労働問題929 労働者に対する債権を賃金と相殺することはできますか。

 労働者の自由な意思に基づいて相殺することに合意がなされた場合は、賃金全額払原則に反せず、当該相殺は有効と考えられています。
 労働者が自由な意思に基づいているかは、①労働者が合意に至った経緯や同意の態様、②相殺債務・反対債務の性質(労働者にとっての利益性の有無)、③同意の時期、④相殺額の多寡を考慮して判断されます。
 日新製鋼事件最高裁判決は、労働者が銀行等から住宅資金の貸付を受けるにあたり、退職時には乙の退職金などにより融資残債務を一括返済するものとし、その返済手続を会社に委託する旨の約定をし、会社が当該労働者の同意の下に、委任内容に基づいて相殺した事案について、当該労働者が前記返済に関する手続を自発的に会社に依頼していること、当該貸付は低利かつ相当長期の分割返済の約定の下になされたものであり、その利子の一部を会社が負担する措置が取られていることなどから、裁判所は、当該労働者の相殺同意については同人の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものと判断し、相殺を有効と判断しています(最高裁第二小法廷平成2年11月26日判決)。

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