問題社員37 ソーシャルメディアに問題映像を投稿する。

1 問題映像の投稿が発見された際の緊急対応

 社員がソーシャルメディア(SNS)に不適切な映像を投稿し、いわゆる「炎上」状態になった場合、企業には一刻を争う対応が求められます。放置すれば企業のブランドイメージは失墜し、取り返しのつかない損害を被る可能性があるからです。

 まず最初に行うべきは、**徹底した証拠の確保**です。投稿が削除される前に、映像そのものを保存し、投稿日時、アカウント情報、拡散の状況(リポスト数やコメント内容)をスクリーンショットやPDFで記録します。これらは後の懲戒処分や損害賠償請求において、行為の悪質性を立証するための不可欠な証拠となります。

 次に、当該社員を直ちに特定し、事実関係の調査を行います。動機や共犯者の有無、撮影場所などを詳細にヒアリングし、書面に残します。この際、本人がパニックに陥り、勝手に個人のアカウントで火に油を注ぐような「釈明」を行わないよう、厳重に指示を与えることも重要です。

2 企業としての対外的な公表と謝罪

 投稿内容が拡散し、社会的な批判を浴びている場合は、速やかに企業としての公式な見解を公表すべきです。事実関係を認めた上で、被害を受けた顧客や関係者への謝罪、再発防止に向けた決意、および当該社員に対する厳正な処分の検討を表明します。

 不十分な調査の段階で曖昧な回答をすることは避けるべきですが、沈黙を守り続けることは「企業の隠蔽体質」と批判されるリスクを高めます。弁護士と協議の上、公表のタイミングと内容を慎重に判断して下さい。

3 懲戒処分と解雇の有効性

 不適切動画の投稿は、企業の社会的信用を著しく失墜させ、業務を妨害する行為であり、就業規則上の懲戒事由(名誉毀損、企業秩序の乱し等)に該当するのが通常です。

 **懲戒解雇**の適否については、投稿内容の不謹慎さの程度、拡散による実害の大きさ、本人の反省の度合い等を総合的に考慮します。例えば、食品を不衛生に扱う動画や、顧客のプライバシーを著しく侵害する動画などは、企業秩序を根本から破壊するものとして、重い処分が認められやすい傾向にあります。

 ただし、労働契約法第15条の「懲戒権濫用法理」に基づき、行為の態様に対して処分が重すぎる(社会通念上の相当性を欠く)と判断されると、解雇が無効となるリスクもあります。特に、教育体制の不備が指摘されるようなケースでは注意が必要です。

4 社員に対する損害賠償請求

 炎上によって店舗が休業に追い込まれたり、什器の入れ替え費用が発生したりした場合、投稿した社員に対し損害賠償請求(民法709条)を検討することになります。

 しかし、実務上、全額の回収は容易ではありません。裁判所は「損害の公平な分担」という観点から、労働者の賠償責任を制限することが多いためです。また、多額の賠償金を請求しても本人に支払い能力がないケースも少なくありません。身元保証人への請求も検討すべきですが、身元保証法による制限があるため、満額の回収は難しいのが実情です。

5 予防策としての教育とガイドライン

 最大のリスク管理は、こうした事件を発生させないことです。SNS利用に関する明確なガイドラインを策定し、何が禁止事項にあたり、違反した場合にはどのような法的責任(解雇や賠償)を負うことになるのかを、入社時研修や定期的な講習を通じて**問題社員**化させないための指導教育を徹底する必要があります。

弁護士 藤田 進太郎
解説者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年2月27日

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