労働審判の対応(会社経営者側)

労働審判の対応(会社経営者側)

労働審判の書類が裁判所から届いたら、労働審判の対応は東京の弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。

 労働審判手続では,第2回期日までに主張及び証拠の提出を終え(労働審判規則27条),3回以内の期日で審理を終結することとされていますが(労働審判法15条2項),これは直ちに第2回期日以降も会社の主張立証を認めてもらえるということを意味しません。実際の労働審判手続では,第1回期日で事実審理を終えて心証を形成し,労働審判委員会が形成した心証に基づき直ちに調停に入ることは珍しくありません。第2回以降の期日が開催された場合であっても,調停をまとめるのにあてられ,追加の事実審理はなされないことが多いというのが実情です。
 したがって,労働審判事件は「第1回期日までが勝負」であり,第1回期日までに言うべきことを全て言っておく必要があります。具体的には,労働審判の書類が裁判所から届いて2~3週間程度のうちに会社の反論を的確に記載した答弁書を作成し,第1回期日には事情をよく知る会社関係者が代理人弁護士とともに出頭して,労働審判委員会からの質問に的確に答えられるよう対応しなければなりません。
 このような短期間での準備が間に合わないまま第1回期日に臨み,十分な反論ができないと,会社に一方的に不利な条件で調停が進められることになりかねません。調停に応じないこともできますが,調停がまとまらなければ会社に不利な内容の労働審判が出されてしまいます。労働審判に対しては2週間以内に異議を申し立てて訴訟で争うことは可能ですが,訴訟に移行した場合の金銭的・時間的負担は大きなものになるのが通常です。その結果として,不本意な内容で調停に応じざるを得ないことになりかねません。
 不本意な内容で調停に応じるようなことにならないようにするためには,労働審判の書類が裁判所から届いたら一日も早く弁護士に相談して答弁書の作成に着手し,申立書に記載された主張に対し的確に反論しなければなりません。東京で会社経営者のために労働審判の対応を数多く行ってきた弁護士をお探しでしたら,弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談下さい。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎
弁護士 飯島   潤
弁護士 別所 佳 祐

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目 次

労働審判手続の概要

労働審判制度の目的と特徴 Menu

 労働審判制度は,個別の労働関係の民事紛争を,裁判所において,原則として3回以内の期日で,迅速,適正かつ実効的に解決することを目的として設けられた制度で,平成18年4月に始まりました。
 労働審判手続とは,裁判官である労働審判官1名と,労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名で組織する労働審判委員会が,当事者の申立てにより事件を審理し,調停の成立による解決の見込みがある場合にはこれを試みつつ,当事者の権利関係を踏まえて事案の実情に即した解決をするために必要な労働審判を行うという制度です。つまり,個別労使紛争を,通常の民事裁判ではなく,労使の専門家と裁判官が一緒になって審理し,迅速で柔軟な解決をすることができるという司法制度ということです。

労働審判手続
参考元:裁判所ホームページ(http://www.courts.go.jp/saiban/wadai/2203/

労働審判手続の対象 Menu

 労働審判手続の対象となるのは,「個別労働関係民事紛争」です。したがって,集団的労使紛争,すなわち労働組合と使用者との間の紛争は対象となりません。
 募集及び採用に関する紛争は,労働契約成立前の段階ですから,労働契約上の地位を争う紛争は対象となりませんが,募集・採用をめぐる損害賠償請求は対象となります。ただし,男女雇用機会均等法違反や,不当労働行為を理由とする募集・採用差別については,法律の定めによると考えられますので,契約上の地位を争う紛争も対象になると考えます。
 また,対象は「民事紛争」でなければならないため,公務員の懲戒処分や配転に関する紛争・非常勤公務員の雇い止め等,公務員の任用関係については対象となりません。

労働審判事件の管轄 Menu

 労働審判事件の管轄は,次の①~③のいずれかです。
①相手方の住所,居所,営業所もしくは事務所の所在地を管轄する地方裁判所
②紛争が生じた労働者と事業主との間の労働関係に基づいて,当該労働者が現に就業し,もしくは最後に就業した当該事業主の事業所の所在地を管轄する地方裁判所
③当事者が合意で定める地方裁判所

 ①の「営業所」,「事務所」は,ある程度独立して業務が行われる場所を指します。一方,②の「事業所」は,①の「営業所」,「事業所」のように独立している必要は無く,現に就業していた場所であれば,支店登記がされていなかったり,他の営業所等の一画であっても良いと考えます。
 また,労働審判事件は,各地方裁判所の本庁で取扱うことになっていましたが,平成22年4月から,東京地方裁判所立川支部,福岡地方裁判所小倉支部でも取扱いが開始され,平成29年4月からは,長野地方裁判所松本支部,静岡地方裁判所浜松支部,広島地方裁判所福山支部でも取扱いが開始されることになりました。

労働審判事件の移送 Menu

 労働審判事件の移送は,管轄違いを理由とする移送と,裁量移送の2種類があります。

1 管轄違いを理由とする移送
 管轄ではない裁判所に労働審判手続の申立てがされたとしても,裁判所は,その申立てを却下することができません。このような場合,裁判所は,その申立てを管轄裁判所に移送することになります。

2 裁量移送
 管轄の裁判所に労働審判手続が申立てられ受理されたとしても,移送した方が当事者に便宜であったり,事件を処理するために適当と認められるときは,他の裁判所に事件を移送することができます。
 この「事件を処理するために適当と認められるとき」とは,事件の関係人の住所等の関係から,事件処理のために多くの時間と費用を要する場合などが考えられます。

労働審判員とは Menu

 労働審判員は,労働関係に関する専門的な知識経験を有する者の中から,最高裁判所が任命します。この「労働関係に関する専門的な知識経験」とは,労働者又は使用者の立場で紛争の処理などに実際に携わった経験や,その経験を通じて身に付けた労働紛争についての実情や慣行,制度等の知識をいいます。
 労働審判員は,労働審判委員会の一員として,事件関係書類を閲覧し,労働審判手続の期日に出席し,当事者の話を聴き,争点整理や証拠調べを行い,調停成立による解決の見込みがある場合にはこれを試み,調停成立に至らない場合は労働審判を行うなど,労働審判事件の審理全般に関与します。

労働審判手続の流れ Menu

 労働審判手続の全体像については,次の図が分かりやすいです。

労働審判手続の全体像
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引用元:裁判所ホームページの労働審判手続に関するページ

労働審判事件の審理の流れ Menu

①第1回期日前
 労働審判申立書が会社に届いたら,有効な証拠を集め,答弁書を作成していきます。労働審判手続は,充実した答弁書を作成し,第1回期日に備えることが最も重要で,そのためには,法律知識や主張立証の技術が必要になってきますので,早い段階で,使用者側の労働専門の弁護士に依頼することをお勧めします。第1回期日は原則変更してもらえませんので,特定の弁護士に依頼する場合は,急いで弁護士のスケジュールを確保してもらう必要があります。
 また,労働審判期日では,緊張して事実を正確に伝えることができなりがちですので,事前に提出する答弁書に言いたいことをしっかり盛り込んでおき,言いたいことが言えないまま終わってしまうことがないようにしましょう。

②第1回期日
 労働審判期日は,当事者が本音を率直に話せるよう口頭で主張することが原則となっており,労働審判委員会から事実関係について質問されますので,期日当日は,問題となる事実関係について直接体験した人物が出頭する必要があります。
 第1回期日は,通常2時間程度かかり,争点及び証拠の整理,証拠調べを行います。
 なお,平成27年までの統計では,労働審判事件全体の約30%が,第1回期日で事実審理を終えており,第2回が開催されないことも珍しくありません。
 第2回期日を行うことになった場合には,当事者間で第2回期日に行う手続及び準備すべきことを確認し,準備に必要な期間を考慮した上で,第2回期日の日程調整を行います。

③第2回期日
 第2回期日では,第1回期日で,当事者間で第2回期日に行うこととして確認した証拠調べを実施することになります。
 また,労働審判委員会から調停案が提示された場合には検討し,直ちに結論が出ない場合は調停案を持ち帰り,第3回期日までに検討することになります。
 平成27年までの統計では,労働審判事件全体の約71%が,第2回期日以内に事実審理を終えています。

④第3回期日
 第3回期日では,労働審判委員会が今までの審理を基に調停成立による解決を試み,それが難しい場合には,審理を終結する宣言をし,労働審判を行います。

労働審判事件の新受件数 Menu

 平成24年~平成28年の全国の労働審判事件新受件数は次のとおりで,年間概ね3400件~3700件(東京は1000件~1100件)を推移しています。

平成24年 3719件(東京1053件)
平成25年 3678件(東京1046件)
平成26年 3416件(東京1053件)
平成27年 3679件(東京1129件)
平成28年 3414件(東京1035件)

労働審判事件の平均審理期間 Menu

 平成24年~平成28年の労働審判事件の審理期間は次のとおりで,平均審理期間は78.1日です。

1か月以内   510件   2.8%
2か月以内  5547件  31.0%
3か月以内  6449件  36.0%
6か月以内  5229件  29.2%
1年以内    175件   1.0%
1年を超える    5件   0.0%
合計    17915件 100.0%

労働審判事件の期日実施回数 Menu

 平成24年~平成28年の労働審判事件の期日実施回数は次のとおりで,全体の約72%が第2回期日までで事実審理を終えています。

0回    962件   5.4%
1回   4956件  27.7%
2回   6993件  39.0%
3回   4698件  26.2%
4回以上  306件   1.7%
合計  17915件 100.0%

労働審判手続での解決率 Menu

 平成24年~平成28年の労働審判手続での解決率は,次のとおりです。④取下げのケースには,手続外で和解が成立したため取り下げられたケースも含まれると考えられますので,全体の解決率は80%前後(①労働審判で意義が申し立てられなかったケース約7%+②調停成立約69.8%+取下げのうち手続外での和解4%前後=約80.8%)と思われます。

①労働審判   3042件  17.0%
(内,異議が申し立てられたケースが1781件,異議が申し立てられなかったケースが1261件。)
②調停成立  12499件  69.8%
③24条終了   794件   4.4%
④取下げ    1453件   8.1%
⑤却下・移送等  127件   0.7%
合計     17915件 100.0%

労働審判手続を申し立てられたら

労働審判の勝負のポイント Menu

 労働審判の勝負のポイントを一言でいうと,「第1回期日までが勝負」です。
 労働審判手続では,申立人は労働審判手続の申立書において,相手方は答弁書において,全ての主張と立証計画を記載して提出し,第1回期日では争点及び証拠の整理をすることが前提とされています。
 平成27年までの統計では,労働審判事件全体の約30%が第1回期日で事実審理を終えており,第2回,第3回期日が開催されないことも珍しくありません。
 つまり,答弁書提出期限までに,どれだけ有効な証拠を集め,充実した答弁書を作成し,第1回期日に備えるかで勝負が決まってきます。

代理人の必要性 Menu

 労働審判法は,代理人をつけることを義務付けていませんので,会社が代理人をつけずに対応することは可能です。
 しかし,労働審判手続は,労働関係上の権利義務関係を踏まえて審理され,その手続の中で争点の整理や証拠調べ等が行われ,法的粋組に従った議論や法的な知識経験が必要なことから,民事訴訟と同様に,弁護士を代理人につけることが望ましいといえます。
 平成24年~平成28年の労働審判事件の統計では,申立人,相手方共に,全体の約85%が代理人をつけて対応しています。
 弁護士に代理を依頼する場合,まずは,弁護士に労働審判手続の第1回期日のスケジュールを確保してもらう必要があります。労働審判手続の第1回期日は,特別な事情が無い限り,労働審判手続の申立てから40日以内に指定されます。裁判所から指定された第1回期日を変更することは,準備不足のまま第1回期日が間近に迫っているような場合や,依頼した代理人弁護士の都合がつかない場合であっても,原則として認めてもらえません。
 特定の弁護士に依頼したい場合は,労働審判手続の申立書が会社に届いたら,当該弁護士に連絡し,スケジュールを確保してもらうよう努力すべきでしょう。

期日の変更 Menu

 労働審判手続の期日の変更は,顕著な事由がある場合でなければ認められません。なぜなら,労働審判手続において期日の変更を行う場合,当事者双方の他に労働審判員2名の日程調整もしなければならず,他の手続と比べて調整が困難であり,審理の遅延を引き起こしやすいからです。
 「顕著な事由」とは,単に「○○へ出張する」といった理由だけでは認められない可能性が高く,認められやすい例としては,変更を申し立てる側に責任のない急病(診断書などの証明する書類が必要な場合があります。)などが考えられます。
 なお,第1回期日を変更した場合に答弁書の提出期限も変更されるのかについては,充実した答弁書を作成するために必要な準備期間が確保されているか等を考慮して,労働審判委員会が判断します。

答弁書作成のポイント Menu

 労働審判手続では,第1回期日まででほぼ勝負が決まるため,充実した答弁書を作成し提出することは極めて重要です。労働審判手続は訴訟と異なり第1回期日で審理を終えることが多いため,訴訟でみられるような「追って答弁する。」などの形式的な答弁のみが記載された答弁書は許されず,下記の答弁書の記載事項を記載する必要があります。
 労働審判期日に出頭する会社関係者は,労働審判に不慣れなことが多いため,労働審判期日では,緊張して事実を正確に伝えることができなくなりがちです。言いたいことが言えないまま終わってしまうことがないようにするためには,事前に提出する答弁書に言いたいことをしっかり盛り込んでおいて,労働審判の期日に話さなければならないことをできるだけ減らしておくのが,最も効果的だと思います。ただし,不必要にページ数の多い答弁書は作成しないようにしましょう。同じ内容であれば,ページ数の少ない答弁書の方が言いたいことが伝わりやすく,優れているといえます。
 答弁書を裁判所に提出する際は,証拠の写しも提出するのが通常ですが,東京地方裁判所の運用では,労働審判員には答弁書のみが事前に送付され,証拠の写しについては送付されない扱いとなっています。このため,労働審判員は自宅等で証拠と照らし合わせながら答弁書を検討することができず,別件で裁判所に来た際などに証拠を閲覧し,詳細な手控えを取ったりして対応しているようです。また,労働審判官(裁判官)も,限られた時間の中で大量に事件処理を行っているため,答弁書の記載のみからでも,主張内容が明確になるようにする必要があります。
 証拠の中でも特に重要なものについては,証拠と照らし合わせなくても証拠の記載内容が分かるように答弁書に書き込んでおくことをおすすめします。
 答弁書は労働審判委員会を「説得」するものです。労働審判委員会に会社の主張を理解してもらえず不当な結果になってしまった場合は,労働審判委員会を説得することができなかった自分たちに問題があったと受け止めるスタンスでいることが重要です。

答弁書の記載事項 Menu

 労働審判手続では,申立人は申立書において,相手方は答弁書において,全ての主張と立証計画を記載して提出し,第1回期日で争点及び証拠の整理をします。
 労働審判手続の答弁書には,実質的な記載事項として,次のものを記載しなければなりません。

①申立書の趣旨に対する答弁
②労働審判手続の申立書に記載された事実に対する認否
③答弁を理由づける具体的な事実
④予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
⑤予想される争点ごとの証拠
⑥当事者間においてされた交渉その他申立てに至る経緯の概要

答弁書の提出期限 Menu

 答弁書の提出期限は,第1回期日の1週間前から10日前に設定されることがほとんどです。提出期限は,可能な限り遵守しなければなりません。
 第1回期日間際になって答弁書を提出した場合,労働審判官(裁判官)・労働審判員が答弁書の主張内容を十分に検討することができないため,会社側の主張を理解してもらえなくなるリスクが高くなります。
 相手方(主に使用者側)は,「答弁書の作成に十分な時間が取れないから第1回期日を変更したい」,「主張立証を第2回期日までさせてほしい」ということになりがちですが,第1回期日の変更は原則認められませんので,第1回期日までに全力で準備していく必要があります。
 労働審判手続は,第1回期日までが勝負ですので,弁護士に依頼したのが答弁書提出期限の直前または提出期限経過後の場合であっても,出来る限りの準備をして答弁書を提出するのが原則です。しかし,事件の重要性・複雑性等によっては,期日変更と併せて答弁書の提出期限を変更してもらうことを検討せざるを得ないケースも考えられます。

答弁書の作成に十分な時間が取れない場合 Menu

 労働審判手続の第1回期日は,特別の事由がある場合を除き,労働審判手続の申立てがされた日から40日以内の日に指定されます。「特別の事由」とは,やむを得ず期日の指定が遅れた場合,事案が複雑で答弁書作成に時間を要することが見込まれる場合等,申立ての日から40日以内に第1回期日が指定されたのでは十分な準備ができないと見込まれる場合等です。

補充書面 Menu

 労働審判手続では,答弁書に記載された相手方の主張に対する反論や,これに対する再反論の主張は,原則として労働審判手続の期日において口頭でするものとされておりますが,例外的に,これを補充する書面(補充書面)を提出することが認められています。
 これは,書面審理に慣れていない労働審判員の便宜や,迅速性の確保を考慮しており,労働審判手続の期日で当事者が口頭で主張を行い,これを聴いた労働審判委員会が争点及び証拠の整理をすることで,短期間で事案の真相に迫ることができるよう考えられたものです。
 もっとも,相手方(主に会社側)は,補充書面を出さないのが通常です。

労働審判期日

第1回期日の重要性 Menu

 労働審判規則27条では,「当事者は,やむを得ない事由がある場合を除き,労働審判手続の第2回の期日が終了するまでに,主張及び証拠書類の提出を終えなければならない。」と定められていますが,実際の運用では,第1回期日で審理を終え,調停に入ることが多いため,第2回期日まで追加主張できるものと考えるべきではありません。
 第1回期日終了後に追加主張しようとしても,ほとんどの場合は認められませんので,追加主張の必要性が高い場合は,答弁書提出の段階では主張できなかった合理的理由や追加主張の必要性などを説明し,労働審判委員会の納得を得るよう努める必要があります。

期日には誰が出頭するのか Menu

 労働審判期日では,双方の主張を基礎づける事実関係について質問されます。その際,事実関係を説明するのは,原則として代理人弁護士ではなく,会社関係者の方になります。代理人弁護士は,法的主張や複雑な事実関係の整理,調停等に関するものについて発言していくことになります。
 したがって,労働審判期日には,問題となる事実関係について直接体験した人物が出頭する必要があります。直接体験した人物ではなく,報告を受けただけの人物しか出頭しなかったり,会社関係者は一人も出頭せず代理人弁護士だけが出頭するとなると,証拠価値が低く見られがちで,具体的事実関係について即答できないことになりかねず,会社が不利益を被るリスクが高くなります。
 また,調停に応じるかどうか判断ができる立場の人物が同行することも望ましいです。調停の案を一旦会社に持ち帰り検討してからでないと,調停をまとめられるかどうか判断することができないというのでは,まとまる調停もまとまらず,訴訟に移行してしまい長期間に渡り戦い続けなければならなくなる可能性が高くなります。調停に応じるかどうかの判断ができる立場の人物が同行できない場合には,例えば,労働審判期日中の時間は電話に出られるようにしておき,調停に応じるかどうかを電話で指示できるようにしておくなどの対応が必要です。

第1回期日にかかる時間 Menu

 労働審判期日の第1回期日にかかる時間は,通常2時間程度です。
 労働審判手続は,適切,迅速な解決を目的としていますので,第1回期日では,双方の主張を基礎づける事実関係などの解明のため,集中的な審理を行います。
 当事務所がこれまでに経験した労働審判事件の第1回期日は,最短で1時間20分,最長で3時間30分かかっています。したがって,最低でも2時間,できれば3時間30分程度の時間を取られても不都合が生じないよう,スケジュールを調整しておくことが望ましいです。

第2回以降の期日にかかる時間 Menu

 労働審判手続は,第1回期日で事実審理を終了することが多いため,第2回以降の期日は,調停をまとめるための期日になるのが通常であり,第1回期日よりも短時間で終わる傾向にあります。第2回期日の前に労働審判委員会から調停案が示されていて,当事者が第2回期日で調停案を直ちに受け入れたような場合は,期日が30分程で終わったりすることもあります。ただし,第2回期日で当事者から新たな主張がなされ,それが審理されるようなことになった場合は,事実審理に時間がかかることになります。他にも,当事者双方が調停案を受け入れなかったものの,もう少しで調停が成立しそうなときは,時間をかけて交渉を継続し,その日中の調停成立を試みる場合があります。当事務所でも,第2回期日に2時間30分かかったことがありました。
 したがって,第2回期日は,事前に話がついている場合を除き,2時間程度かかっても問題のないようスケジュールを調整するべきでしょう。

当事者が期日を欠席した場合 Menu

 労働審判手続は,労働審判手続の期日に当事者双方が出頭し,労働審判委員会が双方の主張を聴取しながら真実に迫っていく手続であり,原則,3回以内の期日で審理を終了しなければなりません。したがって,当事者は,期日を無駄にすることのないよう,必ず出頭することが求められています。
 しかし,実際に当事者の一方が期日に欠席した場合には,出頭している当事者の方から主張等を聴いて審理を進めることが可能なことから,労働審判委員会が相当であると判断したときは,審理を行うことになります。
 たとえば,相手方が全く連絡することなく労働審判手続の期日に欠席した場合には,申立人に主張・立証を行わせ,申立人の言い分が相当と認められるのであれば,申立人の意向を確認した上で,申立人の言い分どおりの労働審判が行われることが考えられます。もっとも,審理を慎重に進めるため又は当事者の納得を得られやすくするために,次回期日を指定し,相手方に対して期日の呼出しを行い,それでも相手方が欠席した場合に,同様の手続を行うということも考えられます。
 なお,申立人が連続して2回,呼び出しを受けた労働審判手続の期日に出頭せず,又は呼出しを受けた期日において陳述をしないで退席したときは,裁判所は申立ての取り下げがあったものとみなすことができます。

利害関係人の参加 Menu

 労働審判手続の結果に利害関係を有する者は,労働審判委員会の許可を受けて,労働審判手続に参加することができます。また,労働審判委員会は,相当であると認めるときは,労働審判の結果について利害関係を有する者を労働審判手続に参加させることができます。
 利害関係人が労働審判手続へ参加を申立てて,労働審判委員会の許可を受けて労働審判手続に参加することを「任意参加」,労働審判委員会が利害関係人を労働審判手続に参加させることを「強制参加」といいます。

期日の傍聴 Menu

 労働審判手続は非公開とされていますが,労働審判委員会が相当と認める場合には,傍聴を許可することがあります。
 たとえば,事情をよく知る会社の担当者等,労働審判手続において参考人となるような場合に傍聴が許可されることがあります。他にも,新任の労働審判員や司法修習生等の研さんのため必要がある場合にも,傍聴が許可されることがあります。
 傍聴が許可されないケースとしては,傍聴を許可することで当事者が本音を話せなくなるおそれがあるときや,労働審判委員会の柔軟な手続の進行に影響をおよぼすおそれがあるときなどが考えられます。

どのような場合に第4回期日が行われるのか Menu

 労働審判手続は,特別な事情がある場合を除き,3回以内の期日で審理を終了しなければならないと定められています。
 民事訴訟において,期日と期日の間は1か月程度とする運用が定着してきたことから,労働審判法は期日を3回以内に制限することで,労働審判申立てから,長くても3~4か月程度で審理を終結するよう,審理期間の短縮化を図ったものと考えられます。
 4回目の期日が行われる「特別の事情がある場合」とは,参考人が急病で出頭できなくなったことにより別の日に期日を設ける場合や,調停が4回目の期日に成立することが確実である場合等,限定的なものと考えられます。

労働審判手続の終決と異議申立て

労働審判手続の終決 Menu

 労働審判手続は,次のいずれかにより終決します。
①調停の成立
②労働審判の言い渡し
③労働審判法24条1項による終了
④取下

 ②労働審判の言い渡しは,審判書を作成して当事者に送達する方法を原則としていますが,実務上は,全ての当事者が出頭している場合は審理を終結する期日において口頭で主文及び理由の要旨を告知する方法により労働審判が言い渡される場合がほとんどです。審判書の場合は,審判書が送達された時,口頭の場合は告知された時に労働審判の効力が生じます。
 ③について,労働審判法24条1項は「労働審判委員会は、事案の性質に照らし、労働審判手続を行うことが紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でないと認めるときは、労働審判事件を終了させることができる。」と定めています。労働審判法24条1項により事件が終了した場合は,労働審判事件が終了した際に係属していた地方裁判所に訴え提起があったものとみなされます。

労働審判の内容 Menu

 労働審判の内容は,労働審判委員会が提示した調停案に近い内容の労働審判が出されることがほとんどです。
 理由の要旨は,「提出された関係証拠及び審理の結果認められる当事者間の権利関係並びに労働審判手続の経過を踏まえると,本件紛争を解決するためには,主文のとおり労働審判することが相当である。」というような定型的な理由のみが記載されることが多いです。

労働審判が確定した場合の効力 Menu

 労働審判は,裁判上の和解と同一の効力を有します。
 その内容によっては,形成力,執行力が認められ,給付を命じる主文を含むものは債務名義となります。

労働審判に対する異議申立て Menu

 労働審判に不服のある当事者は,審判書を受け取った日又は期日において労働審判の告知を受けた日から2週間以内に,裁判所に異議の申立てをすることができます。
 異議の申立てがあると,異議を申し立てた当事者に有利な部分を含め,労働審判はその効力を失い,申立ての時に遡って,事件が継続している地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。
 異議申立てを取り下げることはできません。
 なお,口頭により労働審判の告知を受けた日から2週間が経過すれば,審判書に代わる調書の送達を受けていなくても異議申立て期間は進行します。

労働審判に対し異議を申し立てるかどうかの判断 Menu

 労働審判に異議を申立て訴訟で戦った結果,労働審判で支払いを命じられた金額よりも多額の金銭の支払を命じられることは珍しくありませんので,労働審判に異議を申し立てるか否かは慎重に検討しなければなりません。労働審判に異議を申し立てるか否かは,当該労働審判が妥当かどうか,また,他の労働者への波及効果等も考慮して決定すべきものです。
 労働審判の内容に若干の疑問があったり,納得できないと感じる部分があったとしても,問題の程度が大きくない場合や,他の労働者への波及効果が低い場合は,労働審判に異議を申し立てる必要性は低いと考えます。
 また,代理人の弁護士が異議を申し立てるべきだという意見の場合は,異議を申し立てて訴訟で争うことも検討に値します。しかし,代理人の弁護士が労働審判手続で調停をまとめるべきだとか,労働審判に対し異議を申し立てずに解決した方がいいという意見を述べている場合は,異議を申し立てて訴訟で争っても良い結果に終わることは稀ではないかと思います。

労働審判に対する異議申立てを取下げることはできるのか Menu

 労働審判に対する異議申立ては,申立人,相手方いずれからもできます。しかし,申立人から労働審判に対し異議が申し立てられた場合,労働審判は訴訟へ移行し,その旨の通知が相手方にいくことから,相手方が改めて異議を申し立てるということは考えにくく,申立人が労働審判の異議の申立てを取り下げるとなると,相手方の異議の申立ての機会を奪うことにもなりかねません。
 したがって,労働審判に異議が申し立てられ,労働審判が失効した後は,労働審判の異議申立てを取り下げることはできないものと考えます。

訴訟移行

労働審判事件が訴訟に移行するケース Menu

 労働審判事件が訴訟に移行するのは,①労働審判に対する異議の申立て,②労働審判の取消決定,③労働審判事件の終了の3種類のケースがあります。

① 労働審判に対する異議の申立てによる訴え提起
 労働審判について当事者から異議の申立てがなされたら,労働審判は失効し,当該労働審判事件を行っていた地方裁判所に訴えの提起があったものとみなされます。

② 労働審判の取消決定による訴え提起
 労働審判の審判書を送達する際に,民事訴訟では公示送達によることとなるようなときには,裁判所は,決定により労働審判を取り消します。労働審判を取り消す決定が確定した場合,①と同様に訴えの提起があったものとみなされます。

③ 労働審判事件の終了による訴えの提起
 労働審判委員会が,事件の内容が労働審判手続で解決すべきではないと認めた場合には,労働審判委員会は,労働審判事件を終了させることができます。この場合も,①,②と同様に訴えの提起があったものとみなされます。

労働審判事件が訴訟に移行した場合の流れ Menu

 労働審判事件が訴訟に移行すると,地方裁判所に労働審判事件記録が引き継がれます。そして,裁判長が,労働審判手続の申立書等の書面について審査を行い,不備があれば原告(労働審判事件の申立人)に補正を命じます。原告が補正に応じない場合には,裁判所は,訴状とみなされた労働審判手続の申立書等の書面を却下することになります。
 労働審判事件が訴訟に移行したとき,原告は,訴え提起の手数料を裁判所に納付することになります。この場合の手数料は,通常の訴え提起の手数料の額から,労働審判事件の申立て時に納付した手数料を控除した額になります。原告が訴え提起の手数料を支払わなかった場合には,訴状とみなされた労働審判事件の申立書等は却下されます。

労働審判事件が訴訟に移行した場合の訴状について Menu

 労働審判事件が訴訟に移行した場合に訴状とみなされるものは,労働審判手続の申立書,申立ての趣旨又は理由が変更された場合にはその期日の調書を指すものと考えられます。
 申立ての趣旨又は理由の変更が認められなかった場合,当該変更申立書は訴状とはみなされません。

労働審判手続で提出した資料は訴訟でも利用できるのか Menu

 労働審判事件が訴訟に移行した場合に,訴訟においても利用できる書面は,訴状とみなされる労働審判の申立書と,申立ての趣旨又は変更申立書のみです。
 これは,労働審判手続で提出した資料をそのまま移行後の訴訟で資料とすることが当事者の意思に反する場合が少なくないこと,また,労働審判手続と民事訴訟手続とでは手続の原則が異なり,資料を引き継ぐことが適当ではないことから定められたものと考えられます。
 したがって,当事者が,訴状とみなされる労働審判の申立書及び申立ての趣旨又は変更申立書以外の主張書面等を,移行後の訴訟における資料とするためには,改めて裁判所に提出する必要があります。 

その他

労働審判手続の申立ての取下げ Menu

 労働審判手続の申立ての取下げは,申立人が労働審判手続の期日で行うか,取下書を裁判所に提出する方法で行います。
 申立人が労働審判手続の申立てを取り下げた場合の効力は,労働審判手続の期日において口頭により申立てを取り下げたとき又は裁判所に取下書が到達した時に生じ,相手方の同意は不要です。
 申立人が労働審判手続の申立てを取り下げたら,裁判所から相手方に対しその旨が通知されます。
 ただし,次の3つの事項のいずれかに該当する場合には,通知されません。
①相手方が出頭した労働審判手続の期日において労働審判手続の申立てが取り下げられたとき
②労働審判手続の申立書の写しが相手方に送付される前に労働審判手続の申立てが取下げられたとき
③相手方が所在不明のときや外国にいるとき

 また,労働審判手続の申立ての取下げができるのは次のとおりです。
①調停の成立まで
②審判に対する適法な異議の申立て,審判の取消決定の確定,労働審判事件の終了により訴えの提起があったとみなされるまで
 なお,労働審判が訴訟へ移行した後は,労働審判手続の申立ての取下げはできないものと考えられますので,その場合は,訴えの取下げを検討することになります。

労働審判手続の申立ての却下 Menu

 裁判所は,労働審判手続の申立てが不適法であると認める場合は,その申立てを却下します。
 労働審判手続の申立てが却下されるケースは,例えば,その申立ての紛争が個別労働関係民事紛争に当たらない場合や,当事者に当事者能力又は労働審判手続に係る行為能力が無い場合などが考えられます。
 なお,労働審判手続の申立てが不適法であると認められる場合であっても,それを補正することが可能なときは,裁判所は直ちにその申立てを却下せず,申立人に対して相当期間を定め補正を命じた上で,それでも申立人が補正に応じない場合に申立てを却下するのが通常と考えます。
 申立書に不備がある場合や,申立手数料の納付が無い場合についても,裁判所は申立人に対して相当期間を定めて補正や納付を命じ,それでも申立人が応じない場合には,申立てが却下されるものと考えます。
 労働審判手続の申立書を却下する命令に対しては,即時抗告(不服の申立て)をすることができ,即時抗告期間は1週間とされています。

審判の取消し Menu

 審判は,審判書の送達を受けた日又は労働審判手続の期日において審判の口頭告知を受けた日から2週間以内に裁判所に対して異議の申立てがないときは,その効力が確定します。
 しかし,審判書を送達すべき場合において次に掲げる事由があるときは,裁判所の決定で審判が取り下げられます(労働審判法23条1項)。
①当事者の住所,居所その他送達すべき場所が知れないこと
②民事訴訟法第107条1項(書留郵便等に付する送達)の規定による送達ができないこと
③外国において送達すべき場所について,民事訴訟法第108条(外国における送達)の規定によることができず,又はこれによっても送達をすることができないと認められること
 なお,労働審判手続は,審理を終結してから審判を行うまでの間は極めて短いのが通常であり,審理の終結から審判書を送達するまでの間に,労働審判法23条の事由が発生するとは考えにくいため,事実上は,審判を取り下げることは少ないといえます。
 また,審理の終結前に,上記労働審判法23条の事項に該当する事由のあることが判明したときは,審判を行ったとしても裁判所が結局は取り消すことになるため,労働審判委員会が労働審判法24条1項により労働審判事件を終了させることになるものと考えます。
 審判を口頭で告知した場合は,審判書を送達することがないため,審判を取り消すことはないと考えます。

労働審判法24条による終了 Menu

 労働審判手続は,紛争を迅速かつ適正に解決するため,原則として3回以内の期日において審理を終了します。
 もっとも,事案の性質が,迅速かつ適正な解決を目的とする労働審判手続に適当でない場合や,審判や調停による解決に適さない場合には,労働審判委員会は,当該労働審判事件を終了させることができます。
 たとえば,次のケースが考えられます。
①差別や人事評価に関する事件
②事業主の雇用状況に関する全体的な審理を要する事件
③就業規則の不利益変更に関する事件
④労働審判手続の結果が他の従業員に影響を及ぼすおそれがある事件
⑤職務発明の対価に関する事件など高度な専門的知識を要する事件
 もっとも,これらに該当する場合であっても,当事者双方に労働審判手続で紛争を解決する意向があり,準備も十分になされている場合には,労働審判手続を行うことも考えられます。
 他方で,労働審判手続による解決が適当であると考えられる事件であっても,当事者双方が共に非協力的な態度をとる場合などは,3回以内の期日で審理を終えることが困難だと判断される可能性があります。
 したがって,労働審判法24条により労働審判事件を終了するか否かの判断は,労働審判委員会が,個別に判断していくものと考えます。

当事者の死亡等により当事者が労働審判手続を続行することができない場合 Menu

 労働審判手続は,当事者の死亡等により手続を続行することができない場合でも,中断することはありません。当事者に承継人がいれば当然に承継され,承継人は実質的に当事者の地位に就くことになります。
 なお,当事者の死亡による承継の場合は,当然に手続が承継されると考えられますが,相続放棄の申述期間中は承継人が確定的に明らかでないことから,事実上,手続を進めることはできないものと考えます。

労働審判員に支障が生じた場合 Menu

 労働審判手続は,労働審判官と労働審判員2名で組織する労働審判委員会で行われますので,労働審判員のどちらか一方に支障が生じた場合,労働審判官と1名の労働審判員だけで労働審判手続を行うことはできません。労働審判員の支障が一時的なものであれば,期日を変更も考えられますが,長期的な場合は,労働審判員の指定を取り消した上で,新たな労働審判員が指定されるものと考えます。

労働審判手続の分離や合併 Menu

 労働審判委員会は,労働審判手続の分離や合併を命じたり,その命令を取り消すことができます。これは労働審判委員会の裁量により行われるため,当事者はこれに対して不服を申し立てることはできません。
 労働審判事件の分離とは,1つの労働審判事件において複数の申立てが併合されている場合に,申立てごとに個別の手続に分けることをいいます。
 労働審判手続の合併とは,同一の裁判所に係属されている複数の労働審判事件を,同じ1つの手続で行うことをいいます。

調停又は審判前の措置 Menu

 労働審判委員会は,調停又は審判のために特に必要であると認める場合には,当事者の申立てにより,調停又は審判前の措置として,相手方その他事件関係人に対し,現状の変更又は物の処分の禁止その他調停又は審判の内容である事項の実現を不能にし又は著しく困難にさせる行為の排除を命じることができるとされています。
 この措置をとるためには,次の4つの要件が必要と考えられています。
①労働審判事件が係属中であること
②調停又は審判のために特に必要であること
③当事者から措置の申立てがあること
④相手方その他労働審判事件の関係人に対するものであること
 調停又は審判前の措置は,執行力がありませんが,裁判所は,この措置に従わない者に対し,過料の制裁を科すことができます。ただし,調停又は審判前の措置は,当事者及び参加人以外の事件の関係人に対しても命じることができますが,手続に参加していない事件の関係人に対しては,過料の制裁を科すことはできないものと考えます。また,調停又は審判前の措置に対して,相手方その他の事件の関係人が不服を申し立てることはできず,調停又は審判前の措置の申立ての却下に対しても,不服を申し立てることはできないと考えられます。

当事者以外による記録の閲覧又は謄写 Menu

 労働審判事件において,当事者及び利害関係のある第三者は,裁判所書記官に対し,労働審判事件の記録を閲覧又は謄写等を請求することができるとされています。労働審判手続は原則として非公開ですが,訴訟的性格が強く,当事者のみならず利害関係のある第三者も,労働審判事件の記録の内容を把握する必要性があることから,このような規定が置かれたものと考えます。ただし,労働審判手続において閲覧等の制限がされている場合には,当事者以外は,制限されている部分の閲覧等を請求することができません。

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