問題社員76 パソコンが苦手。

動画解説

1. パソコンが苦手な社員が増える職場の現実

 事務職を中心に、日常業務でパソコンを使うことが当たり前になっている一方で、「パソコンが苦手な社員がいる」という悩みを抱える会社経営者は、決して少なくありません。WordやExcel、資料作成、各種システム入力など、パソコン操作が前提となる業務は年々増えていますから、現場で支障が出るのも無理はないところです。

 パソコンが広く普及してから相当な年月が経っているため、「今どきパソコンが使えないのはおかしいのではないか」と感じる会社経営者も多いでしょう。しかし実際には、これまでの職歴や業務内容、育ってきた環境によって、パソコンに触れる機会が極端に少なかった社員も一定数存在します。

 また、努力はしているものの、どうしても操作が身につかない、作業スピードが上がらないというケースもあります。本人なりに頑張っているつもりでも、成果が見えにくいため、周囲からは「やる気がない」「覚える気がない」と誤解されがちです。

 この問題を放置すると、業務効率が下がるだけでなく、周囲の社員にしわ寄せが行き、不満が蓄積していきます。「結局あの人の分までフォローしなければならない」「同じ仕事量なのに負担が違う」という感情は、職場の雰囲気を悪化させる原因になります。

 一方で、パソコンが苦手という理由だけで、その社員の存在価値を否定してしまうのも適切ではありません。パソコン操作以外の分野で強みを持っている社員も多く、単純に「できないからダメ」と切り捨てると、貴重な人材を失うことにもなりかねません。

 会社経営者としてまず認識すべきなのは、「パソコンが苦手な社員が存在する」という現実そのものです。この現実を前提に、どう対応するかを考えなければ、感情論や根性論に流れ、問題は長期化してしまいます。

 このテーマは、単なるスキル不足の問題ではなく、教育、配置、業務設計をどう行うかという経営判断の問題です。ここを正しく捉えることが、以後の対応を考えるうえでの出発点になります。

2. 「やる気がない」と決めつけてはいけない理由

 パソコンが苦手な社員を前にすると、会社経営者としてつい浮かんでしまうのが、「本人のやる気の問題ではないか」という発想です。「本気で覚えようとしていないのではないか」「自分で勉強すればいいのに」と感じる場面も多いでしょう。しかし、この見方で問題を整理してしまうと、対応を誤る可能性が高くなります。

 実務上、パソコンが苦手な社員の多くは、「やる気がない」のではなく、「どうやっても上達しにくい状態」に置かれています。過去に十分なトレーニングを受けた経験がない、基礎的な操作につまずいたまま年月が経ってしまった、あるいは作業の全体像が理解できず、何から手を付ければよいのか分からないといった事情を抱えていることが少なくありません。

 このような状態の社員に対して、「自分で努力しなさい」「覚える気があるならできるはずだ」と精神論で迫っても、結果はほとんど変わりません。本人としては、努力しているつもりでも成果が出ず、「どうせやっても無理だ」という諦めの感情を強めてしまうこともあります。

 また、パソコン操作には向き不向きがあるという点も見落とせません。細かい操作や画面構成を直感的に理解できる人もいれば、どれだけ説明を受けても操作が頭に入らない人もいます。これは怠慢ではなく、適性の問題である場合が多いのです。

 会社経営者が「やる気がない」と決めつけてしまうと、その後の対応は「叱る」「突き放す」という方向に傾きがちになります。しかし、それでは問題の本質に手を付けていないため、業務効率も職場環境も改善しません。

 重要なのは、「本人の気持ちの問題」として処理する前に、なぜできないのか、どこでつまずいているのかを整理することです。この視点を持つだけで、取るべき対応は大きく変わります。

 パソコンが苦手な社員の問題は、努力不足を責めることで解決するものではありません。原因を正しく捉え、会社としてどのような支援や工夫ができるのかを考えることが、会社経営者としての現実的な第一歩になります。

3. パソコンが苦手になる主な原因の整理

 パソコンが苦手な社員への対応を考えるうえで、会社経営者がまず行うべきなのは、原因を整理することです。「できない」という結果だけを見て対応を決めてしまうと、的外れな施策になりやすくなります。

 実務上よく見られる原因の一つは、そもそもパソコンを使う業務経験がほとんどなかったというケースです。これまで現場作業や対面業務が中心で、パソコン操作を求められる機会が少なかった社員の場合、「今さら基本から覚えるのは無理だ」という心理的なハードルを強く感じていることがあります。

 次に多いのが、基礎部分でつまずいたまま放置されてきたケースです。ファイルの保存場所、フォルダ構造、マウス操作やショートカットといった初歩的な部分が理解できていないと、その先の操作はすべて難しく感じてしまいます。この状態で業務だけが進んでいくと、苦手意識は固定化していきます。

 また、適性の問題も無視できません。パソコン操作は、画面上の情報を把握し、手順を組み立てながら作業を進める能力が求められます。この種の作業に向いていない社員も一定数存在します。努力の有無とは別に、どうしても上達のスピードが上がらない場合があります。

 さらに、年齢やこれまでの職業人生の影響もあります。長年、パソコンを使わない働き方をしてきた社員にとって、短期間で同じ水準を求めること自体が現実的でない場合もあります。この点を理解せずに「当然できるはずだ」と扱ってしまうと、本人の自信を失わせる結果になりがちです。

 重要なのは、これらの原因は本人の怠慢や人格の問題ではないケースが大半だという点です。原因を「やる気」に帰結させてしまうと、次に取るべき対応を誤ります。

 会社経営者としては、「この社員はどのタイプの原因に当てはまるのか」を一度整理することが必要です。原因が分かれば、トレーニングをすべきなのか、求める水準を調整すべきなのか、配置を見直すべきなのかといった判断がしやすくなります。

 パソコンが苦手な問題は、感情論で片付けるほど単純ではありません。原因を分解し、現実的な選択肢を検討することが、次の対応につながる重要なステップになります。

4. 会社主導でトレーニングを行うという選択肢

 パソコンが苦手な社員に対して、「自分で勉強しなさい」「努力しなさい」と本人任せにしても、問題が解決しないケースが多いことは、これまで述べてきたとおりです。そのため、会社経営者として現実的に検討すべきなのが、会社主導でトレーニングを行うという選択肢です。

 ここで重要なのは、「自主学習を促すこと」と「会社主導で教えること」は全く別だという点です。自主学習に任せるというのは、実質的には放置に近く、パソコンが苦手な社員にとっては心理的ハードルが高すぎます。何を、どこから、どの程度やればいいのか分からないまま時間だけが過ぎていくことがほとんどです。

 会社主導のトレーニングといっても、必ずしも外部の高額な研修やプロ講師を使う必要はありません。社内でパソコン操作が得意な社員が、一定期間そばについて教えるだけでも、効果が出る場合はあります。ポイントは、「分からないことをその場で聞ける環境」を用意することです。

 また、トレーニングの目的を明確にしておくことも重要です。「誰と同じレベルまでできるようになるか」ではなく、「この業務を一人で回せるようになるか」「最低限ここまではできれば業務に支障が出ない」という水準を設定します。高すぎる目標を掲げると、本人も指導する側も疲弊してしまいます。

 会社経営者として注意すべきなのは、「トレーニングをすれば必ず伸びる」と期待しすぎないことです。適性がある社員であれば、きっかけ一つで大きく伸びることもありますが、そうでないケースも少なくありません。あくまで「可能性を確認するための取り組み」と位置づける方が、現実的です。

 それでも、会社主導で一定期間トレーニングを行ったという事実は、その後の判断において非常に重要な意味を持ちます。教育の機会を与えたうえで、それでも改善が見られないのであれば、「やる気の問題ではなく、適性や配置の問題だ」と整理しやすくなるからです。

 パソコンが苦手な社員への対応は、突き放すか甘やかすかの二択ではありません。会社としてできる範囲の支援を行い、その結果を踏まえて次の判断につなげる。この段階的な考え方こそが、会社経営者にとって最もリスクの少ない対応と言えます。

5. 教育しても伸びないケースをどう評価するか

 会社主導でトレーニングを行ったにもかかわらず、パソコン操作が思ったほど改善しない――この段階に来ると、会社経営者としては判断に迷われることが多いはずです。「ここまでやってもダメなら、本人の問題ではないか」と感じてしまう気持ちも理解できますが、この局面こそ冷静な整理が必要です。

 まず押さえておくべきなのは、教育しても伸びないこと自体は珍しい話ではないという点です。パソコン操作には適性の差があり、一定以上の水準に到達しない社員が存在するのは現実です。努力や指導の有無とは別に、どうしても伸びにくいケースがあることを前提に考える必要があります。

 この段階で重要なのは、「できない」という結果を、怠慢や姿勢の問題と短絡的に結びつけないことです。会社としてトレーニングの機会を設け、一定期間の指導を行ったのであれば、その結果は能力・適性の問題として整理するのが合理的です。ここを誤ると、不必要に感情的な対立を生みやすくなります。

 一方で、「多少はできるようになったが、業務としてはまだ不十分」というケースも多く見られます。この場合、完璧を求めるのではなく、「最低限、どこまでできれば業務に支障が出ないのか」という基準で評価することが現実的です。全員が同じスピード、同じ正確さで作業できる必要はありません。

 会社経営者として注意すべきなのは、「教育したのだから、当然できるようになるはずだ」という期待を引きずることです。期待と現実のギャップが大きいほど、評価が厳しくなりがちですが、そこに合理性はありません。結果が出なかった場合には、「教育はやり切った」という事実を踏まえ、次の手段に切り替える判断が求められます。

 この評価をきちんと行っておくことは、その後の配置転換や業務分担を検討する際の重要な前提になります。教育しても伸びなかったという経過があれば、「やる気がないから外す」「能力が低いから外す」という説明ではなく、「適性を踏まえた判断である」と整理しやすくなるからです。

 教育しても伸びないケースは、失敗ではありません。会社として必要な検証を終えた状態だと捉えるべきです。そのうえで、どのような形で力を発揮してもらうのが最も合理的か、次の判断に進むことが、会社経営者としての現実的な対応になります。

6. 求めるスキル水準をどこに置くべきか

 パソコンが苦手な社員への対応で、会社経営者が意外と見落としがちなのが、会社として求めるスキル水準をどこに設定するかという視点です。全社員に同じレベルのパソコンスキルを求めてしまうと、現実とのズレが生じ、無用な摩擦を生みやすくなります。

 まず確認すべきなのは、「その業務に本当に高度なパソコンスキルが必要なのか」という点です。WordやExcelの操作でも、関数を自在に使いこなすレベルが必要なのか、ある程度の入力や簡単な修正ができれば足りるのかで、求める水準は大きく異なります。必要以上に高い基準を設定していないか、一度立ち止まって考える必要があります。

 実務上、多くの業務では「最低限この作業ができれば業務が回る」というラインが存在します。会社経営者としては、そのラインを明確にし、「ここまでは求めるが、それ以上は必須ではない」という整理をすることが重要です。全員が得意な社員と同じスピードや精度で作業できる必要はありません。

 また、スキル水準を考える際には、本人の成長可能性と業務効率のバランスも意識すべきです。教育しても大きな伸びが見込めない場合に、いつまでも高い水準を求め続けるのは非生産的です。一定の水準で止めるという判断も、会社経営者としては合理的な選択肢になります。

 一方で、「最低限でよい」と言っても、曖昧なままにしてはいけません。「できるようになればいい」「なるべく早く慣れてほしい」といった抽象的な基準では、評価も指導もぶれてしまいます。具体的に、「この書類を一人で作れる」「このシステムに入力できる」といった形で示すことが重要です。

 この水準設定が明確であれば、社員本人も「どこまでやればいいのか」が分かり、過度な不安やプレッシャーを感じずに済みます。逆に、基準が曖昧なままだと、「いつまで経っても足りない」「評価されない」という不満につながりやすくなります。

 求めるスキル水準を適切に設定することは、甘やかしではありません。業務を円滑に回すための経営判断です。この整理ができていれば、その後の配置転換や業務分担の議論も、感情論に流されずに進めることができます。

7. 配置の問題として考えるという経営判断

 パソコンが苦手な社員への対応を検討する際、会社経営者として必ず持っておくべき視点が、これは教育や努力の問題ではなく、配置の問題ではないかという発想です。一定期間トレーニングを行い、求めるスキル水準も明確にしたにもかかわらず、なお業務に支障が出ている場合、この視点を避けて通ることはできません。

 パソコン操作が必須となる業務に、パソコンが苦手な社員を配置し続けることは、本人にとっても会社にとっても負担が大きくなります。作業に時間がかかり、ミスが増え、周囲のフォローが常態化すれば、職場全体の生産性は確実に下がります。これは個人の問題というより、配置判断の問題です。

 会社経営者として重要なのは、「今の配置は本当に合理的か」という問いを自らに投げかけることです。たとえ管理職や現場責任者が決めた配置であったとしても、経営者の立場から見て非生産的であれば、見直す必要があります。配置は経営判断であり、固定化されるべきものではありません。

 配置転換というと、「問題社員を外す」「できない人を追いやる」といったネガティブなイメージを持たれがちですが、本来はそうではありません。社員の特性と業務内容を照らし合わせ、最も力を発揮できる場所に置くことが、会社にとっても本人にとっても合理的な選択です。

 パソコンが苦手でも、対人業務や現場対応、体を動かす仕事などで力を発揮できる社員は少なくありません。その可能性を検討せず、「今の仕事ができないから評価が低い」と結論づけてしまうのは、経営判断としてもったいない対応です。

 一方で、「他に適した仕事が本当にあるのか」という現実的な問題もあります。配置転換を検討する際には、感情論ではなく、業務の中身、必要なスキル、会社全体の人員構成を踏まえたうえで判断することが重要です。

 パソコンが苦手な社員の問題は、「どう教育するか」だけで終わる話ではありません。どこに配置すれば最も合理的かを考えること自体が、会社経営者の役割です。この視点を持つことで、問題を長期化させず、次の具体的な対応につなげることができます。

8. パソコン必須業務を分担・補完する考え方

 パソコンが苦手な社員を抱えている会社において、配置転換がすぐには難しい場合、会社経営者として現実的に検討すべきなのが、業務の分担や補完によって対応するという考え方です。これは妥協ではなく、現実的な経営判断の一つです。

 パソコンが必須な業務をすべて一人で完結させることを前提にすると、パソコンが苦手な社員は確実につまずきます。しかも、その状態を放置すれば、結局は他の社員が後から修正やフォローをすることになり、二度手間が発生します。それならば、最初から役割分担を前提に業務を設計した方が、結果として効率的です。

 たとえば、書類の内容整理や現場情報の取りまとめはその社員が担当し、実際の入力作業や体裁調整はパソコンが得意な社員が行う、といった形です。業務を工程ごとに分解し、パソコン操作が必要な部分だけを切り出して補完することで、全体としての生産性を保つことができます。

 ここで重要なのは、「パソコンが苦手な部分を丸投げする」のではなく、業務として正式に分担するという点です。あいまいなフォロー体制では、「誰がどこまで責任を持つのか」が不明確になり、トラブルの原因になります。業務分担を明確にし、役割として位置づけることが不可欠です。

 また、この分担・補完の考え方は、人手不足の会社において特に有効です。人材を切り捨てるのではなく、弱点を補い合いながら業務を回すことで、限られた人員でも組織を維持することができます。ただし、補完する側の負担が過度にならないよう、業務量のバランスには十分配慮が必要です。

 会社経営者として注意すべきなのは、この方法を「一時しのぎ」にしないことです。分担・補完で回せるのであれば、それを前提とした業務設計として整理し、評価や役割分担にも反映させる必要があります。そうしなければ、不公平感が蓄積し、別の問題が生じます。

 パソコンが苦手な社員を抱える状況は、単に個人の問題ではありません。業務をどう設計し、どう分担するかという経営の工夫によって、組織全体の生産性を維持することは十分に可能です。この視点を持つことが、次の「仕事そのものを見直す」という発想にもつながっていきます。

9. 仕事そのものを工夫・再設計するという発想

 パソコンが苦手な社員への対応として、教育や配置、業務分担まで検討してもなお課題が残る場合、会社経営者として次に考えるべきなのが、仕事そのものを工夫・再設計するという発想です。これは難易度の高い対応ではありますが、人手不足が常態化している現在、避けて通れないテーマでもあります。

 多くの会社では、「この仕事はこうやるもの」「パソコンを使うのが前提」という形で、業務のやり方が固定化されています。しかし、そのやり方自体が本当に最適なのかを見直す余地があるケースも少なくありません。長年続けてきた業務フローが、現在の人材構成に合っていない可能性もあります。

 たとえば、紙で確認していた内容をそのまま複雑な入力作業に置き換えていないか、不要な書式作成や二重入力が発生していないか、といった点です。パソコンが苦手な社員がつまずくポイントは、実は業務設計の無駄が表面化しているサインであることもあります。

 また、近年は、操作が簡単な業務ソフトやアプリ、AIツールなども増えています。高度なスキルがなくても、定型作業であれば誰でも一定水準の成果を出せる仕組みを導入することで、「パソコンが得意かどうか」という個人差の影響を小さくすることも可能です。もちろん、導入コストや習熟の問題はありますが、長期的には業務効率の改善につながる場合もあります。

 ここで注意すべきなのは、「社員に合わせて仕事を変えるのは甘やかしだ」という発想に縛られないことです。仕事は会社の目的を達成するための手段であり、やり方は固定されるものではありません。人材構成が変われば、業務の形を見直すのは自然な経営判断です。

 もっとも、すべての仕事を再設計できるわけではありませんし、経営者の思いどおりに進まないことも多いでしょう。それでも、「教育」「配置」「分担」だけで行き詰まった場合には、「仕事そのものを変えられないか」という視点を持つことが重要です。

 パソコンが苦手な社員の問題は、個人の能力不足として片付けるほど単純ではありません。仕事の設計、人の配置、ツールの選択をどう組み合わせるかという経営の工夫によって、解決の糸口が見えてくることもあります。この発想を持てるかどうかが、次の最終判断にも大きく影響します。

10. それでも解決しない場合の最終的な対応方針

 教育、配置転換、業務分担、仕事の再設計といった対応を検討・実行してもなお、パソコンが苦手なことによる支障が解消しない場合、会社経営者としては雇用をどう維持するかという最終判断に向き合う必要があります。この段階では、感情ではなく、経営としての合理性が強く問われます。

 まず確認しておくべきなのは、「パソコンが苦手」という事実そのものではなく、それによって業務が継続的に成り立たなくなっているかどうかです。本人なりに努力し、会社としても支援や工夫を尽くしたにもかかわらず、なお業務が回らない状態であれば、それは能力や適性の問題として整理せざるを得ません。

 この場合でも、直ちに解雇を検討するのは現実的ではありません。多くのケースでは、まず退職勧奨という形で、本人の意向を確認しながら雇用関係の整理を目指すことになります。その際、「できないから辞めてもらう」という言い方は避け、「会社として用意できる業務が限界に来ている」という整理で話を進めることが重要です。

 退職勧奨を行う場合には、これまでどのような教育や配置の工夫を行ってきたのか、その経過をきちんと説明できる状態にしておく必要があります。この積み重ねがないまま退職の話を切り出すと、「配慮をしてもらえなかった」「突然切り捨てられた」と受け取られ、紛争に発展するリスクが高まります。

 普通解雇を検討せざるを得ない局面も、理論上は存在しますが、これはあくまで最終手段です。解雇の合理性や相当性は厳しく判断されるため、この段階では必ず弁護士の助言を受けながら進めるべきです。独断で判断することは、会社にとって大きなリスクになります。

 会社経営者として大切なのは、「ここまでやった」というプロセスを踏むことです。教育もせず、配置も見直さず、業務設計の工夫も行わないままでは、どのような結論を出しても納得感は得られません。一方で、段階的に対応を尽くしたうえでの判断であれば、それは冷酷な決断ではなく、経営判断として正当化されるものです。

 パソコンが苦手な社員への対応は、会社経営者にとって非常に悩ましいテーマです。しかし、問題を先送りし続けることが最善とは限りません。支援すべきところは支援し、見極めるべきところは見極める。このバランスを取ることが、会社と社員の双方にとって現実的な解決につながります。

 


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