問題社員28 営業秘密を漏洩する。

 社員は、在職中・退職後いずれについても、労働契約の付随義務として当然に守秘義務を負っていると考えられますが、それを明確にして自覚を促すため、諸規定を整備し、誓約書を取っておくことが重要です。

 社員が営業秘密を漏洩したと思われるような事案であっても、損害賠償請求は必ずしも容易ではありません。
 事後的な損害賠償請求が容易ではないことを念頭に置いて、事前の営業秘密漏洩防止に力を入れるべきです。

 社員が営業秘密を漏洩したことを立証することは、必ずしも容易ではありません。
 事情をよく聞かないうちに、退職してしまうこともあります。

 損害の性質上、損害額の立証が極めて困難なことが多いという印象です。
 裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、相当な損害額を認定することができる(民訴法248条)ため、損害額の立証ができない場合であっても、損害が生じていることさえ立証することができれば、相当な損害額は認定してもらえますが、思ったほどの金額にならないことが多いというのが実情です。
 労働契約の不履行について違約金を定め、損害賠償額を予定する契約をすることは禁止されているため(労基法16条)、社員が営業秘密を漏洩した場合に賠償すべき損害額を予め定めても無効となります。

 不正競争防止法に基づき、差止めや損害賠償請求をすることが考えられますが、同法の保護が及ぶ「営業秘密」とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいい、
① 秘密管理性
② 有用性
③ 非公知性
の要件を満たす必要があります(不正競争防止法2条6項)。

 実際の事案では、①秘密管理性の有無が問題となることが多いです。
 不正競争防止法にいう営業秘密の要件としての秘密管理性が認められるためには、①当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることを認識できるようにしていることや、②当該情報にアクセスできる者が制限されていることが必要であるとか(東京地裁平成12年9月28日判決)、少なくとも、これに接した者が秘密として管理されていることを認識し得る程度に秘密として管理している実体があることが必要である(東京地裁平成21年11月27日判決)とされています。
 社員の多くがアクセスできるような情報は、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であっても、①秘密管理性の要件を欠き、不正競争防止法では保護されないことになります。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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