問題社員108 ごまかしが多い。

動画解説

 

1. ごまかしが多い社員がもたらす経営上のリスク

 ごまかしが多い社員がいると、会社経営者は正確な現状把握ができなくなります。業務の進捗や結果について事実と異なる報告を受ければ、その情報を前提にした判断や指示は、最初からズレたものになってしまいます。

 現状把握が誤っている状態では、適切な指示や軌道修正ができず、結果として思わぬ損害を被るリスクが高まります。小さなごまかしの積み重ねが、取引先とのトラブルや業務上の重大なミスにつながるケースも珍しくありません。

 特に問題なのは、ごまかしが習慣化している場合です。一度や二度のミスではなく、「この人の言うことはそのまま信じてはいけない」という状態になってしまうと、会社としての管理コストは一気に跳ね上がります。会社経営者としては、「性善説で任せる」という姿勢を見直し、ごまかしが経営判断に直結する重大なリスクであることを、まず正しく認識する必要があります。

2. 「信じる」ではなく事実確認が必要な理由

 ごまかしが多い社員への対応で、会社経営者がまず切り替えるべき発想は、「信じる」から「事実確認する」への転換です。一度でもごまかしが発覚している以上、その言葉を前提に経営判断を行うこと自体が、リスクの高い行為になります。

 「性善説で任せている」「信頼関係を大切にしたい」という考え方自体は否定されるものではありません。しかし、ごまかしが多いと分かっている社員に対してまで、その姿勢を貫くことは、管理を放棄しているのと同じ評価を受けかねません。事実確認を怠った結果、会社が損害を被った場合、経営者側の責任も問われることになります。

 会社経営者の仕事は、社員を信じることではなく、会社が安全に回るよう調整することです。そのためには、報告された内容を鵜呑みにせず、「本当はどうなのか」「具体的にはどういう状況なのか」を確認する姿勢が欠かせません。事実確認を徹底することは、疑ってかかる冷たい対応ではなく、会社を守るための当然の業務であるという認識を持つことが重要です。

3. 繰り返し質問するという基本対応

 ごまかしが多い社員に対して最も基本となる対応は、繰り返し質問して事実を確認することです。一度説明を受けたからといって、その内容を前提に話を進めてしまうのは危険です。すでにごまかしが多いと分かっている以上、「本当にそうなのか」「具体的にはどういう状況なのか」を重ねて確認する必要があります。

 ごまかしが多い社員は、最初の質問に対して、核心を外した答えを返すことが少なくありません。特に、結果が良くなかった場合や、手を抜いた、ミスをしたといった場面では、こちらを勘違いさせるような説明をする傾向が強くなります。そのため、一度聞いて終わりにせず、角度を変えて質問を重ねることが重要です。

 会社経営者として意識すべきなのは、「しつこく問い詰める」ことと「必要な事実確認をする」ことは違うという点です。穏やかで丁寧な言葉を使いながら、矛盾点や不明確な部分を淡々と確認していくことで、実態が少しずつ明らかになっていきます。繰り返し質問する姿勢そのものが、「ごまかしは通用しない」というメッセージにもなり、再発防止にもつながります。

4. 感情的にならず淡々と聞く重要性

 ごまかしが多い社員に対して事実確認を行う際、会社経営者が特に注意すべきなのは、感情的にならないことです。疑わしい点が見つかると、つい苛立ちや不信感が表に出てしまいがちですが、感情を前面に出した質問は、相手を防御的にし、かえって事実を引き出しにくくします。

 ごまかしが多い社員ほど、強い口調や非難を感じると、さらに言い逃れを重ねたり、話を逸らしたりする傾向があります。そのため、声を荒らげたり、決めつけた言い方をしたりする必要はありません。「ここが少し分かりにくいのですが」「もう一度具体的に教えてください」といった、穏やかで丁寧な言葉を使い、淡々と確認を続けることが効果的です。

 淡々と質問を重ねていくと、ごまかしがある場合には、どこかで説明が苦しくなり、矛盾が表面化します。会社経営者としては、相手を言い負かすことが目的ではなく、事実を正確に把握することが目的である点を忘れないでください。冷静な態度を貫くことが、結果として会社を守る最も確実な対応になります。

5. 会議室での面談が有効な場面

 ごまかしが多い社員への対応について、軽微な確認であれば立ち話でも足りますが、業務上重要な事項や、損害につながりかねない内容については、会議室などで改めて面談の場を設けることが有効です。場を改めることで、会社として正式に事実確認をしているという姿勢を明確に示すことができます。

 会議室での面談といっても、長時間に及ぶ必要はありません。5分から10分程度であっても、質問と回答を繰り返すだけで、十分に効果があります。対面で、逃げ場のない状況で説明を求められると、ごまかしは続けにくくなるためです。

 また、面談の場では、その場で明らかになった事実を整理し、必要であればその内容を前提に指示や注意を行うことができます。会社経営者としては、「信じるから任せる」のではなく、「事実を確認したうえで判断する」という姿勢を一貫して示すことが重要です。会議室での面談は、その姿勢を社員に伝えるための、非常に実務的で効果的な手段と言えるでしょう。

6. 事実確認を怠った場合の会社側リスク

 ごまかしが多い社員に対して十分な事実確認を行わず、「信じて任せた」という姿勢を取り続けた場合、そのリスクは最終的に会社側が負うことになります。誤った報告を前提に判断を重ねれば、業務上のミスや取引トラブルが拡大し、取り返しのつかない損害につながるおそれがあります。

 特に問題となるのは、後から事実が判明した場面です。「なぜその時に確認しなかったのか」「管理として何をしていたのか」と問われた場合、「信じていたから」という説明は、会社経営者としての責任を免れる理由にはなりません。事実確認を怠っていたこと自体が、管理不十分と評価される可能性があります。

 また、懲戒処分や退職勧奨を検討する局面においても、事実確認をしてこなかったことは不利に働きます。ごまかしを放置してきた結果、「なぜ今さら問題にするのか」と反論されるリスクが高まるからです。会社経営者としては、問題を大きくしないためにも、日常的に事実確認を積み重ねておくことが、結果的に会社と自分自身を守ることにつながると理解しておく必要があります。

7. 注意指導・懲戒処分を検討する際の考え方

 ごまかしが多い社員に対して、事実確認を重ねた結果、虚偽の説明や意図的な隠蔽が明らかになった場合には、注意指導や懲戒処分を検討する段階に入ります。ただし、この判断は感情ではなく、事実と経過をもとに冷静に行う必要があります。

 注意指導を行う際には、「何が事実として確認されたのか」「どの点が問題なのか」を具体的に示すことが重要です。抽象的に「ごまかすな」「信用できない」と伝えるだけでは、本人の反発を招くだけで、改善につながりません。事実を積み重ねたうえで、会社として許容できない行為であることを明確に伝える姿勢が求められます。

 懲戒処分についても同様で、事実確認が不十分なまま重い処分を選択すると、後に紛争へ発展するリスクが高まります。会社経営者としては、「これまでどのような確認を行い、どのような説明を受け、その結果どう判断したのか」を説明できる状態を作ってから、段階的に処分を検討することが不可欠です。

8. 危険性・重要性の高い業務から外す判断

 ごまかしが多い社員について特に注意しなければならないのは、生命・身体に危険が及ぶ業務や、失敗した場合に会社へ重大な損害が生じる業務に従事させ続けてよいのか、という点です。ごまかしが常態化している状態では、正確な状況把握ができず、事故や重大トラブルにつながるリスクが高まります。

 例えば、工事現場や危険物を扱う業務、判断ミスが重大事故に直結する業務では、「実はできていなかった」「本当は確認していなかった」というごまかしは致命的です。このような業務については、事実確認を徹底したうえでも不安が残る場合、当該社員を外す判断が必要になります。

 また、金額が大きい取引や、会社の信用に直結する重要案件についても同様です。「任せていたつもりだった」「ワンオペでやらせていた」という状況は、会社経営者にとって極めて危険です。関与させる場合であっても、必ず他の社員が管理・確認する体制を整えるか、業務そのものから外す決断をすることが、会社を守るための現実的な判断となります。

9. 管理職や重要ポジションとしての適性

 ごまかしが多い社員については、現在の業務内容だけでなく、管理職や重要ポジションとしての適性があるのかという点も、会社経営者として慎重に見極める必要があります。特に管理職は、正確な情報をもとに判断し、部下や会社全体を正しい方向に導く役割を担います。

 その立場にある人間が事実を歪めたり、不都合な点を隠したりする傾向がある場合、会社経営者の判断そのものを誤らせるリスクが高くなります。「知らなかった」「聞いていない」という事態が続けば、経営上の意思決定が後手に回り、損害が拡大するおそれもあります。

 会社経営者としては、能力や経験があるからといって、ごまかし癖のある社員を重要ポジションに据え続けることが本当に適切なのかを冷静に考える必要があります。場合によっては、管理職から外す、権限を限定するなどの判断も含め、役割と責任の重さに見合った配置を見直すことが、会社全体を守るうえで重要な対応となります。

10. 配置転換という現実的な選択肢

 ごまかしが多い社員について、注意指導や事実確認を続けても改善が見られない場合、会社経営者として検討すべき現実的な選択肢が配置転換です。ごまかし癖は、業務内容や責任の重さとの相性によって、問題の深刻さが大きく変わります。

 例えば、正確性が強く求められる業務や、判断ミスが重大な影響を及ぼす業務では、ごまかしは致命的になります。一方で、上位者の指示のもとで動く補助的な業務や、結果を第三者が確認できる業務であれば、管理体制を整えることでリスクを抑えられる場合もあります。

 配置転換は、本人を甘やかすための対応ではありません。会社全体のリスクを抑え、他の社員や取引先を守るための経営判断です。会社経営者としては、「今の業務に就かせ続けることが最も危険ではないか」という視点を持ち、本人の適性と業務の性質を冷静に照らし合わせたうえで、現実的な配置を選択することが重要です。

11. 社内で受け皿がない場合の対応

 ごまかしが多い社員について、配置転換を検討したとしても、「社内に適切な受け皿となる業務がない」というケースは少なくありません。どの業務でも正確性が求められ、ごまかしが許されない場合、その社員を社内で活かし続けること自体が難しい状況に陥ります。

 このような場合、会社経営者として重要なのは、「何とか今の会社に置き続けること」だけを目的にしないことです。無理に業務を作ったり、重要度の高い仕事を任せ続けたりすると、かえって会社全体のリスクが高まります。また、周囲の社員の負担や不満が限界に達し、組織の安定が損なわれるおそれもあります。

 社内で適切な配置先が見つからない場合には、その現実を踏まえたうえで、次の段階の対応を検討する必要があります。会社経営者としては、「この会社の中で安全に任せられる仕事があるのか」という視点で冷静に整理し、難しいと判断した場合には、別の選択肢に進む覚悟も求められます。

12. 退職勧奨・解雇を検討すべき局面

 社内での配置転換も難しく、ごまかし行為について注意指導や懲戒処分を重ねても改善が見られない場合、会社経営者としては退職勧奨や解雇を検討せざるを得ない局面に入ります。ここまで来た段階では、「もう少し様子を見る」という判断が、かえって会社に大きなリスクを残すこともあります。

 退職勧奨については、あくまで本人の合意を前提とするものであり、強要や圧力と受け取られる進め方は避けなければなりません。これまでに確認した事実、ごまかしが業務や会社に与えた影響、なぜ配置転換では対応できなかったのかを整理したうえで、冷静に説明する必要があります。

 解雇については、さらに高いハードルがあり、客観的で合理的な理由と社会的相当性が求められます。単なる不信感だけでは足りず、具体的なごまかしの事実、指導の経過、改善の見込みがないことを示す必要があります。この段階に進む場合には、必ず事前に弁護士へ相談し、リスクを踏まえた対応を取ることが、会社経営者自身を守るために不可欠です。

13. ごまかしが多い社員問題の総括判断

 ごまかしが多い社員への対応で最も重要なのは、「信じたい気持ち」と経営判断を切り分けることです。報告内容をそのまま受け取り続ければ、会社経営者は正確な現状把握ができず、誤った判断を重ねることになります。その結果として生じる損害は、最終的に会社全体が負うことになります。

 まず行うべきは、繰り返しの事実確認です。感情的にならず、淡々と質問を重ね、事実を積み上げる。そのうえで、注意指導、業務の見直し、配置転換といった段階的な対応を検討していくことが、トラブルを最小限に抑える基本的な流れになります。

 それでも改善が見込めず、社内で安全に任せられる業務がないと判断した場合には、退職勧奨や解雇といった判断に進むことも、会社経営者の責任です。重要なのは、場当たり的な対応ではなく、「なぜその判断に至ったのか」を説明できる経過を積み重ねておくことです。ごまかしが多い社員問題は放置すればするほどリスクが拡大します。冷静で一貫した対応こそが、会社を守る最善の選択と言えるでしょう。

 

最終更新日2026/2/9


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