問題社員36 ホウレンソウ(報・連・相)ができない。

1 ホウレンソウ(報・連・相)の重要性

 いわゆるホウレンソウ(報・連・相)は、「報告・連絡・相談」の略語です。一般的には、部下が仕事を遂行する上で上司との間で取る必要のあるコミュニケーションの手段を表す言葉として、ホウレンソウ(報・連・相)が用いられることが多いようです。
 報・連・相が適切に行われれば、仕事の進捗状況や会社の問題点についての情報を共有することができるようになります。その結果、個々の社員としてではなく、組織として問題点に対処することができますので、リスクを管理したり、仕事を効率的に処理したりしやすくなります。
 逆に、報・連・相が適切に行われていない組織においては、問題点が上司等に伝わらない結果、十分なリスク管理ができずに会社が大きな損害を被ることになりかねません。また、仕事の処理能力が不十分な社員が孤立した状態で仕事をすることになりがちのため、仕事の効率が悪くなったり、成果が上がりにくくなったりしやすくなります。
 現在、報・連・相が適切に行われることの重要性は、ますます高まっているといえるでしょう。

2 適切な報・連・相とは

 もっとも、部下が上司に対して報・連・相すべき対象を吟味せずに何でも報・連・相すればいいというものではありませんし、効率的に報・連・相ができるよう工夫する必要もあります。何でも報・連・相しなければならないとしたのではあまりに業務効率が悪くなりますし、部下が自主的に判断して仕事を進める能力が鍛えられにくくなってしまいます。また、報・連・相の仕方について工夫しないと、部下が上司に報・連・相したいことがうまく伝わらなかったり、余計な時間がかかってしまったりしがちになります。
 何を報・連・相すべきかは、ケース・バイ・ケースの判断が求められることが多いですが、上司から部下に対して何らかの指標を示してやらないと、適切な報・連・相ができるかどうかは、部下個人の資質により大きく左右されてしまいます。上司と部下でよくコミュニケーションを取って認識を共有し、何を報・連・相すべきなのかについて部下が判断しやすくなるよう努力すべきでしょう。例えば、部下からの報・連・相を待つだけでなく、定期的に報・連・相のための時間を取り、部下が報・連・相しやすくするといった工夫も考えられます。
 可能であれば、必ず報・連・相すべき事項や、どのような方法で報・連・相すべきかについてのルールを整備しておきたいところです。また、報・連・相に用いる書式を作成し、効率的に報・連・相できるようにするといった工夫も考えられます。
 一般論としては、会社にとって都合の悪い情報ほど、直ちに報・連・相する必要性が高くなります。会社にとって大きな問題とならないような情報であれば、定期的に直属の上司に対して報・連・相するようにさせれば足りますが、会社にとって大きな問題となりそうな悪い情報の場合は、緊急に上司ひいては経営者が把握できるようにしておく必要があります。
 部下の上司に対する報・連・相の具体的なやり方について少しお話ししますと、まずは結論を簡潔に伝えた上で、具体的経過等の説明を行った方が、上司は情報を把握しやすいのが通常です。「事実」と「意見」を明確に区別して報告等を行うことも重要で、自分の意見や感想をあたかも客観的事実であるかのように報告すると、上司が正確な判断をすることができなくなってしまいます。単純な内容のものや急いで報告しなければならないことはまずは口頭で報告すべきですし、重要で記録に残しておく必要性が高いものや複雑で書面に記載しないと分かりにくいものは、口頭で説明するだけでなく、できる限り書面も作成して説明する必要があります。電子メールは有用なツールですが、頼りすぎるとコミュニケーション不足に陥るなどして、かえって効率が悪くなることがありますので、重要なものや緊急のものについては、対面又は電話での報・連・相と併せて電子メールを利用すべきでしょう。

3 報・連・相ができない社員の対処法

 上司と部下でよくコミュニケーションを取って認識を共有する努力をしていれば、部下が最低限の報・連・相もできないということは、仕事に不慣れな新入社員のケースでもない限り、そう多くはありません。部下が報・連・相しようとしない場合、まずは上司である自己の言動が、部下の報・連・相を抑制させる結果になっていないか、よく考えてみるべきでしょう。部下が当然、報・連・相すべきときに報・連・相したのに対し、上司として当然行うべき対応を怠ることが度重なれば、部下も上司に対して報・連・相しなくなります。
 部下が報・連・相できない場合、上司が当該部下とよくコミュニケーションを取って、報・連・相すべき事項について繰り返し指導教育する必要があります。それでもなお、部下が報・連・相しない場合には、部下に報・連・相する意思がないのか、いくら教育しても理解できない程度の能力しか有していないのかを見極める必要があります。
 部下に報・連・相する意思がない場合は、厳重注意書を交付したり、懲戒処分に処したりして対応します。懲戒処分を繰り返しても態度が改まらない場合は、退職勧奨や解雇も検討せざるを得ないでしょう。
 部下の理解能力不足が原因の場合は対応が少々やっかいです。本人は精一杯、報・連・相しようとしてもする能力がないわけですから、賞与等の査定において低く評価することはできても、懲戒処分に処することはできません。また、裁判所は、一般的には、地位や職種を特定して高額の賃金で採用したような場合を除き、能力不足を理由とした正社員の解雇をなかなか認めない傾向にありますので、本人が退職に同意しない限り、辞めさせることも困難なケースが多いというのが実情です。
 後になってから言っても仕方がないことかもしれませんが、部下の理解能力不足については採用の段階でチェックすることができたはずです。筆記試験の成績が悪かったり、会話の受け答えがちぐはぐな応募者を採用しないようにすれば、極端に理解能力が不足した社員を採用せずに済むのではないかと思います。縁故採用の場合は理解能力のチェックが甘くなりがちですが、最低限の能力があるかどうかについてはチェックしないと、大きな問題を抱えることになりかねません。仮に、採用時には理解能力不足を見抜けなかったとしても、試用期間満了時までには理解能力不足を把握して本採用拒否できるようにしておきたいところです。

弁護士法人四谷麹町法律事務所
代表弁護士 藤田 進太郎


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