労働審判手続の概要

労働審判手続の概要

 労働審判手続は,裁判官である労働審判官1名と,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名で組織する労働審判委員会が,当事者の申立てにより事件を審理し,調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試みつつ,当事者の権利関係を踏まえて事案の実情に即した解決をするために必要な労働審判を行う手続です。
労働審判手続
参考元:裁判所ホームページ(http://www.courts.go.jp/saiban/wadai/2203/

労働審判手続の主な特徴

 労働審判手続の主な特徴としては,以下のようなものが挙げられると思います。
 ① 申立てから80日もしないうちに約80%の紛争が解決します。調停が成立せず訴訟に移行した場合は時間がかかりますが,労働審判手続だけであれば,退職した社員が,次の就職先を見つけるまでのわずかな期間を利用して労働審判を申し立て,それなりの金額の解決金を獲得してから転職することも十分に可能です。訴訟を提起することまでは躊躇する労働者であっても,労働審判であれば申し立ててくる可能性が高くなります。
 ② 裁判官(労働審判官)1名が,常時,期日に同席しており,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名とともに,権利義務関係を踏まえた調停を行うため,調停内容は合理的なもの(訴訟で争った場合の判決に近いもの,社内で説明がつきやすいもの,労働者が納得しやすいもの)となりやすくなります。
 ③ 労働審判手続で調停がまとまらなければ,たいていは調停案とほぼ同内容の労働審判が出され,労働審判に対して当事者いずれかが異議を申し立てれば自動的に訴訟に移行することになります。調停をまとめず,労働審判に異議を出せば必ず訴訟対応が必要となるため,さらに時間とお金を費やしてまで訴訟を続ける価値がある事案でなければ,調停案や労働審判の内容に多少不満があっても,労働審判手続内で話をまとめてしまった方が合理的と判断されるケースが多いです。

労働審判手続の対象となる紛争

 労働審判手続の対象となる紛争は,「労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について個々の労働者と事業主との間に生じた民事に関する紛争」(個別労働関係民事紛争)です。労働者と事業主との間の解雇に関する紛争,未払残業代に関する紛争,セクハラやパワハラに関する紛争等がこれに当たります。
 労働組合と使用者との間の集団的労使紛争は,個別労働関係民事紛争ではありませんので,労働審判手続の対象ではありません。ただし,組合員個々人と事業主との間の労使紛争は,労働審判手続の対象になり得ます。
 また,「民事に関する紛争」でなければならないため,行政事件の対象となる紛争は,労働審判手続の対象とはなりません。

 募集・採用等の労働契約成立前の紛争は労働審判手続の対象になりません。
 採用内定に至っている場合は,始期付解約権留保付労働契約が成立していると評価できれば,労働審判手続の対象になります。段階ですから,労働契約上の地位を争う紛争は対象となりませんが,募集・採用をめぐる損害賠償請求は対象となります。
 労働契約締結の有無や労働者性に関する紛争は,労働審判手続の対象になると考えられます。

労働審判員とは

 労働審判員は,労働関係に関する専門的な知識経験を有する者の中から,最高裁判所が任命します。この「労働関係に関する専門的な知識経験」とは,労働者又は使用者の立場で紛争の処理などに実際に携わった経験や,その経験を通じて身に付けた労働紛争についての実情や慣行,制度等の知識をいいます。
 労働審判員は,労働審判委員会の一員として,事件関係書類を閲覧し,労働審判手続の期日に出席し,当事者の話を聴き,争点整理や証拠調べを行い,調停成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み,調停成立に至らない場合は労働審判を行うなど,労働審判事件の審理全般に関与します。

労働審判事件の新受件数

 平成24年~平成28年の全国の労働審判事件新受件数は,以下のとおりです。,年間概ね3400件~3700件(東京は1000件~1100件)を推移しています。

 平成24年 3719件(東京1053件)
 平成25年 3678件(東京1046件)
 平成26年 3416件(東京1053件)
 平成27年 3679件(東京1129件)
 平成28年 3414件(東京1035件)

労働審判事件の平均審理期間

 平成24年~平成28年の労働審判事件の審理期間は次のとおりです。平均審理期間は78.1日です。

 1か月以内   510件   2.8%
 2か月以内  5547件  31.0%
 3か月以内  6449件  36.0%
 6か月以内  5229件  29.2%
 1年以内    175件   1.0%
 1年を超える    5件   0.0%
 合計    17915件 100.0%

労働審判事件の期日実施回数

 平成24年~平成28年の労働審判事件の期日実施回数は次のとおりです。全体の約72%が第2回期日までに労働審判手続を終えています。

 0回    962件   5.4%
 1回   4956件  27.7%
 2回   6993件  39.0%
 3回   4698件  26.2%
 4回以上  306件   1.7%
 合計  17915件 100.0%

労働審判手続の解決率

 平成24年~平成28年の労働審判手続の終了原因は,以下のとおりです。
 調停成立69.8%+労働審判で異議が申し立てられなかったケース約7%=76.8%です。
 取下げ8.1%には,手続外で和解が成立するなどして労働審判手続が取り下げられたケースも含まれると考えられますので,労働審判手続全体の解決率は80%前後と考えられます。
 ① 労働審判   3042件  17.0%
  (異議が申し立てられたケースが1781件,異議が申し立てられなかったケースが1261件)
 ② 調停成立  12499件  69.8%
 ③ 24条終了   794件   4.4%
 ④ 取下げ    1453件   8.1%
 ⑤ 却下・移送等  127件   0.7%
  合計     17915件 100.0%

  • 残業代請求対応の弁護士

弁護士法人四谷麹町法律事務所

〒102-0083
東京都千代田区麹町5丁目2番地 K-WINGビル7階
03-3221-7137

Copyright ©弁護士法人四谷麹町法律事務所(東京)|解雇,残業代請求,労働審判,団体交渉,問題社員などの労働問題の対応,相談 All Rights Reserved.
Return to Top ▲Return to Top ▲