残業代請求対策(時間単価の抑制)

基本的発想

 残業代の時間単価は,「通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価×割増率」で算定されます。

 したがって,残業代の時間単価を抑制するためには,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価を抑制し,割増率を念頭に置いた労働時間管理を行う必要があります。

通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価の抑制

 通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,基礎賃金の時間単価であるから,分子の基礎賃金を抑制するか,分母の所定労働時間数等を増やせば,通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は下がることになります。

 もっとも,単に基礎賃金額を抑制したり,所定労働時間数等を増やしただけでは,労働条件が悪くなり,優秀な人材を採用することが難しくなってしまいます。

 基礎賃金に含まれない除外賃金や,時間単価が低い歩合給を支給することによって,会社に対する貢献に見合った賃金が支給されるよう工夫する必要があります。

除外賃金の支給

 除外賃金である家族手当,通勤手当,別居手当,子女教育手当,住宅手当,臨時に支払われた賃金,1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は,残業代算定の基礎賃金に含まれません。

 たとえば,月々の賃金の一部を家族手当等の除外賃金として支払ったり,月々の賃金額を抑制して賞与として支給する賃金の比率を高める等の工夫が考えられます。

 なお,除外賃金に該当するかどうかは,名称ではなく実質で判断されますので,「家族手当」や「通勤手当」といった名目で支給したとしても,除外賃金にあたるとは限りません。

定額残業代の支給

 残業代は基礎賃金には含まれませんので,定額残業代を採用することなどにより基礎賃金を抑制することも考えられます。

 定額残業代は,残業代(残業の対価)としての実質を有していないと基礎賃金に算入されますので,定額残業代で不足額がある場合には精算する等の配慮が必要です。

所定労働時間数

 所定労働時間数が多ければ分母が大きくなるので,残業代の時間単価が下がることになります。

 月給制では,1日の所定労働時間数や所定労働日数が少ないと所定労働時間数が少なくなることなどを念頭に置いて,1日の所定労働時間や所定労働日数を設定するようにしましょう。

 また,所定労働日に休暇を取得したとしても,所定労働日数に変更があったわけではありませんので,所定労働時間数には影響しません。休日が労働日ではないのに対し,休暇は労働日ではあるが権利として労働から離れることができる日をいいます。「休暇」という名称を付して休みを取らせたとしても,労働日でない日は休日であって休暇ではありません。

割増率

 割増率が最も高いのは,中小企業以外については月60時間を超える時間外労働時間の50%なのですから,中小企業以外については月60時間を超える時間外労働を抑制することが最も重要です。

 次に割増率が高いのは,休日労働時間の35%なのですから,休日労働を抑制する必要性も高いといえます。

 深夜労働については,25%の深夜割増賃金を加算することになるのですから,深夜労働はできる限り抑制すべきです。

 時間外労働の割増率は原則として25%ですが,通常の労働時間の賃金よりも時間単価が高くなりますので,月60時間以内の時間外労働であっても,抑制することが望ましいと考えます。

歩合給の支給

 歩合給の通常の労働時間・労働日の時間単価は,当該賃金計算期間の残業時間を含めた「総労働時間数」を分母として計算されるため,割増部分だけ支払えば足り,歩合給は固定給と比べて残業代額を抑制しやすいと考えます。

 たとえば,一月平均所定労働時間数が160時間で,総労働時間数が200時間の賃金計算期間に関し2万円の歩合給を支給する場合は,歩合給部分に関する通常の労働時間・労働日の賃金の時間単価は,次のとおりとなります。

 2万円÷200時間=100円/時

 歩合給部分に関する割増賃金の時間単価は割増部分だけなので,歩合給部分に関する時間外・休日・深夜割増賃金の時間単価は次のとおりとなります。

 時間外割増賃金の時間単価

  100円/時×0.25=25円/時

  60時間を超える時間外労働時間については,中小企業を除き

   100円/時×0.5=50円/時

 休日割増賃金の時間単価

  100円/時×0.35=35円/時

 深夜割増賃金の時間単価

  100円/時×0.25=25円/時

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