Q63 定年前と同様の勤務形態で定年後すぐに嘱託社員として再雇用した社員が,6ヵ月を経過しない時点で年次有給休暇の申請をしてきた。

1 年次有給休暇の発生要件
 年次有給休暇の権利は,労働者が6カ月間継続勤務し,全労働日の8割以上出勤することによって発生します。
 「継続勤務」とは,一見すると出勤を意味すると理解されがちですが,労働契約の存続期間,すなわち事業場における在職期間を意味します。
 定年前と同様の勤務形態で定年後すぐに嘱託社員として再雇用した社員が,6ヵ月を経過しない時点で年次有給休暇の申請をしてきた場合に問題となるのは,当該労働者の勤務が継続しているといえるのかという点です。

2 継続勤務にあたるか否かの判断
 行政通達によると,継続勤務にあたるかどうかは,「その実態により見て引き続き使用されていると認められる」か否かを基準とするとされています(昭和63年3月14日基発150号)。すなわち,実質的に退職と再採用との間で労働関係が継続している場合には継続勤務していることになりますが,退職と再採用との間に相当な期間があり,客観的にみて労働関係が継続していない場合は,継続勤務ではないと考えられます。
 継続勤務を肯定した裁判例として,1年単位の雇用契約を更新していた国際協力事業団事件(東京地裁平成9年12月1日判決),競馬の馬券販売員を開催期間毎に継続雇用していた日本中央競馬会事件(東京高裁平成11年9月30日判決),使用者が「フリーシフト制」と称する,従業員が使用者から作業を割り当てられて作業した日のみ給与を支給するものとしていたアールエス興業事件(横浜地裁川崎支部平成27年9月30日判決)があります。
 また,継続勤務を否定した裁判例として,東京芝浦職人事業公社事件(東京地裁平成2年9月25日判決)は,労働者が定年退職し,非常勤の嘱託職員となった場合,所定勤務日数が大幅に減少するなど,勤務の態様が著しく軽くなるような場合には,勤務関係は実質的には別個であり,両者の間には勤務の継続はなく,勤務年数の通算もないというべきであると判断基準を示した上で,当該事案について,当該労働者は,常勤の正規職員を定年退職した後、月18日間(週4日相当)のみ勤務する非常勤の嘱託職員となったことを理由に,継続勤務を否定しました。
 ご質問のケースは,勤務形態を定年前と特に変更しておらず,定年後すぐに勤務を開始していることから,当該労働者は継続勤務しているといえ,年次有給休暇の権利が発生しているものと考えます。

文責:飯島 潤

  • 残業代請求対応の弁護士

弁護士法人四谷麹町法律事務所

〒102-0083
東京都千代田区麹町5丁目2番地 K-WINGビル7階
03-3221-7137

Copyright ©弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)|解雇,残業代請求,労働審判,団体交渉,問題社員などの労働問題の対応,相談 All Rights Reserved.
Return to Top ▲Return to Top ▲