労働問題976 退職後の競業避止義務に関する規定の有効性はどのように判断されますか。

 退職後の競業避止義務に関する就業規則の規定や個別合意の有効性は、①守るべき企業の利益があるかどうか、②当該社員の地位、③競業を禁止する地域的な限定があるか、④競業避止義務の存続期間、⑤禁止される行為の範囲に必要な制限がかけられているか、⑥代償措置が講じられているか、等により判断されます。
 ①技術情報や顧客情報等の守るべき企業の利益は、従業員の職業選択の自由を制限するに値するものである必要があります。不正競争防止法上の「営業秘密」に該当する場合に限らず、情報の秘密管理性、有用性、非公知性等から総合的に判断されます。
 ②社員の地位については、全社員を対象とする規定は無効と評価されやすく、高い地位の従業員に限定している規定であっても、当該社員が機密性の高い情報に接する従業員でなければ無効と評価される可能性があります。裁判例の中には、退職後の競業避止義務を課せられる従業員は、機密性の高い情報に接する従業員に限定されるべきであるとしているものがあり(A特許事務所事件大阪高裁平成18年10月5日判決)、また、従業員が就業中に得たごく一般的な業務に関する知識・経験・技能を用いることによって実施される業務は競業避止義務違反の対象とはならないとされているものがあります(アートネイチャー事件東京地裁平成17年2月23日判決)。
 ④退職後の競業避止義務の存続期間は、1年~2年と規定するケースが多いようです。
 ⑤禁止される行為の範囲について、競合他社への転職を全面的に禁止する規定は、職業選択の自由に対する強い制約であることから、無効とされやすい傾向があります。無効とならないようにするためには、業務内容、職種、地域等を特定し、禁止する行為の範囲を限定する必要があります。
 ⑥競業避止義務を課すことの代償措置として、従業員に相当額の金員を交付すると、競業避止義務の規定が有効と評価される可能性があります。賃金、賞与、退職金名目であっても、労働の価値を超える金額が交付されているような場合には、代償措置としての金員交付が含まれていると評価されることもあります。アフラック事件(東京地裁平成22年9月30日判決)、アイメックス事件(東京地裁平成17年9月27日判決)では、従業員の給与水準がその経験年数に比して相当に高額であることがうかがわれることから、必ずしも特段の代償措置が設けられない限り、競業避止条項が公序良俗に反するとまではいい難いとしています。

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