労働問題852 賃金の計算を誤り過払が生じた場合、翌月の賃金で過払分を控除して相殺することはできますか?

 労基法上、賃金全額払の原則が定められているため、賃金の計算を誤り過払が生じた場合であっても、当然に、翌月の賃金から控除できるわけではありません。
 調整的相殺ができるかどうかの判断基準として、最高裁が定立した次の要件があります。
 最高裁は、調整的相殺は、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば、賃金全額払原則に反しないとし、そのためには、過不足が生じた時期と相殺の時期が賃金の精算調整たる実を失わない程度に接着していること、その額が多額にわたらない等、労働者の経済生活の安定を脅かすおそれのないことが必要であると述べています(福島県教組事件最高裁昭和44年12月18日判決)。
 過払の相殺が認められたケースとして、勤勉手当940円の過払があり、それから1カ月余り後に労働者に返還を求め、これに応じないときは翌月分の給与から減額する旨通知し、過払の3か月後に支給さ2万2960円から円から過払分940円を控除した事案があります(福島県教組事件最高裁昭和44年12月18日判決)。
 過払の相殺が認められなかったケースとして、10月及び12月分の給与から1か月分の給与の約3.8%~約27.3%相当の過払分を翌年3月分の給与で相殺控除した事案について、相殺が遅れた原因に特別な事情がないことを前提として、相殺は許されないと判断された事案があります(群馬県教組事件最高裁昭和45年10月30日判決)。

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