労働問題828 育児休業又は介護休業を取得した労働者の賞与を減額することはできますか?

 育児休業又は介護休業を取得した労働者の賞与を減額してもよいのかは、その減額が育児又は介護を行う労働者の休業等を取得する権利の行使を抑制した場合や、実質的に保証した権利を失うと認められる場合に当たらなければ、有効に減額できると考えられています。
 裁判例では、就業規則において「賞与支給対象者は出勤率90%以上の者」である旨を定め、産後休業及び育児のための勤務時間短縮措置を取得した従業員に対し賞与を支給しなかった事案について、産前・産後休業、及び育児のための時短勤務等の措置を定める法律は、休業や短縮された時間について出勤として取り扱うことを義務付けているわけではないから、これらの規定に基づく不就労期間について賃金請求権はなく、不就労期間を出勤として取り扱うか否かは、原則として労使の合意に委ねられているとしました。その上で、従業員の出勤率低下防止の観点から、出勤率の低いものが経済的利益を得られないこととする措置は一応の経済的合理性を有するため、その措置が労基法等の権利を抑制したり、権利を保証した趣旨を実質的に失わせると認められる場合に限り、無効になるとしました。この事案では、年収に占める賞与の比重が相当大きいこと、90%の条項は従業員に産後休暇又は時短勤務の権利の行使を抑制すると認められることから、90%の条項のうち、出勤すべき日数に産前・産後休業の日数及び育児による時短勤務の時間を含めないとした部分は無効になると判断しました。これに対し、賞与の具体的金額を欠勤日数に応じて減額することを内容とする計算式や、産前・産後休業の日数及び育児による時短勤務を欠勤日数に含めることは、労基法の権利の行使を抑制し、法律が権利を保障した趣旨を実質的に失わせるとまでは認められないとし、直ちに公序に反するとはいえないと判断しました(学校法人東朋学園事件最高裁平成15年12月4日判決)。

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