訴訟移行

労働審判事件が訴訟に移行するケース

 労働審判事件が訴訟に移行するのは,①労働審判に対する異議の申立て,②労働審判の取消決定,③労働審判事件の終了の3種類のケースがあります。

① 労働審判に対する異議の申立てによる訴え提起

 労働審判について当事者から異議の申立てがされたら,労働審判は失効し,当該労働審判事件を行っていた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。

② 労働審判の取消決定による訴え提起

 労働審判の審判書を送達する際に,民事訴訟では公示送達によることとなるようなときには,裁判所は,決定により労働審判を取り消します。労働審判を取り消す決定が確定した場合,①と同様に訴えの提起があったものとみなされます。

③ 労働審判事件の終了による訴えの提起

 労働審判委員会が,事件の内容が労働審判手続で解決すべきではないと認めた場合には,労働審判委員会は,労働審判事件を終了させることができます。この場合も,①,②と同様に訴えの提起があったものとみなされます。

労働審判が訴訟に移行した場合の流れ

 労働審判事件が訴訟に移行すると,地方裁判所に労働審判事件記録が引き継がれます。そして,裁判長が,労働審判手続の申立書等の書面について審査を行い,不備があれば原告に補正を命じます。原告が補正に応じない場合には,裁判所は,訴状とみなされた労働審判手続の申立書等の書面を却下することになります。

 労働審判事件が訴訟に移行したとき,原告は,訴え提起の手数料を裁判所に納付することになります。この場合の手数料は,通常の訴え提起の手数料の額から,労働審判事件の申立て時に納付した手数料を控除した額になります。原告が訴え提起の手数料を支払わなかった場合には,訴状とみなされた労働審判事件の申立書等は却下されます。

 訴状とみなされる労働審判事件の申立書等は被告に送達する必要があるため,原告は,裁判所に被告の数と同数の書面の副本を提出するのが通常です。

 また,訴状とみなされる労働審判事件の申立書等は,申立ての一部の取り下げや,当事者の変更があった場合には,それらが明らかになっていないことがあります。労働審判事件が訴訟に移行した時点での原告の主張を早い段階で明確にしておくために,裁判所は,原告に対して,いわゆる訴状に代わる準備書面の提出を求めることがあります。

労働審判が訴訟に移行した場合の訴状について

 労働審判事件が訴訟に移行した場合に訴状とみなされるものは,労働審判手続の申立書,申立ての趣旨又は理由が変更された場合にはその期日の調書を指すものと考えられます。

 なお,申立ての趣旨又は理由の変更が許されなかった場合,変更申立書に記載された新たな申立ては労働審判の対象にはなりませんので,この変更申立書は,労働審判規則32条の「第26条第1項の書面」には該当しないものと考えます。

労働審判手続で提出した資料は訴訟でも利用できるのか

 労働審判事件が訴訟に移行した場合に,訴訟においても利用できる書面は,訴状とみなされる労働審判の申立書と,申立ての趣旨又は変更申立書のみです。

 これは,労働審判手続で提出した資料をそのまま移行後の訴訟で資料とすることが当事者の意思に反する場合が少なくないこと,また,労働審判手続と民事訴訟手続とでは手続の原則が異なり,資料を引き継ぐことが適当ではないことから定められたものと考えられます。

 したがって,当事者が,訴状とみなされる労働審判の申立書及び申立ての趣旨又は変更申立書以外の主張書面等を,移行後の訴訟における資料とするためには,改めて裁判所に提出する必要があります。 

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