」という誤った認識が定着します。逆に、基準を明確にしておけば、注意や指導も冷静かつ合理的に行うことができます。会議に集中しない問題を長期化させないためには、この線引きを会社経営者自身が意識的に行うことが不可欠です。

6. 会議中に集中しない社員へのその場での対応方法

 会議中に居眠りをしている、明らかに私的な作業をしている社員を目にしたとき、会社経営者として悩ましいのがその場でどう対応すべきかという点です。無視すれば会議の秩序は崩れますが、感情的に注意すれば場の空気が悪くなる可能性もあります。

 まず押さえておくべきなのは、「その場で何もしない」という選択肢は、実質的に容認したのと同じ意味を持つという点です。他の出席者は経営者の反応を見ています。何も言われなければ、「この程度の行為は問題にならない」と受け取られ、同様の行動が広がるリスクがあります。

 その場での対応として現実的なのは、注意ではなく関与を促す形での声かけです。たとえば、「この点についてどう思いますか」「○○について意見をもらえますか」と議題に関する発言を求めることで、自然に会議に引き戻すことができます。これにより、本人の態度を正すと同時に、会議の流れを止めずに済みます。

 それでも改善が見られない場合や、行為が明らかに悪質な場合には、「会議中なので関係ないことは控えてください」と端的に伝えることも必要です。このとき重要なのは、人格を否定する言い方を避け、行為そのものに限定して指摘することです。感情的な叱責は、不要な反発を招くだけです。

 また、その場で強く注意することが適切でないと判断した場合には、会議後に個別で声をかけるという対応も有効です。「会議中の態度が気になった」「どういう役割で出席してもらっているか改めて伝えたい」といった形で、冷静に話をすることで、本人の受け止め方も変わりやすくなります。

 会社経営者として意識すべきなのは、「注意するかしないか」ではなく、「会議の秩序をどう守るか」です。その場の雰囲気を壊さずに是正できる方法を選びつつ、必要な場合にははっきり線を引く。このバランス感覚が、会議運営において非常に重要になります。

7. 役割を明確に伝えることが最大の予防策になる理由

 会議に集中しない社員への対処として、最も効果が高く、かつトラブルになりにくい方法は、あらかじめ役割を明確に伝えておくことです。注意や指導を繰り返すよりも、実はこの予防策こそが本質的な解決につながります。

 多くのケースで、会議中に集中しない社員は、「自分がなぜここにいるのか」「何を求められているのか」が分からないまま出席しています。その結果、会議への当事者意識が持てず、時間を持て余し、私的行為に流れてしまうのです。

 会社経営者として意識すべきなのは、「会議に出席している=役割がある」と社員が自然に理解するとは限らない、という点です。経営者側が頭の中で想定している役割は、言葉にして伝えなければ、本人には伝わりません。

 たとえば、「このテーマについて現場の実情を補足してほしい」「決定事項を持ち帰って実行に移す立場として参加してほしい」といった形で、具体的に伝えることが重要です。役割が明確であれば、発言の準備もできますし、会議への集中度も自然と高まります。

 また、役割を伝えることは、会議中の態度を正すための根拠にもなります。「あなたにはこういう役割で出席してもらっている」という前提があれば、集中していない態度に対しても、感情論ではなく業務上の指摘として注意することができます。

 逆に、役割を明確にしないまま、「集中しろ」「ちゃんと聞け」と注意するのは、社員からすると納得感に欠けます。「何のために出ているか分からないのに、なぜそこまで言われるのか」という不満につながりやすく、改善効果も限定的です。

 役割を明確に伝えるという行為は、社員を縛るためのものではありません。会議に参加する意味を共有し、無駄な行動を未然に防ぐためのものです。会議に集中しない問題を繰り返さないためには、事後対応よりも、事前の役割設定に力を入れることが、会社経営者にとって最も合理的な選択だと言えます。

8. 会議の雰囲気と秩序を守るという経営判断

 会議中に集中しない社員がいるとき、会社経営者として見落としてはならないのが、会議全体の雰囲気や秩序への影響です。この問題は個々の社員の態度にとどまらず、会議という場そのものの価値を左右します。

 一人でも居眠りや私的行為をしている社員がいると、会議全体がだらけた空気になりやすくなります。「真剣に聞かなくてもいい」「形だけ出席すればいい」という空気が広がれば、他の出席者の集中力や発言意欲にも悪影響を及ぼします。これは会議の生産性低下だけでなく、組織文化の劣化にもつながります。

 会社経営者として重要なのは、「個人の自由」の問題として片付けないことです。会議の雰囲気や秩序は、会社として守るべき経営資源の一つです。会議が緊張感を失えば、意思決定の質も下がり、結果的に経営判断そのものが鈍っていきます。

 そのため、会議の雰囲気を著しく乱す行為については、役割の有無にかかわらず是正する必要があります。「あの人は発言しない立場だから」「特に期待していないから」という理由で放置すれば、不公平感や不満が他の社員に蓄積していきます。

 一方で、過度に萎縮させるような運営も望ましくありません。重要なのは、「真剣に参加するのが当たり前」という最低限の秩序を維持することです。その基準を会社経営者自身が明確に意識し、必要に応じて態度で示すことが求められます。

 会議の雰囲気や秩序を守ることは、細かなマナー指導ではありません。会社としてどのような意思決定の場を作りたいのかという経営判断そのものです。この視点を持つことで、会議に集中しない問題への対応も、ぶれずに行えるようになります。

9. 司会進行・ファシリテーション不全が招く問題行動

 会議に集中しない社員が発生する背景として、見落とされがちですが極めて重要なのが、司会進行やファシリテーションの質です。社員の態度だけを問題視する前に、会議そのものが集中できる構造になっているかを、会社経営者として点検する必要があります。

 会議が間延びしている、議題が整理されていない、結論が見えないまま話が行き来している。このような司会進行のもとでは、出席者が「時間の無駄だ」「聞いていても意味がない」と感じてしまうのは無理もありません。その結果、居眠りや私的行為に流れてしまう社員が出てくるのです。

 つまり、会議に集中しない問題は、必ずしも社員の資質や意欲の問題だけではありません。司会者が議論を整理できていない、目的やゴールが共有されていないといった場合、真面目な社員であっても集中力を維持するのは困難になります。

 会社経営者として意識すべきなのは、「集中しない社員が悪い」で終わらせないことです。司会進行が適切であれば、発言のテンポが生まれ、出席者は自然と会議に引き込まれます。逆に、だらけた進行の会議では、どれだけ注意しても根本的な改善にはつながりません。

 また、司会者には「全員を参加させる」という役割もあります。特定の人だけが話し続けている、誰に意見を求めているのか分からないといった状況では、発言機会のない社員ほど集中力を失いやすくなります。適宜質問を振る、論点を整理するなどのファシリテーションが求められます。

 会議中に集中しない社員が目立つ場合、それは司会進行の改善を求めるサインであることも少なくありません。司会者の力量は「進行役の問題」ではなく、会議の成果を左右する重要な経営要素です。必要であれば、司会進行のやり方そのものを見直すことも、会社経営者の判断として検討すべきでしょう。

10. 会議に集中しない問題を再発させないための視点

 会議に集中しない社員への対応は、その場で注意して終わらせれば解決するような単純な問題ではありません。会社経営者として重要なのは、同じ問題を繰り返さないために、会議の在り方そのものを見直す視点を持つことです。

 まず意識すべきなのは、「会議は参加すればよいものではない」という前提を、会社として共有することです。誰のための会議なのか、何を決める場なのか、出席者に何を期待しているのか。この基本設計が曖昧なままでは、どれだけ注意をしても根本的な改善は望めません。

 次に重要なのが、役割と秩序を事前に示すことです。会議に出席する以上、最低限守るべき態度があること、そしてそれは会社として当然のルールであることを、日頃から明確にしておく必要があります。事後的に叱るよりも、事前に基準を示す方が、はるかにトラブルは少なくなります。

 また、会議の運営についても、定期的に見直す視点が欠かせません。会議が長すぎないか、目的が形骸化していないか、司会進行が機能しているかといった点は、経営者自身がチェックすべき事項です。「集中しない社員が出てきた」という事実は、会議の設計に無理が生じているサインであることも多いからです。

 さらに、会議に集中しない問題を個人の資質の問題として処理し続けると、「会議は形だけのもの」「真剣にやらなくてもいい」という空気が会社全体に広がります。これは長期的に見れば、意思決定の質を下げ、組織力を弱める要因になります。

 会社経営者として目指すべきなのは、注意や指導が頻発する会議ではなく、自然と集中が生まれる会議です。そのためには、出席者の選定、役割の明確化、進行方法の改善といった点を、経営判断として積み重ねていく必要があります。

 会議に集中しない問題は、小さな態度の問題に見えて、実は会社の会議文化や統制力を映す鏡です。目の前の行動だけにとらわれず、再発させない仕組みを作ることこそが、会社経営者に求められる最終的な対応だと言えるでしょう。

 


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