労働問題898 就業規則の変更により賃金を減額できるのはどのような場合ですか?

 労働契約法10条は、就業規則の変更について以下のとおり規定しており、就業規則の変更による労働条件の内容の変更の要件として、実体的要件としての合理性、及び手続的要件としての周知性が必要であるとしています。

労働契約法10条
 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

 ただし、合理性の要件、実体的要件だけでなく、就業規則の変更が賃金減額に先立って行われている必要があると考えます。裁判例においても、「既に発生した具体的権利としての退職金請求権を事後に締結された労働契約の波及適用により処分、変更することは許されない…(中略)…就業規則の変更についても、同様の理由により遡及効を認めることはできない。」と述べられています(香港上海銀行事件平成元年9月7日判決)。

 したがって、使用者は、就業規則の変更により賃金を減額する場合には、
① 就業規則の変更に合理性があるといえる根拠
② 就業規則の変更が賃金減額に先立って行われたこと
③ 変更後の就業規則に基づく格付けの結果、当該労働者が減額後の賃金に対応する資格・等級に格付けられたこと
が説明できるようにしておく必要があると考えます。

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