労働問題916 退職後の競業避止義務の有効性はどのように判断されますか。

 退職後の競業制限は、憲法が保障している職業選択の自由への制約になることから、その効力は、競業制限の合理的理由が認められ、合理的な範囲での競業制限特約が存在する場合に限り、有効と考えられています。
 裁判所は、退職後の競業避止義務の有効性について、①競業禁止の期間と地域、②禁止される業務の範囲、③禁止対象者の地位・役職、④代償措置の4つの要素から総合的に判断する傾向にあります。
 ①競業禁止の期間と地域について、裁判例のなかには、営業部長が退職後に顧客情報をほとんど利用できないようにして得意先を奪った事案について、3年間の競業禁止を有効としたものがあります。他方、顧客情報などの秘密性に乏しく禁止する利益が小さい一方で禁止対象取引が広範で、代償措置もないこと等から2年の特約を無効とした裁判例もあります。
 ②禁止される業務の範囲について、競合他社への転職を全面的に禁止する規定は無効と評価されやすい傾向があります。業務内容、職種、地域等を特定し、禁止する行為の範囲を限定すれば、規定が有効と評価される可能性は高まります。裁判例のなかには、使用者が保有している特有の技術や営業上の情報などを用いることによって実施される業務に限定され、従業員が就業中に得たごく一般的な業務に関する知識・経験・技能を用いることによって実施される業務は、競業避止の内容とならないとしたものがあります。
 ③禁止対象者の地位・役職については、全従業員を対象とする規定は無効と評価されやすく、高い地位の従業員に限定している規定であっても、当該従業員が機密性の高い情報に接する従業員でなければ無効と評価される可能性があります。
 ④代償措置が不十分であっても競業避止義務の有効性は失われないとしつつ、損害賠償の算定に際して考慮することができるとした裁判例があります。

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