Q58 定年後再雇用を拒否したい社員がいる。

1 継続雇用制度(再雇用制度を含む)とは

 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年法)は,会社に,①定年の引き上げ,②継続雇用制度(再雇用制度を含む),③定年の廃止のいずれかの措置を講じるよう義務付けています。

 再雇用制度について,平成24年改正高年法までに労使協定等により再雇用基準を定めて制度を導入した会社の場合は,経過措置の対象となる者に対しては再雇用基準を適用することができますが,再雇用基準を定めていなかった会社の場合は,高年法9条3項に基づいて継続雇用の適否を検討していくことになります。

 ここでは再雇用基準を定めていない会社を念頭に高年法9条3項の説明をしていきます。

2 継続雇用の拒否は,解雇事由や退職事由に該当する場合にはできること  

 高年法9条3項は,継続雇用の実施及び運用に関する指針を定めるものとするとあります。

 そして,継続雇用の要否について,高年法9条3項を受けて公表された「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」には「心身の故障のため業務に耐えられないと認められること,勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には,継続雇用しないことができる。」「就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を,継続雇用しないことができる事由として,解雇や退職の規定とは別に,就業規則に定めることもできる。また,当該同一の事由について,継続雇用制度の円滑な実施のため,労使が協定を締結することができる。」という規定があります。  

 したがって,会社が定年後再雇用を拒否できるかを検討する際には,当該社員が就業規則に定める解雇,退職事由に該当するかどうかを考える必要があります。解雇,退職事由に該当し,継続雇用に応じないことに客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であると認められる場合には,継続雇用に応じる必要はありません。

3 高年法違反の効果(裁判での争われ型)

(1) 雇用確保措置を導入していない場合  

 高年法は,雇用政策上の行政法規であり,私法上の効力を有していないと解されていますので,地位確認請求や賃金請求はできないと解されています。 社員が不法行為に基づく損害賠償請求をしてくる可能性はありますが,高年法違反によって直ちに不法行為が成立するわけではありません。

(2) 導入している雇用確保措置の有効性が問題となる場合  

 雇用確保措置が無効と判断された場合には,(1)と同様の問題となると考えられています。

(3) 導入している雇用確保措置の運用の適否が問題となる場合  

 社員からは継続雇用契約が成立したと主張して雇用契約上の地位確認及び賃金請求又は不法行為に基づく損害賠償請求をしてくることが想定されます。  

 雇用契約が成立しているというためには,少なくとも労働者が従事する業務の概要および賃金額が合意(申し込みと承諾)していることが必要ですので,各会社がどのような継続雇用規定を有し,どのように運用しているかを確認する必要があります。

 具体的には,就業規則に再雇用者について一律に賃金等を定めているのか,各人ごとに賃金等を定めているかどうかです。どちらにあてはまるかによって,社員から請求される内容も異なってくると考えられます。

4 今後の対応策

 会社の規模によって,毎年定年者が出る会社もあれば,数年置きに定年者が出る会社もあるので,各会社によって対応の仕方を工夫する必要がありますが,以下の2点はどのような規模の会社で会っても共通して言えることだと考えます。

(1) 基準を明示的かつ客観的なものにすること  

 当該社員がどのような基準に該当することから,再雇用にはならない(なる)のかについて,当該社員が予測できるようにしておくべきです。

(2) 前もって対象となる社員の意向を聴取すること  

 定年間際になって再雇用はしませんという話をすることはトラブルの原因になります。そこで,定年の半年程度前から本人の希望を聞いた上で,定年後再雇用の可否を検討しておくことでトラブルの原因を減らすことができると考えます。

文責:飯島 潤

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